第1919話、一番上の子たち
うちの長女とジャルジー王の長男の仲が悪いらしい。
「だっていつもケンカしてるじゃん」
次男のジュワンはそう言うが、長男ラッタ、三男のユーリは「そうかなぁ」と微妙な顔をする。
「本当に仲が悪かったら、口もきかないんじゃないかな」
「口を開けば言い争ってはいるけど」
などという。次女リュミエールは――
『たぶん仲良しじゃないですか?』
三女レオナは――
『まあ、たぶん悪くないと思うよ」
一方で、四女ルマ、五女ジュイエは『不仲だと思う』と口をそろえる。
「リン姉ちゃんは、ボルク王子の悪口ばかり言ってるよ」
「カリーンちゃんも、ボルク兄はデリカシーがないとか、散々だし」
どうも当の長女と、同い年のジャルジー家の娘の愚痴から、長男ボルクの印象がよくないようだった。
これが親目線になると、大方意見が一致するのが面白い。
アーリィー、アヴリル、エレクシア、リムネ、サキリス、エリーの六人全員が、リンとボルクは仲がよいと見ている。
俺は、ジャルジーと二人の関係について振れば、ヴェリラルド王は言うのだ。
「婚約させるか」
十六になって王子の花嫁探しは継続中。王族の婚約は早いのだが、未来のヴェリラルド王たる王子の婚約者はまだ決まっていない。ジャルジー自身、相手を選ぶまで二十代も後半だったのではあるが、十六ならばそろそろ、なんて言われだしてもおかしくはない。
「お前、うちが言い出すまで待っていたわけじゃないよな?」
俺が邪推すると、ジャルジーはすっとぼけた態度を取った。
「さあ、どうかな。それより兄貴んところはどうなんだ? うちの息子や娘への婚約の紹介は数多いが、そちらも多いんじゃないか?」
むしろグローバルな分、申し出も多国籍じゃないか――と自身の子どもたちの婚約も外国からのお誘いもあるジャルジーである。
「うちは自由恋愛なんでね」
俺とアーリィーもお互い好きで結婚した。王族や貴族に見られる政略結婚ではない。……と思っているのは俺だけかもしれない。
アーリィーの父親であるエマン王的には、俺のその後を見れば政略的にも大成功だったし、アヴリルを迎えた時は、彼女自身俺を好きでいてくれたから恋愛結婚だと思っているだけで、リヴィエル王国的には政略結婚という評価かもしれない。
……まあ、お互い好きなら、細かいことは気にしないよ。
「決めるのが本人だ。もしボルク君がリンのことが好きで、リンもまたボルク君を好きだと言うのなら、俺は反対しないよ」
ただ、ジャルジーとアーリィーで父親が同じだからなぁ。母親が違うけど、実質二人は兄妹。
「一族の血が濃すぎて、ちょっと面倒なことになるかもしれない。それは将来の子供に影響が出る可能性がある」
「最近、科学的にいわれている遺伝の話だな。王族の間では、割と近親者での結婚は珍しくないが、そこで出た遺伝の問題やらはそれらと合致しつつある」
などと難しい話に乗ってくるジャルジー。ボルク君は第一王位継承権を持つ長男。王の後継者として、現在の王であるジャルジーが真剣なのはわかる話ではある。
「そういえば聞いてなかったけど、ボルク君をシーパングのアポリト・ソフォス高へ入れたのって、ジャルジーが決めたの?」
「今さら聞く? 入学させたのは一年前だぞ、兄貴」
ヴェリラルド王国の学校ではなく、シーパングの学校に入れたというのは、まあ、この頃のトレンドだから『ああ、そうなんだ』って当時は流していたんだよな。
有力な貴族や王族の子供は、シーパングの最高なる高等教育学校に入れるというのが、一種のステータスになっている。
だからヴェリラルド王国のアクティス魔法騎士学校に入れなかったのは、学の方も重視したのかな、と思ったわけだ。母であるエクリーンさんは、アーリィーとサキリスと同学年で魔法騎士学校卒業生であった。
……そういえば、ジャルジーは、あの学校をお飾りみたいに思っていてあまり評価していなかったな。
なんて、去年、ボルク君の進学がシーパングだって聞いた時に思ったのを思い出した。
「で、どうなんだ? お前が決めたのか? それともボルク君が行きたいと言ったのか」
「両方。進学について考えが一致した」
ふうん、そうだったのか。本人もそれを希望したと。きっかけは何だったんだろうな。うちの子たちが揃ってそっちの学校に行っていて、自分もそちらに行きたくなったのか。
ボルク君の妹であるカリーン姫は、最初からシーパングの学校を希望して、ルマとジュイエとつるんでいるとは聞いているが。
「どうかしたのか、兄貴?」
「いや、特にどうこうというものではないんだけど」
ただ、ボルク君がリンと同じ学校に通い始めた頃から、彼女が変わったんだよな。
「リンは、色々そつなくできるけど、飽きっぽくてな。一時期、将来について心配していたんだ」
やりたいことが見つからず、何事も中途半端で何もできなくなってしまうのではないかって。昔から勉強とか、将来に必要だと大人が言うことには、割とサボりをかましていた。興味を持つと強いんだけど、飽きっぽい。
「ただ去年から、勉強も前より真面目にやるようになった。サボる時はサボるんだけど、最低限はきちんとやっているし、テストの前はかなりやっていた」
「あー、それはもしかしてアレか」
ジャルジーが何か思い当たった。
「うちのボルクが、リンちゃんを煽ったせいかもしれない。あいつ、リンちゃんに負けたくないなんてよく言っていた」
「あ、やっぱり?」
うちのリンはそういうことは言わない。アーリィーたちお母さんには別かもしれないけど、父である俺にはそういうこと言わないんだけど。
「勉強しはじめたのも、ライバルが出来たせいかもしれないな」
負けたくないという気持ち。飽きっぽい彼女も、そういうライバル心から発奮したのかもしれない。
「もしそうなら、ボルク君には感謝しないとな」
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