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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1917/1935

第1907話、奮戦するバルムンク艦隊


 俺たちのバルムンク艦隊の参戦は、同盟軍第二艦隊の立て直しの時間を与えた。

 つまり、彼らの消費弾薬の軽減に貢献し、対シェイプシフター用武装を満載した次の交代部隊が来るまでの余裕を稼いだのである。

 その代わり、俺たちが忙しくなってしまったんだがね。


『左舷下方の敵3、揚陸艦隊に近づく!』

「主砲、各個照準にて対応。狙いをつけ次第、発射!」


 俺の指示を受けて、戦艦『バルムンク』下方の主砲3基が、それぞれの標的をロックオン。敵の未来位置に向かって消滅砲を撃ち込んだ。

 地底シェイプシフター艦がバニシング・レイを収束した光によって容易くその艦体を抉られ、貫かれ、そして爆発轟沈した。


『敵22群が艦隊左舷前方より接近。その数4――』


 レーダー士が報告する。戦術モニター上には、模倣したド級戦艦1、クルーザー級が3隻と表示される。


「バルムンク、艦隊左舷前方に移動」

『宜候』

『バックアップは「エスメラルダ」がつきます』


 第二艦隊の手隙のゾーンに侵入しようとする敵に対して、こちらも移動。

 これもモニターで確認すれば、該当ゾーンの第二艦隊艦は戦闘力30パーセントにまで落ち込んでいた。エクスプロージョン弾が底を尽きかけているんだろうね。


 戦艦『バルムンク』そして巡洋艦『エスメラルダ』がその手薄なゾーンへと滑り込む。本当は、全周に対してそれぞれ固定配置したいんだけど、俺の艦隊もそんなに数が多くない。

 いちいち移動して穴埋めをしている。始末が悪いのは、弾薬不足による防衛線の穴は、交戦と共に拡大しつつあるということだ。

 ……その分、こちらも移動しなくてはならない。


 敵は艦艇だけではなかった。


『敵航空機群、接近!』


 新たに発見されたのは10機前後。低空から上陸部隊の方向へと迫っていた。地味に地上戦力を狙ってくるのは、奴らも峡谷の基地を守ろうとしているということなのだろう。


「防衛行動をされると、やはりあそこに何があるか気になってくるんだよな」


 俺がそう口にすれば、ベルさんが乗ってきた。


「大事なお宝でもあるんだろうな。トロフィーは、例のコントロールできる杖か」

「お宝ねぇ」


 それは冗談なのだろうが、地底シェイプシフターを制御できる杖があるなら、この作戦を進める意義はあるってことだ。


「敵航空機群に、エクスプロージョン弾を発射!」


 戦艦『バルムンク』から、爆裂魔法封入ミサイルが発射される。第二艦隊ではすでに在庫切れ寸前だが、シード・リアクター搭載の『バルムンク』なら、使用したそばから魔力生成ができる。

 シェイプシフター戦闘機が反応してミサイルに対して応戦する動きを見せる。しかし超高速で接近するミサイルが直撃するまで数秒もない。爆発、広がる火球は後続のシェイプシフター機を巻き込んで炎の中に飲み込む。

 知ってる。どうせ二、三機は爆発をくぐり抜けて突破するんでしょう?


『敵戦闘機2機、爆発を回避』

「地上部隊に任せる。迎撃を」


 峡谷には橋頭堡と敵基地入り口を守るための部隊が待機している。下で仕事をしているのは基地に踏み込んだ部隊だけではない。退路確保も兼ねた防衛戦を繰り広げる部隊もいるのである。


 さらにヴァルキュリア級機動揚陸巡洋艦も、これらのすぐ上にいて橋頭堡の傘になりつつ、敵機迎撃に主砲や対空砲を向けた。

 プラズマカノンを発砲。敵機はそれをひらりと回避した。その反射速度も凄まじい。対空砲が一斉に火を吹いた。


 細かな、しかし雨のような弾幕が敵機を出迎える。それでもシェイプシフター戦闘機は器用に回避するが、いつまでも避け続けることはできず、一発の被弾でバランスを崩し、そこから連続して食らい、1機、また1機と撃墜した。


「あまり近づかれると、エクスプロージョン弾は使えないからな」


 遠くで起爆させる分にはいいが、近くでやれば味方を巻きこむ恐れが出てくる。誤爆ではないが、巻き添えは避けなくてはならない。


「こちらは空の敵の対応だ」

『閣下』


 シェイプシフター通信士が振り返った。


『シーパング同盟艦隊司令部より入電。増援部隊が出撃、現地到着は10分から15分を予定』

「了解だ。……第二艦隊にも伝わっているよな」


 元々、増援は第二艦隊の次に、峡谷上空で防衛する部隊である。それが間に合いそうにないというので、俺たちが飛び入り参加したわけだが。


 バルムンク艦隊は、第二艦隊の弾不足の穴埋めのために移動しまくる。第二艦隊戦艦や巡洋艦のプラズマカノンはいまだ健在だが、それだと敵艦を撃破するまでに時間がかかってしまう。1隻撃沈しても2隻に防衛線を通過されても困るのだ。


「とはいえ、増援が来てくれないことには、こちらもジリ貧かもしれない」


 新型の消滅砲はエネルギー喰いだからな。『バルムンク』や『アウローラ』はシード・リアクター様々だが、アンバル級のクルーザーは外部支援があってはじめて消滅砲を維持している。だからそれなしで長時間撃ち続ける場合、砲撃頻度が下がってしまうのである。


「当たれば気持ちよく吹っ飛んでくれるんだけどねぇ」


 こびりついた泥を水流で流すが如く。ベルさんがモニターを見た。


「ところで、下もボチボチ忙しくなってきたな」

「もう戦場に乗り込みたいって顔をしてるぜ、ベルさん」


 行くかい? 俺が水を向ければ、我らが魔王様は頷いた。


「ちょっとばかり下で暴れてくるとしよう」


 地上の橋頭堡を守る突撃海兵もぼちぼち戦闘をしている。敵は空中艦や航空機だけではない。飛ばない分、足は遅いが……いや、訂正。ローラーダッシュをしながらシェイプシフター魔人機が、こちらの警戒網の隙間をつくように向かってきている。

 パワードスーツはあるが、魔人機の数が比較的少ない地上部隊には、そちらも増援が必要のようだった。


「じゃあ、ベルさん、そっちは任せたよ」

「おう。空の方が片付いたら、お前も来いよな。敵基地に殴り込もうぜ」


 ベルさんはそう言った。……片付くのかな、空のほうは。

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