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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1921/1937

第1911話、地図を作成してみれば


 ディーシーのスキャン結果の他、思ったより施設の範囲が広いことが判明した。


『階層はそれほど深くない』


 我らがダンジョンコアロッドさんは、そう告げた。


『奥行きがかなり広いタイプだ。峡谷の長さ以上に奥があるというところだな』


 だが――とディーシーは顔を曇らせた。


『この区画がよろしくない』

「おい」


 ベルさんが、スキャン報告をモニターで確認しながら口を開く。


『深くないんじゃなかったのか?』


 映し出されたマップの一区画がクローズアップされる。その大きさは、先ほどまでの地底シェイプシフター施設のこれまでの比ではなく、グングン小さくなっていく。否、それだけ巨大なのだ。


『シェイプシフタープールだな。深さ十数キロ級の大クレバス。そこにシェイプシフターが沈んでいる』

「つまり、これが連中の予備戦力ってことだな」


 これまで相手にしてきた大群に匹敵する連中が控えている。まったく嫌になってしまうな。


「だが固まっているなら、ここに火を落とせば油の如くよく燃えてくれるだろうな」


 むしろ集まっているうちのほうが処理は楽かもしれない。エクスプロージョン爆弾を送って差し上げよう。


「他に注目すべき点は?」

『ここだ』


 スキャンされたシェイプシフター施設の一点が点滅する。


『ここに他とは異なるエネルギーを探知した。形状から判断すると、我らが探していた姿形の杖に似た形状のようだ』

『おいおい、それってつまり……』

「これを手に入れるか破壊すれば、この戦争も終わりになるかもしれないってことか?」


 ベルさんと俺が確認すれば、DCロッドは淡々と返した。


『だったらいいな。それが探している例のものだったら』

『はっきりしねえんだな』

『大きさがな』


 ディーシーは考えるような声を出した。


『我々が想定している姿形の杖の十倍くらい大きい』

「それは、デカいな……」


 それ、もう杖ではなくない? 杖の形をした何か。


『そういうことだ。古代人の作った姿形の杖が元々この大きさだったのか、あるいは地底シェイプシフターたちが新たに作り出したものなのか、正直外見をスキャンした程度では判断がつかない』

「なるほどな」


 もし前者であれば、こいつが地底シェイプシフターを制御できる大元。だが後者であれば、制御する杖、装置は別に存在するということになる。それだと、この戦争も終わらない可能性が高くなる。


「行って、確かめるしかないか」

『ジン、転移でこいつを引っこ抜けねえのかい?』

「ディーシー、映像は出せるか?」

『やってみる』


 テリトリー化により施設内に監視の目を発生させて、対象を確認。それを俺も見てみるが……。

 土台があって、なるほどなるほど杖状ではあるけど、これは。


「うーん、これ、どこまで装置なのか判別できないな。中途半端な部分を転移させて壊したら面倒なことになりそうだ」

『壊すのは推奨できないな』


 ディーシーも同意するように言った。


『装置を失って機能を停止する、消えるのが確定しているのなら、さっさとへし折れという意見に賛成するが、制御を失ったら暴走するとなったら目も当てられん』


 ああ、それは大惨事だな。


「そもそもこの杖って、暴走の前科アリだしな。制御できなくなって地底人が滅びたっていうね」

『まだ、その制御できる杖と決まったわけではないがな』


 と、ディーシーさん


「だから行ってみるんでしょうが。ディーシー、この部屋の周りの様子はどうだ? 地底シェイプシフターはどれくらいいる?」


 いなけりゃ転移ですぐにでも移動するが。


『護衛がいる』


 モニターに表示される敵を示す赤い光点。その数にベルさんが『うへぇ』と声を出した。


『結構いるな。というか壁や床に擬態していないか?』


 パッと見で見える奴と見えない奴の混成。侵入者は、目に見える番人に気を取られたら、隠れている奴にばっさり視覚外から攻撃されてアウト。


「きっちり面倒にやっているな」


 どちらか片方なら対策を立てやすいが、両方あるとそのどちらにも対応できないといけなくなる。当然、こちらのかかる手間も倍増だ。


『エクスプロージョン爆弾をぶち込んで一掃してぇな』

「制御する杖らしきものもまとめて吹き飛んでしまうな、それは」


 当然、それはダメ。ベルさんの案をやってみたい衝動は俺にもあるけどね。

 などと考えていたら、突撃海兵の士官らが、俺のTセカンドに近づいてきているのがモニターに映った。兵隊さんが揃って歩いている姿は、割と迫力あるよね。

 コクピットハッチを開けて、やってきた士官たちを出迎える。と、向こうから敬礼してきた。その中で一番階級の高い中年佐官が口を開いた。


「アミウール閣下、よろしいでしょうか?」

「何かな?」


 答礼を返す。礼儀だからね。


「自分は第一突撃海兵連隊、ビル・ラングー大佐です。閣下がこちらに御座すので、これからの行動についてご相談を、と思いまして。よろしいでしょうか?」


 つまり、手詰まりでどうしよう、ってことだな。外では同盟艦隊が戦っていて、早く施設の攻略を進めるようにせっつかれているのに、部隊は正面フロアから進めていない。これでは艦隊の犠牲が増えるばかりで、作戦の成功もおぼつかなく……というところだろう。

 俺がたまたまここにいるから、何か知恵を借りようということだ。


「構わないよ。ちょうど地図を作成したところだ。共有しよう」

「ありがたくあります、閣下」


 海兵たちがホッとしたような顔をした。時々俺と会うと緊張する人がいるんだよな。まあ、一応王様だし、仕方ないね。

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