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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1923/1937

第1913話、杖を目指せ!


「第二大隊、前進!」


 第一突撃海兵連隊、ラングー大佐は命じた。

 パワードスーツ(サラマンダーⅡ)部隊と共に、魔人機ヴォルカンもまた随伴。ディーシーが切り開いた大通路に、同盟軍が誇る突撃海兵が突き進んだ。

 対して地底シェイプシフターもパワードスーツ、魔人機サイズに合体、変身を行うと海兵を迎え撃った。

 機関銃やマギアライフルなど、同盟軍が使っているもののコピーを使ってくる。


 サラマンダーⅡも爆裂弾込みの12.7ミリ重機関銃で反撃する。

 炎上するシェイプシフター。被弾し倒れるサラマンダーⅡ。突撃海兵と地底シェイプシフターの壮絶なる銃撃戦が繰り広げられる。

 だが突撃海兵は果敢にも突き進む。


 俺たちは突撃第二陣とは別に、戦況を見守る。味方の兵が倒れていくのを見るのは、何ともつらいものだ。

 装甲に守られたパワードスーツといっても、マギアライフルの直撃を受ければ半身が吹っ飛ぶようなこともあるし、徹甲弾が貫通して内部の人体を破壊することもある。爆発はしないが、倒れたパワードスーツを見ると、中の人間は大丈夫だろうかと不安になる。

 ベルさんがじれったくなったのか言った。


『まとめて吹っ飛ばせば楽なのにな』

「そうだな」


 俺も同意しておく。実際は、エクスプロージョン爆弾を撃ち込むと奥にあるシェイプシフターの制御装置も巻き込んで壊してしまう可能性があって使用不可。

 突撃海兵も大火力は使えず、目の前の敵との銃撃戦を演じるほかにない。すでにその名の通り突撃している海兵たちがいて、仮にエクスプロージョン爆弾なんて使ったら味方も巻き込むことになるだろう。

 勇猛なる海兵たちの奮闘に期待するしかない。


「しっかり守られているな」


 地底シェイプシフターもまた前進しているが、装置のそばにもきっちり護衛がついている。あれがなかったら転移で一気に突入もあり得たが。


「ちょっと狙撃してみるか?」

『今は海兵に任せるべきじゃないか、主よ』


 DCロッドからの注意が飛んだ。


『余計なことをしたなどと言われたくはあるまい?』

「余計なこと、ね……」


 マップと進撃用の通路を提供して、余計なことですか。……まあ、予定にないところに乗り込んできているという点は否定しようがない事実ではあるが。



   ・  ・  ・



『これはどういうことだ……?』


 そのシェイプシフターの疑問は、すぐに周囲に届く。


『我らが基地の構造が変化した?』

『我々ではない』

『そう、我々ではない』


 この基地が変身するということはない。古代文明時代の施設を、地底シェイプシフターが使っているだけで、床は床であり、壁は壁、天井は天井であってシェイプシフターではない。

 だがシェイプシフターが変身したかのように、基地の作りがまるで変わってしまった。


『我らの創造の杖のあるフロアが、敵の攻撃を受けている』

『阻止しなくてはならない』

『阻止だ』


 シェイプシフターたちはざわめく。ドリルに変化し壁を穿とうとする。しかし壁も天井も異様に硬い。


『おかしい。ここまで強固な素材ではなかったはずだ』

『破壊困難……』

『何故――? 何故――? 何故――?」


 混乱するシェイプシフターたち。基地のそれぞれの場所で分断され、合流を阻まれている。

 このままでは創造の杖――地底シェイプシフターの制御装置が、敵の攻撃で破壊されてしまう恐れがあった。



   ・  ・  ・



 第一突撃海兵連隊第二大隊は、全くもって勇敢であった。

 味方分隊を援護しつつ、交互に前進することで着実に制御装置へと距離を詰めていた。地底シェイプシフターも反撃するが、突撃海兵の絶え間ない攻撃――相互に撃ちながらの前進に、反撃のタイミングが少なく、距離を詰められれば突撃海兵に範囲の狭いエクスプロージョン手榴弾や火炎放射で焼かれていった。


「大したものだ」


 同盟軍海兵の見事な戦いぶりに素直に感心する。大陸戦争で近代戦のわからない、中世の頃のような兵士たちを教えた頃とは雲泥の差であった。人間、変われば変わるものだな。


「ディーシー、他の敵シェイプシフターの動きはどうだ? 増援が来そうか?」

『来ないように操作している』


 DCロッド状態のディーシーは答えた。


『連中は壁に穴を開けようとしているがな、しばらくは大丈夫だろう』

「穴掘りをやっているのか」


 やるもんだ。だがこの封鎖状況で、制御装置のある部屋まで辿り着くのはどれくらい先になることやら。


『こちとら無敵のダンジョン壁に変化しているからな。ワーム系にでも化けない限りは、この壁は簡単には抜けられん』

「ダンジョンの壁は相当頑丈だもんな」


 壁と呼ばれるものの中で最強の硬さといったら、ダンジョンの壁。ブァイナ金属と合わせたダンジョンウォール材は、俺のタイラントや一部カスタム戦艦の装甲にも使っている。何故かワームだとあっさり抜かれるが、それ以外に対しては滅法強い。


「あいつらがワームで抜けられると気づくかな?」

『地底世界でワームは見かけていなかったがな』


 ディーシーは答えたが、確かにこの地底にはほとんど生物を見かけなかった。知らないものには変身できないだろうが、過去遭遇し取り込んでいたとしたら、ワームに変身することも可能であろう。


『変身できるからといって、ノーヒントでワーム特効に気づくとも思えんがな』


 そうこうしていたら、突撃海兵が杖型制御装置とおぼしきそれに接近した。もう少しでこのフロアの敵が一掃できる。

 あれを制御できれば、この戦いもおわり――などと考えたのがいけなかったのか、杖から新たなシェイプシフターが生成された。


 新たな番人が呼び出されたのだ。

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