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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1939/1964

第1929話、準備と心構え


「情報収集かぁ……」


 三男ユーリはボヤくように言う。父がジン、母がアーリィーであるユーリは、兄弟たちの中で一番ジンに似ている。


「こんな強そうなおじさんたちに声をかけるって、ある意味度胸いるよな」

「なんだ、ビビってるのか? 兄弟」


 いつも一緒である次男ジュワンは不敵な笑みを浮かべる。まるで自分はすでに冒険者であるという態度である。父ジン、母アヴリルの息子であるジュワンの根拠なく自信がありそうな表情は、母親に似ている。


「こういうのは、酒代を奢れば気前よく教えてくれるってものさ」


 いかにも知ったようなことをいうジュワンである。それもそうか、と思うユーリ。なおその知識は、ドラマや映画、漫画の冒険者のイメージであったりする。


「で、レオナは何でそんな無表情なんだ?」


 ユーリは、妹――父ジン、母サキリスの娘である三女レオナを見やる。精一杯クールぶっているのか、緊張のあまり硬いのか、母サキリスばりの美少女なのだが、ちょっと似合っていない。


「舐められないようにするためよ」


 大人の冒険者は子供に対して見下したり、侮ったりする。これも創作物からの知識ではあるが、レオナなりに対等にやっていくつもりのようだ。

 しかしユーリは思うのだ。こちらが14歳の子供なのは事実であり、どう足を伸ばしたって下に見られるのは当たり前だ、と。


「大丈夫さ。どうせここの冒険者たち、本物じゃないから」

「どういうことよ、ユーリ?」

「ディーシーさんが作ったダンジョンだぞ。俺らのために現役冒険者をこんなに集めるわけがない」


 彼らだって暇人ではない。連れてくるにしろタダでやってくれるわけがない。そういう費用や面倒を考えると――。


「魔法か、それかシェイプシフターじゃないかな」

「あー、そりゃそうか」


 ジュワンが、夢から覚めたような顔になる。


「まあ、そうだよな」

「なにガッカリしてるんだよ?」

「してないさ。ただ、ちょっとはしゃいでいたのを自覚した」


 パンと自分の頬を叩くジュワン。


「オレら冒険者になるテストでここにいるんだもんな。気合を入れ直す!」


 遊び感覚でいたら駄目だと、ジュワンは自戒し、それはユーリとレオナにも伝染した。自分たちは真面目に冒険者を目指して試験に挑んでいるのだ。命がかかっている。その覚悟で挑まないといけない。



   ・  ・  ・



 14歳組の三人が冒険者たちに話しかけて情報を集めていた頃、リンたちはギルドのスタッフから話を聞いていた。

 何も初めから荒くれ冒険者から話を聞く必要などないのだ。冒険者ギルドには、登録したばかりの初心者に、親切丁寧にシステムを教えてくれるギルドスタッフがいる。

 初歩的なアドバイス、ダンジョンについての疑問など聞き、さらに最初の階層の地図までもらった。


「道順まで教えてもらっちゃってラッキーだったわ」


 リンは念入りに確認し、地図を見なくても思い出せるよう頭に叩き込んだ。


「ん、何?」

「……いえ」


 アグナが何か言いたそうな顔をしていたので聞けば、彼女は答えなかった。

 ギルドスタッフの勧めで、装備品を取り扱う店にて商品を確認。


 普通なら武具は購入するところだが、これはテストの疑似空間。後払いとすることで、装備をもらうことができた。……終わったら返却する流れなのだろうが。

 そうこうしているうちに1時間が過ぎて、いよいよダンジョン探索のスタートの時がきた。


『さて、諸君。準備はいいかな?』


 ディーシーの声がそれぞれのもとに届いた。


『では、探索のお時間だ。あ、ちなみにお前たち、『お守り』は持っているな? テストとはいえ、実戦だ。お守りがないと本当に死ぬかもしれん。我は半端なものは作っていないからな』


 言われて、それぞれがお守りを確認。攻撃から身を守ってくれる魔法具。アミウール家の子供たちは常に身につけておくよう教育されている。

 リンは顔を上げた。


「あんたたちは? 持ってる?」


 ボルクは当然とばかりに、首から下げているそれを見せた。第一王子として身の安全を図るのは当然であり、携帯は義務である。

 そしてアグナだが――


「私はここに来た時にもらった。効果は聞いてる」


 ならばよし――リンはリュミエールを見れば、彼女はにっこり笑って、お守りを見せた。彼女は黙ってリンを指さしたので、リンも自身の胸元を軽く叩いて、ここにあると宣言。感触からちゃんとあるのも確認。


 異常なし。


『――冒険者としての適性を見るテストでもある。最深部に行って調べてくるのが目的だが、道中の行動も見させてもらう。冒険者としての行動、振る舞いを忘れるな。お守りがあるから大丈夫なんて舐めた行動を取る者は、たとえクリアしても落とすからそのつもりで』


 ディーシーは告げた。ボルクは頷く。


「当然だな」

「真面目にやれ、ということですね」


 リュミエールが言えば、アグナも「遊びじゃないからね」と言った。ディーシーの注意は続く。


『――逆にいえば、たとえ最深部に行けなかったとしても合格する可能性もある。命は大事に、だ。よく覚えておくのだな』


 命を大事に――冒険者が主役の物語では定番のセリフの一つだ。リンにとっても、耳にたこができるほど聞いたものだが、実際に繰り返されるということは、創作ではなく本当にそれが大事だということなのだろう。

 高ぶる緊張を抑えつつ、リンは一つ呼吸を入れた。


 ――さあ、出発だ。

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