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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1933/1961

第1923話、いざそれを言われても――


 冒険者になりたい、とユーリとジュワンは言った。

 その母であるアーリィーとアヴリルは、予想はしていたというもののすぐに『うん』とは言わなかった。

 見守っていたリンだが、そこに突然、後ろから抱きつかれた。


「ちょ、レオナ?」


 エミールに逃げられたレオナが今度はリンに抱きついてきて、そして言った。


「あ、わたしも冒険者になりたいです!」

「僕も」


 ラッタがやってきて便乗するように告げた。サキリスママ、リムネママも目を丸くする。


「あなたたちも?」


 気づけば14歳組全員が冒険者登録をしたいと言い出した。一人一人なら各個に返り討ちだが、全員で行けば――というやつかもしれない。

 アーリィーママは聞いた。


「四人とも打ち合わせ済み? 登録したら一緒のパーティーを組むの?」


 コクコクと四人は頷いた。アーリィーは視線をサキリスに向けた。


「サキリス、客観的に四人の実力について」

「上手くやれるなら現在でもDランク相当の力は持っています」


 日頃から武器や魔法のトレーニングはしている。さらに冒険者体験や野外活動もそこそこ参加していて、まったくの素人ではない。

 ジュワンが顔を曇らせた。


「上手くやれば……?」

「経験が足りない」


 きっぱりとサキリスは告げた。それはそう、と聞いていたリンは思った。

 冒険者体験でのモンスター退治なんてものは、ある程度コントロールされた状況で、経験のある大人たちがいざという時フォローしてくれる。


 だが実戦の場ではそうはいかない。自分たちで何とかするしかないのだ。

 臨機応変に。

 それは一定の経験がなければ正しく判断、ないし反応できないのだ。


「でもさぁ」


 レオナが、リンの耳もとから母親たちに言った。


「その経験も、やらないとたまらないじゃん」


 実際に冒険者としてやった経験なんて、体験学習の時しかないのだから、そこで経験を引き合いに出されてもなくて当然である。

 そこでリムネがフッと微笑んだ。


「そこは知識と準備でカバーするものよね。……あなたたち、正しく予習はできているのかしら?」


 子供たちは顔を見合わせる。ユーリが発言した。


「依頼内容、場所などの情報がわかれば」

「クエストを受けてから勉強するつもり? それでは駄目とは言わないけれど、半人前よね」


 リムネは片目を閉じた。


「情報は戦いにおける鍵よ。事前調査ができる場合はいいけど、そんな猶予もない場合もある。常日頃からの知識量が大事になってくるわけ」

「すべての冒険者がそうではないんじゃない、母さん」


 ラッタが淡々と言った。


「体験学習の時に現職の冒険者を見たけど、知識がない人もいたよ?」

「そういう人は長生きしないのよ。あなたたちが冒険者をやるなら見習ってはいけないタイプね」


 リムネはニコニコしながら返した。


「母さん、あなたたちの誰一人死んでほしくないのよ」


 沈黙。14歳組も母親ズも押し黙る。部外者だがレオナに抱きつかれて動けないリンは、何とも居心地が悪かった。


 ――なんであたし、ここで話を聞いてるわけよ。


 部屋に戻ろうかしら、と思っていたら、ふっと来客が現れる。


「面白い話をしているではないか!」

「あら、ディーシー」


 父ジンと契約――していることになっている精霊。実際はダンジョンコアのディーシーがやってきたのだ。


「今日はどうしたの?」

「うむ、風の噂でな、子供たちが冒険者になりたいと言い出したと聞いてな」

「はやっ!?」


 アヴリルが引いた。


「話って今しているところだけれど。……とんだ地獄耳ですね」

「ふふん、主と話していて、いつかこの日が来るのではないかと準備してはや十数年――」

「そんな前から?」


 エレクシアが目を丸くする中、ディーシーが14歳組――とついでリンを見渡した。


「お主たちか。冒険者に志願するのは。……冒険者になりたいか?」


 子供たちはまたも顔を見合わせた後、コクリと頷いた。


「よろしい。冒険者になる前に試験をやろう。これはお主たちの父である我が主と話していたのだが、普段のトレーニングの実践とも言うべきものだ。これに合格できれば、冒険者に登録することを認めると、お主たちの父は言っておった」

「本当!?」


 ユーリが驚き、ジュワンはパンと手を叩いた。


「さすがオヤジ」


 ディーシーは言った。


「いいか、お主たちは両親ともに他の者たちと違って、少々立ち位置、振る舞いも異なる。それを自覚し、傲ることなく、健やかに――以下略」

「そこは略さないで!」


 アーリィーが突っ込んだが、ディーシーは手を振る。


「こういう説教くさいことは我の趣味ではない。我の作ったダンジョンにも挑戦させてやるから精々、ない知恵絞って、入念に準備するといい」


 ケケケ、と嫌味な笑みを浮かべるディーシーであった。



   ・  ・  ・



 おかしなことになった。

 冒険者に志願したのは、ラッタ、ジュワン、ユーリ、レオナの14歳組の四人なのに、ちゃっかり? しっかり? リンも巻き込まれてしまった。


『やりたい奴は何人でも構わんぞ! 死ぬ寸前まで体験したいという命知らずの挑戦は受けてやるぞ。ふははははっー!』


 などとディーシーは高笑いをしていた。部外者を決め込んでいた年少組は、すっかりビビってしまっていた。

 翌日、学校に登校して、その件をボルクに話したら――


「それは、おれも参加していいのか?」


 と、未来のヴェリラルド王国国王は返した。


「実戦の経験は積みたいが、家だと許してもらえないからな」

「そりゃあ未来の王様に何かあったら困るし」


 リンは呆れる。


「つーか、いざ戦場になっても、あんたが戦うような状況って、もう負けているんじゃない?」

「先陣を切る、ということもある」

「やめろ、脳筋王子! 部下を困らせるんじゃないよ」


 リンは注意するのであった。

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― 新着の感想 ―
ディーシーさんによる、 冒険者育成ブートキャンプ。 モードは、 ジンさん、ベルさんコンビでも、 手古摺るランクだったりして。
将軍が突撃野郎して許されるのは銃普及前やぞ殿下(゜д゜)
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