第1908話、刺激された人々
シェイプシフターは休みを知らない。
まるで無限湧きだった。昔はテレビゲームでそういう単語があったけど、今は果たして何て言われているのか、俺は知らない。
年一に実家に帰っても、その手の話はほとんど出ないからな。携帯ゲームとか聞いた気がしないでもないが、そういう機器ばかりじゃないから、よくわからない。
閑話休題。
これは地上の敵拠点を黙らせない限り、いつまで経っても敵は部隊を送り込み続けるだろう。
消耗戦だ。
俺たちバルムンク艦隊が奮戦をしている間、準備を進めていた同盟軍第三艦隊が到着。想定より弾薬を消耗していた第二艦隊が転移で地上へと戻った。
「――同盟軍司令部によれば、遊撃部隊を編成したとのことです」
ラスィアが同盟軍からの連絡内容を報告した。
「現れる敵増援を各地で先制すべく転移奇襲をかけているそうです」
「こちらと交戦する前に数を減らしてくれるのはいいね」
防戦だとこちらは自由な行動が取りづらくなる。ヤバくなる前に逃げるとかさ、被害覚悟の戦いを強いられることになる。
もちろん、戦いとなれば被害なしでくぐり抜けることはできないし覚悟はしているが、やりようによっては避けられる人死にもあると思えば、やりきれなくもなる。
遊撃部隊は、集団には魔導放射砲。費用対効果が怪しい場合は、エクスプロージョン砲弾ないし、エクスプロージョン弾頭ミサイルや爆弾を用いて、地底シェイプシフターを焼き払う。
基本はこれまでの削りでやってきた一撃離脱の繰り返しをやっていくようだ。それが賢明だな。戦死者が出ないにこしたことはない。遺族にとっても国庫にとっても。
ともあれ、第三艦隊と遊撃部隊の参戦で、我がバルムンク艦隊にも幾何かの余裕ができた。アンバル級クルーザー群の消滅砲エネルギーの補充を進めつつ、消費したエクスプロージョン弾の魔力生成と供給を進める。
とかやっていたら、同盟軍議会から、俺宛てに連絡がきた。
「おやおや、俺が議会承認もなく部隊を動かしたからお叱りかな……?」
同盟軍司令部には話を通したし、断られていないんだけどなぁ。そもそも今回の作戦に俺抜きで進めようとした時点で、俺の介入をよしとしない者たちが一定数いるのは想像がつく。
そういうのが抗議しているのかもしれないが、できれば戦闘中につまらぬ足のひっぱりは勘弁してもらいたい。時と場合をわきまえろ、というやつだ。
などと少々被害妄想じみた予想をしていたが、連絡の内容は意外なものであった。相手は同盟軍議会の議長にしてヴェリラルド王ジャルジーだった。
『兄貴、ちょっと困ったことになった』
「俺の参戦への文句か?」
『いや、文句ではないが……まあ、兄貴のせいというか何というか』
ずいぶんと歯切れが悪いな。どうしたん?
『バルムンク艦隊の参戦を見て、こう動き出した者たちがいる。同盟軍艦隊の劣勢と見たか、兄貴の参戦を見て、エルフが艦隊を派遣すると言い出した』
「エルフが?」
俺のことを半分神様と見ているエルフが軍を動かそうとしているとか。俺の飛び入りが影響したというのなら、確かに俺のせいになるのかな……? 別に頼んではいないが。
『それと、親父殿がな……』
「お義父さんがどうしたんだ?」
アーリィーとジャルジーの父にして先王であるエマン。
『親父殿が「キング・エマン」を動かして、地底に行くと言ってきてな……。兄貴、何か親父殿の吹き込んだのか?』
「いや、俺は特に何も……」
孫たちとお食事によく来ているおじいちゃんであるエマンには、俺もよく会って仕事の話だったり王様とは、と経験者からウーラムゴリサの話をしたり、地底問題についても話したけど……。
でも顔を合わせるといえば、ジャルジーもよく家族連れて俺んところに来ているから、わざわざ確認しなくてもどういう話をしているかは見ているだろうに。
「しかし、『キング・エマン』か……」
キング・エマン級戦艦1番艦。アンバンサー大要塞戦で大破し、以後、大陸戦争には参加していなかったが、改修されて修理はされていた。
エマン先王が退位後は、彼の個人資産として保有が認められて、俺のところのウィリディス・ドックにて保全されていた。あれだ、冒険者や引退騎士が愛用の武器を保管しているのと同じ感覚だ。
俺の元いた世界では、軍艦の個人所有なんて大問題になるだろうが、魔獣が跋扈する世界において、武器の個人所有は特に責められるものでもなく、王や騎士、冒険者の武器所有は当たり前の価値観が根強い。引退した王様が戦艦を持っていても、大きな問題にはならなかった。
もちろん、それを使って海賊行為をするようなら、取り上げとか討伐対象になるんだろうけど。自己責任。武器とは所有する者次第である、というやつだ。
閑話休題。
『しかし親父殿の『キング・エマン』は、特に近代化改装をしていないだろう?』
通信機の向こうのジャルジーは言った。
『特に対シェイプシフター対策については、ノータッチだろう?』
「シールドについては、データを送ればシップコアのほうでアップデートしてくれるから、侵入防止の対策はすぐにできる」
俺の中で、『キング・エマン』参戦について、素早く思案する。あれは王が乗るからと防御重点で作られていて、今では貴重なシード・リアクター搭載の戦艦の1隻となっている。
「親父殿が参戦すると言っているなら、護衛艦隊と合流させて、上陸部隊の防衛をさせればいいんじゃないかな?」
さすがに最前線に出すのは憚られるし、今も戦っている同盟軍将兵に余計な気遣いを生じさせるに違いない。
「ただ先王でも、揚陸艦隊といて上陸部隊の最後の防衛力として存在するなら、守備する者たちにはいい刺激になるんじゃないかな?」
同盟国の先王のいるフネがやられたら同盟軍の名折れ。死ぬ気で守れと活が入るんじゃなかろうか。
「兵隊のやる気、いや、やらねばならない気を向上させる効果は期待していいかもな」
『うーむ……』
「それに、シード・リアクター搭載艦だから、エクスプロージョン弾生成プログラムを送れば、前線でも補給拠点として活用できるぞ」
前線での弾薬補充。動き回る『バルムンク』では艦隊のカバーは難しく、空母『アウローラ』の負担もでかかったから、ここに魔力生成で同盟軍をサポートできるシード・リアクター搭載艦の増援は、艦隊の継続戦闘能力を高める。
「つまり、前線も大助かりだ」
『……そういうことなら、まあ』
前線で戦う兵士のことを気にかける武人肌のジャルジーである。
『わかった。じゃあ、そのように進める』
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