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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1940/1964

第1930話、ダンジョン探索


「――って! ここどこよ!?」


 リンは声を張り上げた。

 転移でダンジョンの中に送り込まれたはいいものの、出た場所がまったくわからない。ギルドで入り口から入って、次の階層へ降りる階段の位置を暗記したのだが、スタート地点が全然違った。


「あー、やっぱりね……」


 アグナは周囲を見回す。洞窟の中のような薄暗いダンジョン。ところどころに燭台があって光源を提供しているのが、ただの洞窟ではなくダンジョンらしくあった。


「今やっぱりって言った?」

「最初にディーシーさんが言っていたでしょ? スタートは私たちとラッタ君たちとは別々に設定するって。それを聞いたら、まあ、こうなるんじゃないかなって」

「……」


 言われてリンは天を仰ぐ。


「そういえば、そんなことも言っていたわ。……そうなるとせっかく覚えた地図も無駄だった……?」

「それはどうでしょうか」


 リュミエールが地図をリンから預かり、それを開いた。


「この最初の階層のどこかでしょうから、場所がわかればまだ地図も役に立つんじゃないですか」


 場所の照合ができれば、そこから次への階段の道もわかる。ボルクは辺りに油断なく気を配る。


「それで、ここがどの辺りかわかりそうか?」

「いえ、ちょっとわからないですね」


 リュミエールは前を指さす。


「とりあえず、進んでみて地形の類似点を探しましょう」

「了解だ。前衛はおれがやる。リンは援護。アグナはリュミエールの護衛だ」


 ボルクが仕切る。リンは口をへの字に曲げる。


「王子様が先頭というのも、何か収まりが悪いわね……」


 パーティーの中で一番重装備のボルクは、さも当たり前のように歩き出す。思うところはあっても、クラスでもこんな調子なので、リンもそれについては突っかかることはなかった。


「流行らないわよ、そういうの」


 ただ愚痴っぽく、遠回しに指摘しておくのであった。



  ・  ・  ・



 ラッタ、ジュワン、ユーリ、レオナの四人も、ダンジョン内にいた。洞窟のような中だが、いきなり行き先が四つに分かれていた。


「これは、いきなり分かれて捜索か?」


 ジュワンが言えば、ユーリは首を横に振った。


「却下だ。それをやるなら、パーティーできた意味がない」


 一人で対処ができない状況に遭遇した時のための複数行動。正解を探すためにいきなり別行動は、やってはならないことの一つだろう。


「ラッタ」

「魔力サーチをかける」


 長男であり、この中で一番魔法に長けるラッタが目を閉じる。ジュワンが、ハンドサインを出す。


「警戒」


 無防備に近いラッタをカバーすべく、残る三人はそれぞれの方向を見張った。ここはダンジョン、いつモンスターが現れて襲ってくるかもわからない。

 特に細かく言わずとも、それぞれが見張りをこなすのは、幼い頃からゴッコ遊びとはいえ、冒険者パーティーというものについて理解を深め、実践していたことも影響している。


「左から二つめ」


 ラッタが口を開いた。


「スライムだと思う。それの反応が複数ある。このルートだけ、特に」

「他は? ……いないのか?」

「怪しいね」


 レオナは口を開いた。


「罠? それとも正解の道?」

「スライムが多いのは、そこを多く生き物が通るからだ」


 ラッタは歩き出す。


「では、他の道は何故スライムがいないか?」

「通らないからだろう?」


 ジュワンは深く考えるでもなく言った。


「行き止まり、あるいは途中から道がなくなって、すぐに引き返す羽目になるってところじゃねえかな?」

「正解!」


 四人は歩き出す。ラッタは続けた。


「おそらくだけど、他の道は罠の類いはないと思う」

「何でだ?」

「罠があればそれに引っかかって死体ができるだろう? そうなるとスライムが処理しに来る。でもそれ以外の道にスライムがいないということは――」

「死ぬような危険はない、ってことだな」


 ジュワンは頷いたが、すぐに首を捻る。


「でも、ここ本物のダンジョンじゃなくて、ディーシーさんの作ったものだろう? そこまで考えるのは深読みってやつじゃないか?」

「メタ読みやめなよ」


 ラッタはたしなめる。


「リアルに寄せているんだから、そういうところも本物と同じと考えたほうがいいよ」

「でも……あ、いや反対とかそうじゃなくて」


 レオナが眉をひそめた。


「ラッタの言う通りなら、このスライムのいるルート。罠が普通にあるってことにならない?」

「……それはそう」


 ラッタは浮遊魔法を使う。四人は地面から足が離れ、十数センチ浮かび上がる。


「サンキュー、ラッタ」

「指摘したのわたしなんですけど?」

「はいはい、レオナもありがとう」

「どういたしまして」


 仲のよい四人は、罠を警戒しつつ進む。そしてスライムが現れると


「ファイアボール」


 特に怒鳴るでもなく、淡々とラッタ、そしてユーリが火属性魔法であっさり焼き払った。ジュワンが口笛を吹く。


「ヒュー、よく燃えるなスライムは」

「魔法には弱いからね」


 ラッタは何でもないとばかりに、無詠唱でスライムを焼いていく。以前見たドラマや映画でよく見た光景に、ユーリは不思議と感心してしまう。作り物だったそれらも割とリアルだったんだな、と。

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