第1917話、戦後処理と、あれから十年
結局、地底シェイプシフター問題は、同盟議会の預かりとなった。
地底シェイプシフターの平和利用。労働力として地底シェイプシフターたちは同盟国の復興や発展のために活躍した。
その制御装置の場所は、厳重に秘匿され、さらに専属の防衛施設と部隊が年中無休24時間体制で警備した。
基本は軍事には係わらない方向だが、その戦闘能力は捨てるには惜しいという声もあり、非常事態ともなれば同盟参加国の過半数の賛成があれば、同盟軍との共同展開、軍事利用も可能という法が定められた。
……一国二国の独断では動かせないよう法整備されたということだ。同盟参加国の過半数が支持してのシェイプシフターの軍事利用となると、相当な大惨事が発生している時だろうな。
かくて諸問題が片付き、地底世界への進出が進んだ。人類の生活圏が拡大し、地域で紛争なりなんなりは起こりつつも、大きな戦争などは起こることもなく、十年の月日が流れた……。
・ ・ ・
四十代後半になったが、俺は不老不死の影響であまり年齢に対して自覚することは少なかった。
でも歳をとったな、と思う時もある。それは子供たちが節目の歳を迎えたり、成長を実感するような時だ。
長女のリンちゃんは16歳になった。次女のリュミエールは15歳。長男ラッタとジュワン、ユーリの仲良しコンビも14歳だ。
ちなみに、うちの子は全部で12人。あの地底戦争の後、エレクシアの第二子が生まれた。
名前は、シエル。男の子だ。それまで一人っ子だったリュミエールが直接の弟ができたのがとても嬉しかったらしく、当時は結構はしゃいでいたな。
そんな末っ子のシエルも今年で9歳。うーん、大きくなったなー。
奥様方はますます綺麗になるし、そろそろ三十代後半に差し掛かるんだけど、熟女というにはまだ若いんだよな。
さて、十年経てば色々変わるものだ。子供の成長もそうだけど、俺も10年前のウーラムゴリサ国王という肩書きも象徴としては残ったが、政治や国の運営については国民を代表する議員たちが決めるようになっていた。
俺は行事があれば顔を出すけど、基本政治にはノータッチとなった。最初のうちは俺にしょっちゅう相談にきて、身を引いた意味がないからと帰すこともあった。自分たちで考えてよい国を作ってくれ。
丸投げ? 君たちが俺に王を押しつけたんじゃないか。それも一つの丸投げじゃないか。俺はボールを返しただけだよ。キャッチボール、キャッチボール。
なおシーパング大公、ヴェリラルド王国南方侯爵はそのままの模様。まあ、シーパング大公はあくまで貴族の肩書きで、何か政治にかかわっているかというとそうでもないし、南方侯爵の方は南方の各県代表者と代官に任せているので、こちらも俺は監督するだけだな。
プロヴィア王国は、我が妻エレクシアが女王として君臨していて、俺は夫という立場でこれまた政治の場には……時々出ている。
エレクシアがね、何か通したい意見がある時に俺を担ぎ出すんだよな。俺が来ると、プロヴィアでは何故か俺が反対しないとあっさり話がまとまってしまうんだ。……不思議だなぁ。
出席と言えば、割と色んなところでお誘いがあって、そこを巡って顔を出すのが公的な俺の仕事になっている気がする。
特に忙しいのは年末年始。ここにイベントが特に集中する。とりあえず今では皆もそれを承知しているのだが、新年の一日は家族とゆっくりとは過ごせない。他の日はともかく、この日だけは分身君に任せることができないから余計にね。
日本で言うところの大晦日は、同盟のお偉いさんとお祝いの会。各国の王族が集うのも、俺は一人しかいないという都合で、じゃあ一カ所でまとめてやってしまおうという配慮。なお開催の場は、同盟国の間で順番に回しているので毎年料理や趣向が変わる。
そして日が変わりました、新年おめでとうございます――から、俺の多忙なスケジュールが始まる。
アミール教の新年の挨拶に神様として式典に参加。宗教に疎遠だった俺が、まさか毎年校長先生よろしく信徒に挨拶する係になろうとは……。
今年もいい年になりますように。……胡散臭いね。
そしてしばしの休息ののち、シーパング本島……のすぐそばにあるエルフの里を来訪。カレン女王にご挨拶し、夜が明けるとエルフの守護神としてエルフの初日の出に参加。数々のイベントの中でもここだけは外せない。
一度遅刻しそうになったら、エルフの皆さんが俺に何かあったのでは、と軍隊まで出動しかけていたことがあった。いったいどこに出撃するつもりだったんだ、とツッコミを入れたが、とにかく白エルフの皆さんが新年早々血気に逸っても困るので、ここには必ず出席するのである。
なおエルフの初日の出会は、俺だけでなくディーシーも参加必須である。精霊信仰が息づいている白エルフにとっては、ディーシーは母、大地母神のようなもので、彼女が来ないと一年不幸なことが続くとエルフたちが新年早々ダウナーになってしまう。……自然と共に生きる種族にとって、精霊や神がこない=不作、不幸の象徴なのだ。
初日の出をエルフと過ごし、新年の幸運を祈った後は、新年の神様参り――と言ったのはベルさんだったか。
まあとにかく、俺が国や地方を巡って、あけましておめでとうを言いに行く。縁の深い場所にはほぼ毎年、ジン・アミウール来訪希望のリストからピックアップした場所を巡る。
これには熱烈な俺誘致合戦が毎年繰り広げられているとか。秘書であるラスィア――ではなく、外交担当のエルダーエルフのニムが正確な情報確認の上に、厳正な抽選を行い決まるのだそうだ。
かくて、一日がかりで、ポータル経由で巡るわけだが、世界旅行というには行事色が強い。
だから妻たちや子供たちも、ついてきたり帰ったりで、最初から最後までいるのは俺だけだったりする。なお、最初から最後までいないのが一人いて、これはエレクシアが該当する。
プロヴィアの女王である彼女は、当日は俺とは逆に王城にいてやってくる民を迎える役があって、席を外せないのである。……仕方ないね。
そして二日になると、ようやく一切の行事もなく、家でまったりする。この日は同盟各国も神の祝日とかいう名前のお休み日となっている。由来は……まあ言うまでもないだろう。
この日辺りから、子供たちがそわそわし出す。気の早い子はこの二日から動き出す。ベルおじさんがきたら、もう止まらない。
「『日本』に行くぞ」
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