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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1916/1935

第1906話、新型兵装


 プラズマカノンが立て続けに光弾をその砲口から吐き出した。戦艦『レゾリューション』の砲撃は、接近する地底シェイプシフターのコルベットを粉砕した。

 タフなシェイプシフターといえど、小型艦艇サイズであれば戦艦のプラズマ弾でも当てさえすればたやすく撃破できる。


「目標変更! 右舷三十度方向の敵突撃級!」


 シラクサ艦長の指示が飛び、主砲が旋回。新たな敵へと指向する。


「敵艦、発砲!」

「衝撃に備えろ!」


 戦艦『レゾリューション』の艦体に被弾し、衝撃が走る。艦を守る防御シールドは、エネルギーを消耗し再使用までのチャージ中。戦艦の装甲だけが、撃沈を避けるための頼りとなる。


「右舷に被弾! 二番副砲に直撃!」

「くそっ!」


 もたらされた凶報に、艦長は悪態をついた。

 揚陸艦群を守る『レゾリューション』の位置で、敵艦迎撃の切り札である副砲を指向できる砲が潰れた。向きを変えない限り、右舷前方の敵にはエクスプロージョン砲弾が使えず、プラズマカノンのみで応戦するしかない。


「主砲、撃ち方始め!」


 プラズマカノンが、新たな敵戦艦へと飛ぶ。大型の艦体に吸い込まれる青い光弾は、その表面を抉ったが、怯まず向かってくる。


「撃沈できないわけではないんだ! 沈むまで撃ちまくれ!」


 シラクサの叱咤が飛ぶ。司令官席の第二艦隊司令長官フレッド・ヴァーゲ中将は険しい表情。

 エクスプロージョン系列弾の枯渇が危険領域に入ってきた。ミサイル系はすでに撃ち尽くし、副砲のほうに多少残っている程度。

 しかしシェイプシフター艦艇も、ただ撃たれるだけではなく反撃してくるようになった結果、同盟軍艦にも被害が続出している。


 戦艦が1隻、巡洋艦3、駆逐艦5隻がすでに戦線離脱をしており、旗艦である『レゾリューション』もまた被弾が重なっている。

 旗艦コアの被害報告では、残存する護衛艦艇は戦艦を含め、七割がシールドを失い被弾、もう十数分の間に、さらなる脱落艦が発生すると計算していた。


「こうも、こちらの消耗が早いとは……!」


 やはりこの第30番渓谷は、地底シェイプシフターにとって重要拠点なのだろう。まだ掃討されていない地から遥々増援を飛ばしてくる。それだけここを守る意味をシェイプシフターたちは持っているのだ。


「通信士! 艦隊司令部からは何か言ってきていないのか?」


 ヴァーゲは確認する。エクスプロージョン砲弾の消費が想定より早いことはすでに伝えていた。このペースでは、地上部隊が峡谷の基地を制圧する前に艦隊は撤退せざるを得なくなると。

 もちろん、そうなったら地上部隊は見捨てることになってしまう。それは許容できないので『増援をよこせ』と言ったわけだが、その返答はいまだない。


「提督」


 別の通信士がコンソールから振り返った。


「同盟軍艦隊の友軍のコールサインで、本艦に通信です」

「友軍? どこだ?」


 随分と妙な言い回しに、ヴァーゲは眉をひそめる。


「バルムンク艦隊です。識別上、同盟軍艦隊ウーラムゴリサ国軍となっていますが――」

「ジン・アミウール閣下のバルムンク艦隊か!」


 今回の作戦には参加予定になかったはずだが、まさか援軍に駆けつけたのか!



    ・   ・   ・



 随分と派手にやっているものだ。

 戦艦『バルムンク』と随伴の巡洋艦群は、ジェット機もかくやの速度で戦場へと急行中だった。

 いきなり転移で行くと、第二艦隊側が敵味方に迷って混乱するかもしれないし、反射的に誤射されても困るからだ。


「第二艦隊側にこちらが間もなく到着すると伝えろ」

『承知しました』


 シェイプシフター通信士が第二艦隊に連絡を入れる間に、シェイプシフター艦艇を捕捉する。新手と感知したか、こちらに反転してきている敵艦もある。

 ベルさんがニヤリとする。


「きやがったな」

「新兵装のお披露目だな。主砲、目標を接近中の敵大型艦に向けろ」


 俺の命令を受けて、シェイプシフター砲術長が『了解』と答える。戦艦『バルムンク』の45.7センチ三連装砲、その艦首第一、第二砲塔が照準をつける。

 外見上はプラズマカノンと変わらない。だが中身は別物だ。


『主砲、発射準備よし』

「撃て!」


 第一、第二主砲の砲口から、真っ白な光が放たれた。光線は、シェイプシフターの突撃級戦艦の艦首に吸い込まれる。

 全長250メートルから300メートルに達する漆黒の艦体を剥がすように蒸発させ、そして貫いた。機関部まで一気に突き抜け、そして誘爆し、突撃級を火の玉に変えた。――よし!


『敵艦、轟沈!』

「さすが新型だ!」


 ベルさんが相好を崩した。


「プラズマカノンじゃ、ああはいかないぜ」

「消滅砲の威力は、まあわかっていた」


 新型兵装――消滅砲(仮)。戦艦級のプラズマカノンにすらある程度耐えるシェイプシフター艦艇の脅威に対抗すべく、一撃のもとに破壊できる新型砲として開発されたものだ。

 ぶっちゃけるとこれ、バニシング・レイなんだよな。効果範囲が広く大量に巻き込める本家を、一点集中型にしただけのシンプルな兵器だ。


 敵が広い範囲にばらけられると、せっかくのバニシング・レイも効率が悪くなるから、威力を確保したまま任意の標的を撃って無駄なエネルギーを消費しないようにしただけである。

 ……それでもプラズマカノンよりエネルギー消費がデカいから、シードリアクターを搭載する型か、そういう艦艇からのエネルギー供給がないと、バカスカ撃てないんだけど。

 まあ、そのための『バルムンク』と『アウローラ』ではある。


「よし、このまま敵を散らすぞ。各艦、砲撃開始!」


 戦艦『バルムンク』に続き、アンバル級巡洋艦群も、プラズマカノン改め消滅砲を撃ち、シェイプシフター艦艇を蹴散らしていった。

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