第1915話、地底戦争の終結
俺たちのアシスト、という言い方はあまり好きではないが、突撃海兵たちは目標だった地底シェイプシフターの制御装置を制圧した。
その後の解析班の操作により、装置は機能を停止。地底シェイプシフターは動きを止めて、外での戦いも唐突に終わった。
『やれやれ、だったな』
とは、ベルさんの第一声。まったくだな。でもこれでシェイプシフターとの戦争は終わる……といいなぁ。
艦隊の分身君とも確認をとっておこう。
『これまで出ていた地底シェイプシフター軍がパッタリ出なくなったよ』
戦艦『バルムンク』で指揮をとっていた分身君は答えた。
『長距離の偵察機や監視ポッドからも、動いている敵の姿はなし。大人しくなったものだ』
「どうやら効果はあったみたいだな。了解、引き続き監視を頼む」
『了解』
通信を終える。どうやら現状、すべての地底シェイプシフターに影響を与えたようだ。効果範囲があるとか、そういうのはなかったようで一安心。
シーパング同盟軍は、目的であった地底シェイプシフター拠点を制圧に成功した。やったぜ!
ということで――
「俺たちも帰るか?」
『そうだな。一杯飲んで、のんびりするぜ』
ベルさんは気楽なものだった。羨ましいことだ。
「帰ったら俺は、色々やること待ってそうなんだよな」
『今日くらいは分身君に任せろよ』
「……それもそうだな」
それでもやること、というか後処理とかあるんだろうな。何も一人でやることはないんだ。複数の分身君で分かち合おう。
『主よ、通信が入っているぞ」
DCロッドさんが知らせてくれる。おやおや――
「どこからだ?」
『第一突撃海兵連隊、ラングー大佐からだ』
すぐ近くだった。まあ歩いて行き来するにはちょっとお時間がかかるんだろうが。
「繋いでくれ。――こちらウーラムゴリサ王、ジン・アミウールだ」
『閣下』
ラングーが挨拶をしてきた。ちょっと長いので大したことがなさそうなところは聞き流す。
『――閣下のお力添えのおかげで、被害を抑え、作戦を果たすことができました。改めて、ありがとうございます』
「そう言われると、出てきた甲斐はあったよ、大佐。突撃海兵の勇猛さには敬服する」
お礼を言われたのでこちらもそれに応じる。それ以外に特に用件はなかったので、俺とベルさんは母艦に戻ることを告げて、後処理を任せる。
……しつこいようだが、俺は今回の作戦には完全に飛び入り参加で、この作戦において俺がやらなければならないとされるのは何一つない。とんだお節介がいたもんだ。
施設の外へと出る。突撃海兵の防御陣地があって、キングエマン級戦艦がデンとそびえている。
上空の艦隊戦はともかく、渓谷近くでも戦闘があったらしいのが見てとれる。
エマン先王の旗艦が無傷っぽいのはさすがである。義父さんに何かあったら、アーリィーはもちろん子供たちも悲しがるからね。
空を見れば、同盟軍艦隊が集結していた。うちのバルムンク艦隊に加え、エルフ艦隊もその姿を見せている。
モル提督――モル代表にも礼を言っておかないといけないな。
そして、この戦いで散った勇敢なる同盟軍兵士たちに哀悼の意を表する。
地底シェイプシフターの行動を完全に止めることに成功したのならば、地上世界に一切被害を出すことなく戦争を終わらせられたことを意味する。
開戦から民に一切被害を出さずに終戦にこぎつけた。兵の犠牲は無駄ではなかった。兵士の本懐を遂げられたと思う。
一番なのは、兵たちも無事に故郷や家に帰ることであるが。
……犠牲が出ないように苦心したんだがな。戦争が拡大し、俺の手から離れて、どうにもならないことも増えて……。所詮、俺は一人の人間だったということだ。神様にはなれない。
・ ・ ・
シーパング同盟と地底シェイプシフターの戦争は終結した。
普通は停戦なり終戦なりの交渉や戦後についての話し合いが行われたりするものだが、相手が人間と一切交渉しないシェイプシフターということもあり、行動を封じ、制御できると確定した時、それで同盟軍ならびに同盟議会は戦争の終了を宣言した。
なんともあっさりしたものだ。大陸戦争でも、停戦から少々揉めたりしたものだけど、相手が人間でないだけでこうも交戦終了からの決着が早いとはね。
まあ、その分早く兵たちが家族のものへ帰れるのはいいことだ。
ウーラムゴリサの王として、これからの地底世界について国や同盟議会と色々やらなければいけないだろうが、ひとまずは家で終戦を祝いたい。
ということで、パーティーホールで祝賀会を開催。義父さんであるエマン先王に、同盟議会議長のジャルジーほか、参戦してくれたエルフのモル代表、そしてカレン女王、シーパング国のヴァリサもやってきた。
子供たちも、おめかしはしていたけど正装は早かったかな。だいぶ男の子たちは窮屈そうにしていたし、ぐずった子もいた。一方の女の子たちはヒラヒラのドレスを着てご機嫌だった。絵本の中のお姫様みたい、と言ったのはルマだったか。
次女のリュミエールが五歳ながら、まさしくお姫様みたいで綺麗だった。この子、同世代の平均から見ても身長が高めだからか、妙に大人っぽく見えてしまう。母親が絶世の美女と評判のエレクシアな影響もあるかもしれない。お父さんじゃなくてお母さん似なんだよね。なお長女は、ちょっと早い反抗期か、他の子たちに比べてドレスにきゃっきゃしなかった。
無事に明日を迎えることができて何よりだ、とエマン先王は言ったが、まさにその通りだ。
子供たちは戦争の実感なんてまるでないけど、俺やベルさんはそのギリギリの場所にいて、生き死にを見た。だからこそ、こうして子供たちを抱き上げられることは幸福以外のなにものでもなかった。
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