第1912話、ゴールを目指して
第一突撃海兵連隊は、その名の通り、突撃海兵で構成される部隊である。
機動巡洋艦、揚陸艦から敵地への強襲上陸をかける任務の際に投入される。上陸戦闘のエキスパート集団である。
そして第一とある通り、シーパング同盟軍で編成された突撃海兵の連隊の中で最古参。かつもっとも実戦経験が多い部隊である。
今回の地底シェイプシフター施設制圧のために、突撃海兵大隊三個を率いて、連隊は施設に突入を果たした。
が、ここから先に進めない。後からどんどんと湧いてくるシェイプシフターのせいで通路を進めず、火炎放射とエクスプロージョン手榴弾で一進一退を繰り返している。
俺はディーシーと共に仮設の連隊本部に赴き、情報交換した。ディーシーがスキャンしたマップデータを提供する傍ら、連隊長のビル・ラングー大佐と現状を確認する。
「――とりあえず、ここに敵シェイプシフターを制御できるかもしれない装置がある」
DCロッドのスキャンで判明したマップを指し示し、俺は大佐に告げた。
「君たちが真に制圧目標としていた場所だな」
「そうなります」
ラングー大佐が頷くと、周りの連隊幕僚たちはざわめく。
敵地に乗り込んだはいいが、正面フロアから進めていなかった海兵連隊である。制御する杖の場所も当然、わかっていなかった。
それが後からやってきた俺たちがマップを出してくればまあ、驚かれるのも仕方がない。本来、俺はこの作戦にいない人間だから特に。
「ですが、我々はこの正面フロアから奥へ進むことができずにいます。目標がわかったのは幸いですが進めないことにはどうしようもない」
ラングーは苦渋の色を浮かべる。ここは渓谷の地下。魔導放射砲や通常のエクスプロージョン爆弾で一気になぎ払うというのができない場所だ。第一突撃海兵連隊でなくても苦戦は免れない。
……まあ、俺たちは介入するんだけどね。
「ここの地形を改変しよう。現状のルートを塞いで、敵の前進を不可能にして、こちらは敵の制御システムのあるフロアへの通路を作って、君たちが進めるようにする」
「可能なのですか、閣下?」
地形を変えるなど、と幕僚たちも息を呑んでいる。
「できないことは言わないつもりだ、大佐。もうすでにこの施設は我々の術中だよ」
ダンジョンコアがあれば、とはさすがに口には出さないけど。魔術師が魔法といえば、大体何とかなってしまう世界である。
「私はTセカンドから地形改変をする。あれは、私にとっての魔法の杖だからね」
「了解であります。では我が連隊から突撃隊を編成し、閣下が啓開した通路から制御装置のある部屋を制圧します」
「よろしく」
俺は手を振ると、連隊本部を出て、駐機されている愛機のもとへ歩く。ディーシーが無表情で周囲に聞こえないような声を出した。
「よかったのか、主よ。制御できるかもしれない杖を彼らに委ねて」
「元々、俺抜きで進められていた作戦だ」
俺なしで地底シェイプシフター施設を制圧し、制御する杖を捜索し、あれば回収するという段取りだったはずだ。
「ここで俺が横からかっさらっちゃうとまた何か言われそうだ」
介入している時点で、もう何か言われるのは確定しているけどね。動いたのが俺のウーラムゴリサ国だけでなく、エルフ軍やエマン先王まで飛び入り参加してしまったので、俺だけが悪目立ちすることはないだろうけど。
Tセカンドの傍には、ベルさんのブラックナイト・ベルゼビュートが待機していた。コクピットが開いていて、ベルさんが顔を覗かせる。
「動くのか?」
「おう」
Tセカンドのコクピットに乗り込む。ディーシーはDCロッドに変わり、機体と接続。モニターに、この地底シェイプシフター施設の全体像が表示される。
「では、ダンジョンとなった施設を操作しようか」
『了解。まず現在通じている通路を完全に封鎖する』
ディーシーの宣言と共に、マップ上で通路が消える。ただ壁が生えたとかそういうものではなく、完全に通路が遮断された。隙間から突破、などもできない。
突撃海兵を迎え撃とうと突き進んでいた地底シェイプシフターは壁にぶち当たり、行き止まり、そしてあっという間に通路をいっぱいに満たす。
『だが奴らも馬鹿ではない。壁がなければ穴を作ればいい……』
ドリルなどに変化させて壁を掘り始める地底シェイプシフター。DCロッドは笑う。
『地形変換……溶岩を流す』
通路の一部が溶岩に変化。足元から触れた地底シェイプシフターが、途端に焼けそれは周りに燃え移る。
さらに天井からも溶岩の塊が降りかかり、シェイプシフターが溶けていく。
『しばらくこの通路に溶岩を流し込む』
ディーシーは言った。
『これで前進を止めない限り、勝手にシェイプシフターたちは焼け死ぬ』
「昔、ゲームでこんなトラップがあったな」
敵が勝手に突っ込んで、勝手にやられていくやつ。そしてそれがディーシーの手によって実行された。
前のがやられて、後ろから押しだされているシェイプシフターは溶岩に向かって勝手に自爆している。
これまで突撃海兵が火炎放射でやっていたのとまったく同じ光景であるが、決定的な違いは火炎放射機は燃料が切れると使えなくなるので、海兵の燃料を枯渇させれば突破できたことだろう。
だが溶岩は勝手にシェイプシフターを溶かすように焼きつくすので燃費の点で段違い。これが冷めるのが先か、シェイプシフターが全滅するのが先かの問題となるわけだ。
燃料消耗を狙えた火炎放射機から溶岩トラップに変わったことで、シェイプシフターたちの突撃がまったく無意味なものになった。
頭のいい奴らのことだから、そのうち突撃をやめるだろうが、それまでせいぜい自滅してもらおう。
「よし、突撃海兵のために道を作るぞ」
制御装置のある部屋まで直通のルートを、ダンジョンを作るように切り開く。他の通路と被らないようにして。
「パワードスーツだけでなく、魔人機が動き回れるくらいに」
何なら、Tセカンドやブラックナイト・ベルゼビュートで乗り込めるくらいにな。ディーシーは敵施設を自身のダンジョンのように操作、造り替えていく。
そして道は開かれた。
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