第1909話、駆けつける古強者たち
地底シェイプシフター拠点への攻撃中。同盟軍第三艦隊とバルムンク艦隊は、突撃海兵が拠点を制圧までの時間を稼ぐべく、接近する地底シェイプシフター艦と交戦していた。
新兵器、消滅砲とエクスプロージョン弾によるコンビネーションは、よく敵を凌ぎ、防衛線は維持されている。
そこへ、同盟加盟国のエルフの空中艦隊が援軍として駆けつけた。第三艦隊の指揮官セールマン少将は、俺に通信してきて、エルフ軍との交渉をお願いしてきた。
彼曰く――
『自分は軍人であり、上陸部隊の防衛を命じられました。国家間の兵力について指揮権を持っておりませんので、加盟国のウーラムゴリサ王であるアミウール閣下にその辺りをお任せしたいのです』
「了解した。こちらの方で話を進める。艦隊の配置についてそれで変更になる可能性もあるがよろしいか?」
『はい、お任せいたします』
セールマンはこちらに委ねた。悪く言えば丸投げなのだが、よく言えば、大陸戦争での歴戦ぶりと今は半分政治に関わっているという立場を尊重してのものだろう。
では、エルフ軍と交信しよう。
『――またもジン様が動いているのに何もしていないのは、そろそろ我慢の限界でありました』
そう通信機ごしに言ったのは、モル議員だった。
希少なエルダーエルフにして、大陸戦争ではエルフ艦隊を率いる提督として戦った老練なるエルフである。今は同盟議会のエルフ代表議員だ。
「議員がこんなところに来てよかったのかな?」
『そうはおっしゃいますが、あなたも一つの国の王ではありませんか』
まあそれはそうね。ただウーラムゴリサは地底への入り口を有している国だ。他の国よりもこの手の厄介事を解決したいと思っているんだよ。
「エルフの艦隊を動かしたのはあなたか?」
『初めは、軍にフネを貸してくれと頼んだんですよ』
モル議員は、小型艇でもいいからとエルフ軍に言ったらしい。しかし軍幹部は『貸せるわけないでしょう!』と大きな声を出したという。
そりゃそうだ。地底シェイプシフターという強敵の前に、小型の突撃艇一隻で何ができるのか。実に常識的な対応だ。
『エルダーエルフであるモル殿に、そんなちゃちなフネを出せるわけないじゃないですか! 戦艦を出します。空母も出します。第一艦隊がいつでも出撃できます! それをお使いください!』
などとその幹部は言ったらしい。なおエルフ軍は同盟加盟国でも小規模なので、第一艦隊といえば国防を担う主力である。それがなくなったら本当に小型の警備艇くらいしか残らない。
軍幹部があっさり艦隊を出したことには呆れるが、準備ができていた、というのはひょっとしてエルフ軍も、地底シェイプシフターとの戦いが地上に飛び火した時に備えていたのかもしれない。
だとすれば、さすが大陸戦争で幾度も外部侵略にさらされた国。危機管理がしっかりしているといわざるを得ない。
世界の平和ボケをしている国も見習うべきではないか。……寿命の長いエルフからすれば、大戦後の七年なんて、まばたきみたいなものだからな。
まあ、来てしまったものは仕方がない。今は手が増えるのは歓迎すべき状況だ。しかし、これは問わねばならない。
「エルフ艦隊、対シェイプシフターで使えるか?」
大戦後の七年、シーパング同盟軍に加盟国は軍の費用と人員を出していて、自国の防衛艦隊は保有しているが、同盟軍の軍備に比べると旧型だったり性能が劣る傾向にある。
『懸念はわかります。ですが、魔法弾研究には、エルフは一日の長がありまして、エクスプロージョン弾ほどではありませんが、同様の兵器や火属性誘導兵器は準備しておりました』
あー、本当、エルフの『もし戦争になったら』の備えが完璧過ぎる。自国を守るための平時の準備は大事だ。
いつ地底シェイプシフターが地上に侵略をはじめても、エルフ軍はその日のうちにまともに迎撃戦闘ができるようになっているに違いない。
まあ、すでに同盟と地底シェイプシフターの戦争がはじまって、準備する期間はあったわけで、エルフはそれができていた。他の同盟加盟国も、『もし』に対する備えができていると信じたいが、地上に敵がきていないのをいいことに『何もしていなかった』なんて国はさすがにないと思いたい。
「了解した。ではエルフ軍には上陸船団の護衛を頼みたい。そうすれば第三艦隊やバルムンク艦隊も前進して、より防衛ラインを深くとることができる」
『承知しました』
前の方で迎撃できれば、万が一突破されても余裕ができる。同盟軍主力艦隊ほどではないにしろ、後衛に一個艦隊があるというのは、目の前の戦いに集中できるというものだ。
現在、共に奮戦している第三艦隊にも同様に伝える。エルフ軍が後衛を固めると聞いて、第三艦隊はその防衛圏を広くとるべく艦隊の配置を広げた。
そしてエルフ軍が配置につく中、今度は大型戦艦『キング・エマン』が地底世界に現れた。
さてさて、我らのお義父さんは、何を思ってやってきたのかな?
『思ったより長期戦になると聞いてな』
開口一番、エマン先王は言った。
『爆裂魔法弾が不足すると聞いて、我がキング・エマンならば、前線の兵たちに弾を補充してやれると思ってやってきた』
「それは願ってもない」
前線で戦わせろ、でなくてひとまず安心。最近のエマン先王は、孫たちにとってよきお爺さんで、非常に穏やかである。それもあって戦いたがっている様子は微塵もないが、平和過ぎて反動が出たのかなとも思っていた。
『わしも爺だからな。出しゃばって前に出るつもりはない』
だが王の経験から、後ろに控える者の役割というものは心得ているというのだ。シード・リアクター搭載による無限の魔力は、前線が必要としている魔力供給やエクスプロージョン弾の前線での生産など、今、同盟軍が欲している役割をこなすことができる。
補給艦と違い、防御重視で作られた大戦艦。ちょっとやそっとの攻撃でやられることもないのも頼もしい。……前線の兵からしたら、王様の名を冠した艦が傷つくようなことになったら何を言われるものでもないから落ち着かないかもしれないが。
とはいえ、これで前線が崩壊しない限り、かなり長期戦を戦える体制が整った。
あとは、肝心の敵拠点の攻略だが……。
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