第1918話、日本で過ごす新年
誰が言ったか知らないが、日本に帰る日は神が天界に帰る日と言われているらしい。……日本は天界だった!?
毎年新年になると俺は実家に帰省する。当然、家族全員で、となるわけだが、異世界と日本の新年が被るということもないわけで……。
寒空の下、到着した日本は、ただいま大晦日。……二日ばかりズレている。子供たちが新年の二日から動き出すのも、この日本での年越しとついでに新年祝いをしたがっていたからだったりする。
子供たちがゾロゾロと我が実家にやってきて、親父もお袋もビックリ――することはなく、毎年恒例行事となっていて笑顔である。ほら、爺さん婆さんだぞ、お前たちお行儀よくするんだ。
「大きくなったなぁー」
と、毎年言っているうちの親父。子供たちも挨拶して、さっさと上がり込む。後ろがつっかえているんだ。仕方ないね。玄関はもう靴で足の踏み場がなくなりそう。
「こんばんは-」
「お邪魔しますぅ」
アーリィーを筆頭に六人の妻たちがご挨拶。親父は、若い美人妻たちに顔が綻ぶ。眼福だろう? 見世物じゃないんだ。だが気持ちはわかるよ。せいぜい長生きしてくれ。
「あけまして、おめでとうございます」
俺が挨拶すると、お袋が突っ込む。
「まだ大晦日だよ」
「仕方ないよ、俺んとこはもう新年迎えているんだから」
今年もいっぱい挨拶しまわったからね、わかっててももう体は新年を迎えているモードなのさ。
「元気そうでなによりだよ、ジン。それにベルさんも」
「うっす」
成人状態でやってきているベルさん。この中で唯一、親族ではない人。昔は猫で来ていたけど、弟家族の娘にいじり倒されてからやめた。
「弟は?」
「あっちはあっちで家族水入らず、だよ」
「そうかい」
まあ、新年顔を合わせるだけでも充分か。こっちきても、すでに人数でパンクするからね。
そんなわけで子供たちは、すでに食卓と居間をぶちぬいた部屋にいて、コタツやらテレビの前でゲーム機で遊んでいる。
「シエル君は何歳?」
「9歳です」
「へえ、もうすぐ10歳だねー」
末っ子とそのお母さんであるエレクシアが親父とお喋りしている。当のシエルは少し恥ずかしそうにしている。二、三年前は他の子供たちとゲーム機を争っていたのに、こういうところでソワソワするのは、そういうお年頃なんだろうな。
おや、これは――
「親父、これ去年は見なかったけど、新しいゲーム機?」
「おお、中々品がなくて買えなかったんだけど、やっとな」
自分ではゲームなんてほとんどやらないのにさ、孫たちがやってくるからって、ゲーム機を買ってしまうような大人なんだ。まあ、これだけ子供がいてそれでも可愛がってくれるのは最高に祖父しているぜ。
まあ、家族の付き合いができる期間は短いからな。大晦日とお正月、後は夏休みくらいか。
子供たちも十数年も通っていれば慣れたもので、新作ゲームなんかも目ざとく物珍しさからすぐに手を出したりする。
日本で言えば、一番上のリンが高校生。あとの連中は中学生や小学生だもんな。体も大きくなるよな。
二時間ほどまったり去年の話をして、お袋の作ったお菓子を子供たちは美味しそうに頬ばる。こいつらが早めに日本にきたがっている理由の一つが、お祖母ちゃんの作るお菓子だったりする。
そして出てくる年越し蕎麦。これも大晦日の行事みたいなもので、お袋だけでなくサキリスとエリーも手伝った。もう台所がいっぱいだから、手伝いにいけるスペースがない。
お袋の作る年越し蕎麦、これだよこれ。そんな気分で味わい、しばし。子供たちも少しは落ち着いたかと思うが、十二人もいればそれでも騒がしい。奥様会もワインやビールが入って、ちょっとうるさい。
おっと、そろそろかな。時計を確認、テレビが新年のカウントダウンをはじめて、ユーリやジュワンがカウントダウンを真似れば、何人かの子供たちもそれぞれ数字を呟き出す。
そして――
ハッピー・ニューイヤー。こちらでも新年お祝い。向こうだと、俺やエレクシアが忙しくて家族全員で祝えないからな。こっちでそれをやるのも悪くない。
・ ・ ・
正月三が日は、家でゆっくりするものだが、まあ今日一日しかないから、俺の家族は活動的である。
日本は正月でも働いていて、お買い物や食事などが普通に楽しめる。ただ正月休みの店も昔に比べるとだいぶ増えてきた印象だ。その中でも稼働する率の高いサービス業は本当、大変だよな。俺も新年早々バイトしたことあるよ、昔さ。
初詣は混雑していたけど、それから先は子供たちはショッピング。異世界でしか買えないものを、親父とお袋からもらったお年玉でさっそく使う。合計12万だって……。ワォ。
アーリィーやリムネたちも同様に異世界商品を求めてお買い物。やはりこちらでしか買えないものを求めて、化粧品だったり、ブランドモノだったり、あるいは個人の趣味だったり、色々見て回っていた。
ボディーガードのシェイプシフターたちがそれとなく警護し、子供たちも迷子にならないよう見張ってくれている。さすがに日本は安全だといわれているけど、いる期間が限られているから迷子になったら大騒動になるからね。
ベルさんは一人で食べ歩き。この時は底なしの胃袋を持つ魔王様は、好きに食べ、日本のフードを堪能していた。
俺は家族たちと過ごし、新年の空気を胸一杯に吸い込んだ。仕事から解放され、真にのんびりできる貴重な一日であった。
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