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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1926/1942

第1916話、地底シェイプシフター問題


 地底世界は平穏を取り戻した。

 探索の偵察機が地底のどこを飛行しても、現在のところ襲われていなかった。このまま何事もなければ、地底の開放もさほど時間がかからないだろう。


 同盟各国で、地底に絡みたいと思っていた人々もようやく準備や投資が報われると、一日でも早い開放を求めている。

 まあ、安全確認が優先だけどな。


 大ムカデ騒動の時もそうだけど、制御を外れた個体が周囲を取り込み、増殖とか面倒でしかないからね。わざわざ餌を提供するのはよくない。


 閑話休題。

 俺はウーラムゴリサにいて、国の復興作業を進めていた。復興といっても地底シェイプシフターとは関係なく、それ以前から荒廃していたわけで、ようやく集中できるかなというところ。


 今のところ問題になりそうなのは、一部のニーヴ人がウーラムゴリサに移住を希望していること。お隣のヴァラン国から追放された人たちだけど、故郷に戻れなくてもそれに近い場所、慣れた環境に住みたいという声だ。

 ……うーん、難しいなぁ。


 というのも、ウーラムゴリサ人になるというのなら多少考えてもいいが、ニーヴ人のままというのは、そのお隣のヴァラン国から当てつけのように思われるかもしれない。

 ニーヴ人の虐殺を行ったヴァラン人からすれば、同盟加盟国として手出しが出しにくい場所に嫌悪している民族がいるわけだ。


 それは目障りではあるし、国へ戻る機会を狙っているのでは、と疑われるかもしれない。もしニーヴ人ゲリラみたいなのが、ヴァラン国でテロなどを起こせば、ウーラムゴリサ国がテロを支援していると因縁をつけられる要因になるかもしれない。


 特にウーラムゴリサが何もしなくても、テロリストがそこから来たというだけで、協力、支援をしたと見なすかもしれない。事実はどうあれ、国際社会というのは難癖だって大義名分になってしまうのが怖いところ。

 ウーラムゴリサからニーヴ人を追放せよ、なんてヴァラン国が内政干渉してきたらどうしようね。


 考え過ぎかもしれないけど、数年、十数年と経てばそういう父母、祖父母の故郷を取り戻せとか、血気に逸る若者が出たりする可能性も否定できない。

 国が豊かであれば、そういう暴力的な行動はでにくいけど、それはウーラムゴリサ国の国政にも関係する話である。そして国民全てを満足、納得させるというのはまず不可能だから、それもまた難しいところだ。


 二度目の閑話休題。

 なかなか話題が尽きないが、同盟軍、同盟議会で一つの問題が大きな話題となっていた。それは地底シェイプシフター問題。

 戦争は終わったのに、何が問題なのか? 残っている地底シェイプシフターが問題なんだ。


「制御できるのであれば、地底シェイプシフターは労働力として同盟のために活用すべきではないか?」


 いわゆるシェイプシフターを前大陸戦争の復興や労働力として活用しよう派と、危険だから処分しよう派が争っているのである。


「もし制御できなくなったら? 社会に浸透したシェイプシフターによって、今度こそ同盟が、いや世界が滅ぶ」

「まず限定的に使用してはどうか? 一般に解放せず、隔離した場所で使うとか、今後の地底開拓で使うとか――」

「制御できるとは言うが、その制御装置自体が問題では? たとえば我が同盟に敵対的な者が万が一そのコントロールを奪い、同盟を攻撃してきたとしたら?」


 将来の危険性の問題。制御できるってことは、まあそういうことなんだよな。いいも悪いも使い手次第というやつ。

 俺は同盟議会の議員ではないから、話を聞くだけで特に意見を出せる立場ではない。……といいつつ、ウーラムゴリサ国の代表議員は、実はシェイプシフターで間に合わせているから、あまりこのことでどうこう言えないのよね。


 制御の問題とか言い出したら、俺が保有している姿形の杖のこともある。俺に不満を持つ人間が、そのことで杖を同盟に提出すべきとか、あるいは廃棄すべきとか言い出すとまあ、面倒ではあるわけだ。

 一応、冒険者の持ち物という、冒険者ルールのおかげでこれまで問題にはなってこなかった。いわゆる伝説級の武具は見つけた冒険者のもの、というやつだ。


 国が取り上げたりはできないよう、冒険者ギルドが保護しているが、この冒険者法の変更とかやりだして、現職冒険者たちと同盟が対立とか色々厄介な火種にもなりかねない。

 金で買うとかして、冒険者と国がレジェンダリーアイテムの取引をすることはあるし、それがもっぱらだけど、法改正までするとなると、国に縛られたくない気風の強い冒険者はまず対決姿勢を鮮明にするだろうね。


 とまあ、俺のことは置いておくとして、地底シェイプシフター拠点から回収した制御装置と、待機している地底シェイプシフターをどうするか、絶賛意見が分裂しているところであった。


「この件に関しては、俺は出しゃばる気はないよ」


 帰宅し、夕食の席で俺はジャルジーに告げた。同盟議会議長をやっている彼も、今日の職務を終えて……なく、休憩タイムで家に子供たちと来ている。

 同盟議会の最大の議題が、地底シェイプシフター問題である。それもジャルジーの悩みどころだ。


「制御装置は、同盟軍が厳重に保管している」


 ジャルジーは言った。


「残ったことで、その処理に困るとはな」

「制御するまでに壊したら、後が怖かったからな、しょうがないよ」


 残っている地底シェイプシフターが制御をはずれて暴走したら、今頃戦争は続いていたぜ?


「兄貴としては、どうするのが最善だと思うんだ?」

「お前はどうしたいんだ?」


 俺が逆に問い返すと、ジャルジーは顔をしかめた。


「オレが聞いているんだぞ?」

「お前の望む答えを聞かせてやろうかと思って」


 俺は肩をすくめる。


「正直にいえば、どちらでもいい。俺の持ち物にまで手を出さなければね」


 正直に言えば、どちらも一理ある。


「道具というのは、使い手を映す鏡だ。善にも悪にもなる。絶対に敵対する者に渡らないというのであれば、人々の生活の発展のために役立つだろう。だが何者かに操られたり、暴走した時に押さえられないというのなら、封印するなり処分するなりが妥当だと思う」


 まずは安全性の確保だろう。それができるかできないかを基準に考えてみるのはどうかな?

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