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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1924/1938

第1914話、番人を焼け


 それは人の形をしていた。灰色の肌に赤い髪。いつか聞いた地底人のような姿だった。どちらかといえば胴長のせいで足が短くみえるが、紛れもなく人で、鎧のようなものを体にまとっていた。

 だが高さ6メートルもの大きさは、例の円盤都市の住人にしては大きすぎる。巨人とも言えるサイズかもしれない。


 突撃海兵たちは、突然現れたそれに、銃を撃つ手を止めた。もしかしたら地底人ではないか、という思い。魔人機サイズであっても、想定外の状況に皆、困惑してしまったのだ。


『馬鹿野郎! そいつはシェイプシフターだぞ!』


 ベルさんの怒号がスピーカーに流れた。果たしてそれは前線の突撃海兵らの耳に届いただろうか。

 地底人風の巨人はニィ、と歯をむき出して笑った。その瞬間、前へと飛び込んだ。


『!?』


 着地地点にいたパワードスーツ『サラマンダーⅡ』が思い切り踏み潰された。中の人はミンチだろう。それが外からわかるくらい潰れた。


『くそっ!』


 僚機が12.7ミリ重機関銃を向けようとした時、巨人は手から斧を作り出すと、それを叩きつけてサラマンダーⅡを潰した。


 この動きはシェイプシフターだ。周りが倒そうと動いたところで巨人はさらに突撃海兵の部隊内へと踏み込んだ。

 これでは味方への誤射の危険が高まる。


 これはいけない――Tセカンドのコクピットにいた俺は、即座にスタンプガンを操作した。


「敵は前にもいるぞ!」


 巨人ばかりに気を取られていると、またも生み出された二体目にやられる。Tセカンドから放たれた火炎弾は瞬時に転移して二体目の巨人を燃やした。

 本来なら弾速の遅い炎の弾だが、転移で弾を飛ばすスタンプガンならトリガーを引いたらそこに直撃だ。

 さすがに突撃海兵の部隊に踏み込んだ奴には誤射もありそうで躊躇われるが、その前ならば撃てる。


 むしろ肉薄される前に撃たないといけない。対シェイプシフターなんて、近づかれたらロクなことなどないのだ。


「ディーシー、もし手が空いているなら、あの装置から増援が到着しないようにできないか?」

『このフロアの外から来る奴の対処中だ』


 DCロッドは答えた。


『奴らはどうしてもこちらに来たいらしくてな。隙間を見つけてやってこようとしている。すまんな、主よ』

「いや、充分よくやってくれているよ」


 目の前の敵にだけ集中すればいい環境を整えてくれているんだからな。働き者の相棒に感動だな。


「しかし……」


 またも杖型装置から、地底人型シェイプシフターが生成され、それを俺はスタンプガンで狙撃する。

 ……これ、リスキル――リスポーン・キルみたいだな。出てきたところを何もさせずに撃ち倒す。ゲームだったら相手はぶち切れ大炎上だろう。


 まあ、ゲームと戦争は別物だからな。某ライアン上等兵の映画でも、上陸用舟艇のランプが降りた瞬間、レンジャーたちをMG42機関銃が射殺しまくっていた。何もさせずに敵を撃つ、減らすは最善手でもある。


 突撃海兵たちが、1体の地底人型シェイプシフターに苦戦を強いられている。もしあれが複数襲いかかってきたら、海兵たちは撃退されてしまうのではないか?


「ここはでしゃばりと言われても、前に出て装置を確保すべきじゃないか……?」


 もう鉄砲は撃っているわけで、増援阻止という観点で手出ししているわけだし。


「どう思う、ベルさん?」

『それには及ばねえみたいだぜ』


 ブラックナイト・ベルゼビュートが指さす。突撃海兵が地底人型シェイプシフターと戦っている中、別の分隊が迂回して前進を始めたのだ。

 そうそう、如何に敵が強かろうと、数が少ないなら物量の差を活かした戦いをしなくちゃね。


「頼むからこっちの射線に入ってくれるなよ……」


 杖型装置は、複数の増援を生成する。こっちはそれぞれに銃口を向ける手間が発生している。射線に入っているところに引き金を引いたら即命中。始末が悪いのは海兵にはこちらの撃っているプラズマ弾が見えていないということだ。つまり射線がわかりにくいから、海兵も気づかないまま入ってくることもあり得る。


「神経使うなぁ……」


 味方を殺したくはないんでね。細心の注意を払う。

 1体目の地底人型シェイプシフターは、相変わらず暴れ回っている。振り回した斧にヴォルカンが押され、足元のサラマンダーⅡが潰される。距離が近すぎて、飛び道具が封じられているというのがよろしくない。


『海兵どもでは抑えられんか』


 ベルさんがじれったくなってきたようだった。


『仕方ねえ、お節介を焼いてやるか』


 言うやいなや、ブラックナイト・ベルゼビュートが動いた。マギアスラスターで加速。ただでさえでかい機体で乗り込み、突撃海兵たちもビビる。視界の中で悪魔っぽいのがよぎれば、それはビックリするだろう。


『おらぁ!』


 大剣を振り回し、突進するブラックナイト・ベルゼビュート。地底人型シェイプシフターも斧を構えて、漆黒の機からの突撃を受け止める。

 そこで斧がぐにゃりと曲がり、浸食しようとするが――


『甘いぜ』


 大剣の刃が瞬時に高熱化して、触れている部分のシェイプシフターを瞬時に焼き、蒸発させた。

 驚く地底人型シェイプシフター。ベルさんのブラックナイト・ベルゼビュートはそこで蹴りを入れて敵巨人を後ろへと吹き飛ばす。


『それ、海兵ども! 撃ちまくれ!』


 言うやいなや、ベルさんは転移を使い、ブラックナイト・ベルゼビュートを消した。射界が開け、距離が離れたのを幸いと突撃海兵が仲間の仇とばかりに一斉に銃弾を叩き込んだ。


 着弾と共に燃え上がる銃弾の嵐は、地底人型シェイプシフターを蜂の巣にし、そして燃え上がらせた。


 へえ、やるもんだな。ベルさんもアシストできたんだな。俺は皮肉りたいのをこらえて、戻ってきたブラックナイト・ベルゼビュートを見た。

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