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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第一部

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第210話、アーリィー VS ジャルジー


「ルールは一対一。武器も魔法も自由だ。とはいえ、オレは公爵で、アーリィーは王子だからな。怪我をさせたら周りがうるさい。ゆえに希少な魔法具である、守りのペンダントを使う。制限時間は5分。……まあ、その前にケリがついているだろうがな」


 ジャルジーは腕を組み、アーリィーを見下ろす。身長はもちろん、見た目で勝敗が決するなら、明らかにジャルジーのほうが強いと思うだろう。


「異存はあるか?」

「ない」


 アーリィーは即答だった。ヒスイ色の瞳に浮かぶは好戦的な光。これまで見せたことがない王子様の強気な視線に、ジャルジーは、ほぅ、と小さく呟いた。

 お互いに準備のために、一度離れる。ジャルジーは従者に装備をつけさせ、アーリィーもまた侍女に手を借りて防具を身に付ける。俺は彼女の前に立つ。


「いけそう?」

「うん。言われっぱなしは面白くないからね」


 革のグローブをはめながらアーリィーは答えた。他にも訓練用のレザーアーマーをつけてはいるが、守りのペンダントという魔法具の効果で5分程度は、防具の有無が関係なかったりする。

 ちなみにこのペンダント、先日のギルドでの昇格試験でも使ったものと同種のものだ。時間が5分に延長されているが、聞いた話ではとても高価で貴重なものらしい。


 魔法も武器も自由ということだが、アーリィーは剣を使い、ディフェンダーは使わないようだ。まあ、タイマンで飛び道具も無粋だよな。


 さて、冒険者ギルドでの試験同様、アーリィーは上手く立ち回れるか。


「ちなみに、ジャルジーとこれまで戦ったことは?」

「十数回はあるよ」


 アーリィーは表情を引き締めた。


「勝った回数は?」

「ゼロ」


 全敗ときたか。開始前に聞くんじゃなかったか。だがアーリィーの戦意は衰えない。


「でも、今日は負けない」


 頑張れ――俺はアーリィーの肩を軽く叩くと、見送った。


 まあ、こっちは見守るしかない。とはいえ、必要なら、バレないように介入するのもやぶさかではないが。


 アーリィーとジャルジーが戦うとあって、騎士生たちの模擬戦や訓練は中断となっている。皆が、王子と公爵の決闘じみた模擬戦に注目している。


「逃げない度胸は褒めてやるよ」


 ジャルジーは余裕たっぷりだ。


「いや、逃げられないか。すぐに盾突いたことを後悔させてやる」

「やってみるがいい。以前のようにはいかないぞ」


 アーリィーは、ライトニングソードを抜いた。ぱちりと刀身に小さく紫電が爆ぜる。


 一方のジャルジーは両手持ちの剣を持っている。その刀身は薄い緑色。オリハルコンか、あるいは大地属性の魔法金属製の剣だ。意匠も凝っていて、高級さを兼ね備えている。


 審判役を引き受けた教官が、両者の準備が整ったことを確認。にらみ合う二人。やがて、開始の合図が校庭に響いた。


 ・  ・  ・


 すっと一歩前に出たジャルジー。だがアーリィーはエアブーツでの加速で一気に距離を詰めた。


「ぬっ!?」


 まずは対峙するものと思っていたジャルジーは、大胆にも向かってくるアーリィーの行動に目を剥いた。だが、相応に実戦の場で鍛えたジャルジーは素早くブロードソード――スマラクトを振るった。


 しかし刃は空を切る。


 アーリィーは斬撃をかいくぐるとジャルジーの右側面へと回り込む。させるか、とばかりにジャルジーは返す刃でなぎ払う。アーリィーはさっと下がって、剣の範囲から逃れる。

 周囲から、一連の攻防に、小さくどよめきが上がった。ジャルジーの口もとが笑みの形に歪んだ。


「思ったよりやるじゃないか。少しはできるようになったか」

「いつまでも弱いままではいられないからね」

「よく言った!」


 ダン、と地を蹴り、ジャルジーが突進した。ブロードソード(スマラクト)が唸り、避けたアーリィーだったが、彼女の髪の先、数センチをかすめた。


 アーリィーも反撃に出る。ライトニングソードを立て続けに繰り出す。その猛撃にジャルジーは剣で迎撃する。魔法金属同士が火花を散らし、校庭に剣戟が響き渡る。

 守りのペンダントがあるとはいえ、本気で殺しにいっているように周囲には映る。それほどの激しい攻防だ。


 速さではアーリィーが勝っているように見える。ジャルジーは一撃の威力で勝っているのは見ればわかるのだが、その肝心の一撃が当たらない。

 ジャルジーの動きは決して遅いわけではない。並みの戦士よりも速い太刀筋。魔法騎士学校の生徒たちのそれを凌駕するが、アーリィーはそれ以上に速かった。


 戦いは続く。一瞬一瞬のやりとりは短く感じても、確実に時間は流れていく。ギャラリーは息を呑み、戦いに見惚れる。


「驚いた……。本当に驚いたぞアーリィー!」


 ジャルジーの笑みは益々深くなる。


「認めよう! お前は強くなった!」


 ライトニングソードの一撃を防いだスマラクトが薄く発光した。

 魔力の層が発現し、次の瞬間、魔力が拡散した。衝撃波がアーリィーを襲い、周囲の生徒たちは強く吹きぬけた風に身構えた。


 ・ ・


「魔法剣の効果か……?」

『だろうな』


 俺の呟きを、影に潜んでいるベルさんが同意した。ともあれ、ジャルジーに魔法を使わせた。ギャラリーには、アーリィーが追い込んだ結果のように映っただろう。

 さあ、ここからどうやる、アーリィー……?


 ・ ・


 弾き飛ばされたアーリィーだが、転倒することなく、数メートル離れたところで踏みとどまる。だがアーリィーは動揺していない。荒らぶる息を整え、静かに剣を構える。衰えない戦意を漲らせ、精神的にもその成長が垣間見える。


「本当にどうしちまったんだ、アーリィー? あの弱虫はどこへ行った?」


 ジャルジーが煽る。アーリィーはエアブーツでの加速で、一気に距離を詰めた。右手に剣。左手には魔力を収束。


「風よ。エアブラスト!」


 短詠唱による風魔法。ジャルジーはとっさにスマラクトを盾のように構え、アーリィーの風魔法を防いだ。その間に、アーリィーは距離を詰めている。


 ――決める!


 魔力を集める。魔法弩(ディフェンダー)を使っている時に、自分の魔力を収束する方法はやった。それを応用すれば、ジンがガーゴイルの頭を杖で吹き飛ばしたのと同じことができるはずだ――アーリィーはジャルジーの懐に飛び込み、ライトニングソードに魔力を流し込む。


 ――インパクト!


 その一太刀は、ジャルジーの持つブロードソードに阻止される。いや、それこそアーリィーの狙い通りだった。

 強打の一撃はスマラクトを叩き折りはしなかったが、ジャルジーの手からもぎ取り、吹き飛ばした。


 勝った!


 アーリィーは剣を相手の首もとへ滑り込ませようとして、すぐそばにジャルジーの左の拳が迫っていることに気づいた。

 それは刹那。自分の剣より速くジャルジーの拳が顔に当たる――アーリィーが悟ったまさにその時だった。


 何かが両者の間に割り込んだ。


 アーリィーも、ジャルジーも壁のように現れたそれに目を見開き、身体が固まった。

 黒髪の少年――近衛のマントをまとったその人物は、静かな調子で告げた。


「そこまでです、二人とも。時間切れですよ」


 その言葉に、言われた二人はとっさに自分のペンダントを見た。大抵の攻撃を無効化する守りのペンダントは、すでに光を失っていた。

 魔力が切れたのである。つまり模擬戦の5分が経過したことを物語っていた。

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