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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1946/1965

第1936話、14歳組の冒険


 ラッタたち14歳組は、最深部の手前、いわゆる創作的な言い方をするならばボスモンスターと戦っていた。


「相手がキマイラとはついてない」


 ラッタが思わず呟けば、剣と盾を持つジュワンが駆け出した。


「ドラゴンよりはマシだろう?」


 獅子の頭に山羊の体、蛇の尻尾を持つ化け物だ。ユーリは叫ぶ。


「注意! ファイアーブレスだ!」

「了解!」


 キマイラのブレスとジュワンは右へ走って避けた。万が一、範囲が思ったより広くても、左手の盾がある程度防ぐことを計算している。

 このっ――ユーリは、ライトニングの魔法をキマイラの顔面に撃ち込む。それは魔獣の頭を貫くことはできなかったが、炎のブレスを中断させる効果はあった。


「面の皮が厚いな!」

「威力を調整し過ぎたんじゃないかぁ、ユーリ!」


 ジュワンはキマイラの側面に回り込む。反対側にはレオナが走り込んでいるが、キマイラの尻尾である蛇が、彼女に安易な突撃を許さない。


「ラッタ! この尻尾が吐いてくるのって、毒よね!?」

「たぶんね」


 滑るように移動しながらラッタは答えた。


「本では、よくそうだと書かれている!」


 魔力集中。白いファイアボールを生成。


「特大ファイア、行くぞ!」


 それは仲間への警告。ラッタの手から放たれた超高温ファイアボールが放たれる。取り囲むように移動する14歳組のどれに狙いを絞るか、決めきれていないキマイラに灼熱の火球が直撃する。

 ラッタは指を鳴らした。


「エクスプロージョン!」


 火球が炸裂し、キマイラを爆発に包み込んだ。咆哮とも絶叫ともとれるキマイラの声が響く。

 爆炎が収まるが、キマイラはまだ立っていた。だがダメージは大きい。


「お脇がルスだぜ!」


 ジュワンが剣で斬りつけた。獅子の頭が彼へ振り向いた時、レオナが回り込み、蛇の尻尾を剣で叩き切った。


「とっ、危ない――!」


 吹き出た紫の血は毒を含んでいるかもしれない。レオナは一撃離脱で離れる。獅子の頭が今度は自身の尾の方へ向いた。


「注意力が散漫だな! ――ジュワン!」

「おう、やれよユーリ!」


 ジュワンが素早く離脱する。ユーリの手から電撃が弾ける。必殺パワー!


「サンダー――!」


 本当な続くのだが、またアニメの影響うんたらと突っ込まれるのが嫌だったので省略した。強烈な電撃がキマイラを直撃し、それがトドメとなった。

 ズゥンと地面に倒れたキマイラは塵となって消えた。


「ふう」


 何とかなるものだ。ユーリは呼吸を整える。不快感に額を拭えば汗をびっしりかいていた。さすがに緊張を隠せなかった。

 臨場感は半端ない。試験用にダンジョンを作ったと聞いたが、これは本物のダンジョンだろうと思う。それに五階層も進めば慣れてきていたが、有名どころのモンスターが出てくると、そのリアルさと相まって恐怖が込み上げてくる。


「やったぜ、ユーリ!」


 ジュワンがユーリの肩を叩いた。痛い、加減しろ馬鹿。


「ん? どうした」

「ジュワンは元気だよな」

「おう! まだまだ余裕だぜ!」


 兄弟の中で体力トップクラスのジュワンである体つきも、たくましく前衛ポジションに不足のない能力を持っている。


「勇気があるよな」

「なんだよ、急に。気持ち悪いな……」

「手を握ってみ」


 ユーリが手を差し出すと、ジュワンは訝りつつグローブを外した。


「うわっ、手ェ、べっとり!」

「お前もな」


 グローブの中、蒸れてるんじゃないか。眉をひそめるユーリ。


「そういうことだ。俺、ずっと緊張していたよ。汗だらけ」

「汗ならオレもかいたぞ」


 そう言うんじゃないんだよ――ユーリは思ったが、兄弟の手の汗込みでベタベタになった手を拭う。

 四人は合流。リーダーであり長男のラッタは、最深部への門を指した。


「たぶん、あれがゴールだ」

「前に番人がいたんだから……そうよね」


 レオナが頷いた。


「もう行っちゃう? ……リン姉たち、来なかったけど」

「どこかで手間取っているか――」


 ラッタが言えば、ジュワンは冗談めかした。


「もう脱落しちゃってるかもなー。あっちはオレらと違って即席だし」

「でも、あの人たち強いよ」


 ユーリは、なだめるように言った。


「リュミ姉さんもいるし」

「でも、リュミ姉は体力ないし」

「体力ないのは、僕もあまり人のことを言えないな」


 ラッタは肩をすくめる。


「もう少し体力をつけないとな。そろそろバテてきた」

「課題が見つかってよかったな」


 ユーリは、普段のラッタの口癖を思い出して告げた。


「それじゃ、行くか」

「そうしよう。……最後まで油断しないように」


 ラッタは注意し、四人は門をくぐった。

 その先には石造りの祭壇があって、宝箱が置かれていた。ジュワンが「お宝ぁー!」と叫んだ。ラッタは目を鋭くさせる。


「ああもあからさまだと罠くさいな」

「同感。開けるにしろ、用心しないと――」


 油断なく、宝箱から距離を置いて安全を確認。注意しながら開けて、中を確かめる。あったのは黄金の球体。


「なんだろうね、これ……」

「わからない。だがこれを持ち帰れば、試験はクリアかな」


 その言葉に14歳組は笑みを浮かべた。振り返ってみて、この冒険者試験で失敗らしい失敗はなかった。これは合格間違いないと四人は思った。

 そして、四人は最後まで気を抜くことはなく行動し、ダンジョンから帰還した。

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