第1911話、地図を作成してみれば
ディーシーのスキャン結果の他、思ったより施設の範囲が広いことが判明した。
『階層はそれほど深くない』
我らがダンジョンコアロッドさんは、そう告げた。
『奥行きがかなり広いタイプだ。峡谷の長さ以上に奥があるというところだな』
だが――とディーシーは顔を曇らせた。
『この区画がよろしくない』
「おい」
ベルさんが、スキャン報告をモニターで確認しながら口を開く。
『深くないんじゃなかったのか?』
映し出されたマップの一区画がクローズアップされる。その大きさは、先ほどまでの地底シェイプシフター施設のこれまでの比ではなく、グングン小さくなっていく。否、それだけ巨大なのだ。
『シェイプシフタープールだな。深さ十数キロ級の大クレバス。そこにシェイプシフターが沈んでいる』
「つまり、これが連中の予備戦力ってことだな」
これまで相手にしてきた大群に匹敵する連中が控えている。まったく嫌になってしまうな。
「だが固まっているなら、ここに火を落とせば油の如くよく燃えてくれるだろうな」
むしろ集まっているうちのほうが処理は楽かもしれない。エクスプロージョン爆弾を送って差し上げよう。
「他に注目すべき点は?」
『ここだ』
スキャンされたシェイプシフター施設の一点が点滅する。
『ここに他とは異なるエネルギーを探知した。形状から判断すると、我らが探していた姿形の杖に似た形状のようだ』
『おいおい、それってつまり……』
「これを手に入れるか破壊すれば、この戦争も終わりになるかもしれないってことか?」
ベルさんと俺が確認すれば、DCロッドは淡々と返した。
『だったらいいな。それが探している例のものだったら』
『はっきりしねえんだな』
『大きさがな』
ディーシーは考えるような声を出した。
『我々が想定している姿形の杖の十倍くらい大きい』
「それは、デカいな……」
それ、もう杖ではなくない? 杖の形をした何か。
『そういうことだ。古代人の作った姿形の杖が元々この大きさだったのか、あるいは地底シェイプシフターたちが新たに作り出したものなのか、正直外見をスキャンした程度では判断がつかない』
「なるほどな」
もし前者であれば、こいつが地底シェイプシフターを制御できる大元。だが後者であれば、制御する杖、装置は別に存在するということになる。それだと、この戦争も終わらない可能性が高くなる。
「行って、確かめるしかないか」
『ジン、転移でこいつを引っこ抜けねえのかい?』
「ディーシー、映像は出せるか?」
『やってみる』
テリトリー化により施設内に監視の目を発生させて、対象を確認。それを俺も見てみるが……。
土台があって、なるほどなるほど杖状ではあるけど、これは。
「うーん、これ、どこまで装置なのか判別できないな。中途半端な部分を転移させて壊したら面倒なことになりそうだ」
『壊すのは推奨できないな』
ディーシーも同意するように言った。
『装置を失って機能を停止する、消えるのが確定しているのなら、さっさとへし折れという意見に賛成するが、制御を失ったら暴走するとなったら目も当てられん』
ああ、それは大惨事だな。
「そもそもこの杖って、暴走の前科アリだしな。制御できなくなって地底人が滅びたっていうね」
『まだ、その制御できる杖と決まったわけではないがな』
と、ディーシーさん
「だから行ってみるんでしょうが。ディーシー、この部屋の周りの様子はどうだ? 地底シェイプシフターはどれくらいいる?」
いなけりゃ転移ですぐにでも移動するが。
『護衛がいる』
モニターに表示される敵を示す赤い光点。その数にベルさんが『うへぇ』と声を出した。
『結構いるな。というか壁や床に擬態していないか?』
パッと見で見える奴と見えない奴の混成。侵入者は、目に見える番人に気を取られたら、隠れている奴にばっさり視覚外から攻撃されてアウト。
「きっちり面倒にやっているな」
どちらか片方なら対策を立てやすいが、両方あるとそのどちらにも対応できないといけなくなる。当然、こちらのかかる手間も倍増だ。
『エクスプロージョン爆弾をぶち込んで一掃してぇな』
「制御する杖らしきものもまとめて吹き飛んでしまうな、それは」
当然、それはダメ。ベルさんの案をやってみたい衝動は俺にもあるけどね。
などと考えていたら、突撃海兵の士官らが、俺のTセカンドに近づいてきているのがモニターに映った。兵隊さんが揃って歩いている姿は、割と迫力あるよね。
コクピットハッチを開けて、やってきた士官たちを出迎える。と、向こうから敬礼してきた。その中で一番階級の高い中年佐官が口を開いた。
「アミウール閣下、よろしいでしょうか?」
「何かな?」
答礼を返す。礼儀だからね。
「自分は第一突撃海兵連隊、ビル・ラングー大佐です。閣下がこちらに御座すので、これからの行動についてご相談を、と思いまして。よろしいでしょうか?」
つまり、手詰まりでどうしよう、ってことだな。外では同盟艦隊が戦っていて、早く施設の攻略を進めるようにせっつかれているのに、部隊は正面フロアから進めていない。これでは艦隊の犠牲が増えるばかりで、作戦の成功もおぼつかなく……というところだろう。
俺がたまたまここにいるから、何か知恵を借りようということだ。
「構わないよ。ちょうど地図を作成したところだ。共有しよう」
「ありがたくあります、閣下」
海兵たちがホッとしたような顔をした。時々俺と会うと緊張する人がいるんだよな。まあ、一応王様だし、仕方ないね。
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