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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1915/1934

第1905話、準備不足の露呈


 地上に降下した突撃海兵隊は、シェイプシフター拠点の入り口で慎重に交戦を続けていた。

 出入り口で戦闘をしているせいか、後続部隊が渋滞を起こしている。中に踏み込めていない影響である。

 そんなんだから一個大隊が拠点作りをし、もう1個大隊が峡谷の上、左右に展開して陸上から敵が迫ってきた時に戦えるよう陣地作りをしていた。


 こりゃあ長期戦になるな。こうなると、頭上で敵を防ぎ止めている艦隊の継戦能力の問題が出てくる。

 航空機は空母に着艦すれば補給はできる。しかし周りの護衛艦艇は、そうはいかない。

 俺はシーパング同盟軍司令部に連絡を入れる。予備戦力の準備はできていると思うけど、そろそろ――


「え? 準備ができていない?」


 俺は耳を疑った。通信機ごしにグレイ・オクトーベル大将の声が返ってくる。


『はい、敵の大規模増援に備えて、カウンター部隊を予備として用意はしてありましたが、渓谷上空に留まる艦隊の用意が出てきません』


 司令部も、まさか出入り口確保でここまで足止めを食らうとは想定していなかったらしい。エクスプロージョン爆弾を数発ぶち込めば、入り口は確保できるものと考えていた。


『正しく言えば、エクスプロージョン砲弾が不足しており、艦隊はあれど第二艦隊の後を引き継げる艦隊がありません』


 艦艇はあるが、専用の弾がない、とさ。やれやれ、そう来たか。


『現在、増産しているエクスプロージョン砲弾を順次、待機している艦隊に積み込んでいるところです。定数より下回った分しかないため、いつまで渓谷上空を守れるか予断を許さない状況かと』


 思ったよりよろしくない状況だ。


「増産はしているということは、時間を稼げれば、正規に第二艦隊の引き継ぎは可能という解釈でよろしいか?」

『はい、閣下』


 オクトーベルは答えた。しょうがないな……。


「では、うちの部隊を動かして、第二艦隊の支援と引き継ぎ艦隊が来るまで、渓谷上空を守ります」

『よろしいのですか、閣下?』

「さすがに下にいる海兵を見殺しにはできないでしょう」


 上空の艦隊が弾切れで有効な戦いができないので、海兵隊を撤退させる――なんてなったら、同盟軍の沽券に関わる。地底シェイプシフターとの戦いが上手くいっていないとなると、また同盟の政治家や一部の民が騒ぎ出す。


 いわゆる、地底解放までの日数問題。最低二カ月は掃射にかかるという議会答弁が一人歩きして、二カ月で終戦みたいな流れが世間では出来ていたりする。

 そうなると、ここで撤退は同盟軍的にも痛いのだ。


 見通しの甘さ、見積もりを低くみたための予想外の事態。まあ外野は非難材料が出来たとばかりに叩くだろうが、そんなことは目の前の非常時に比べればどうでもいい。今さら非難しようがもう遅いのだ。

 事態は進行中。余計なことに時間と労力を消費し、あまつさえ軍の行動を阻害するようなことは、むしろ利敵行為である。

 なんだっけ。事件は現場で起きているんだ云々。


 閑話休題。

 司令部には、ウーラムゴリサ軍、GEGとして増援を送って参戦すると通知し、通話を切った。

 聞いていてベルさんが席を立った。


「行くんだな?」

「結局、出番がきたわけだ」


 俺なしで何とかしてほしかったんだけどね。これまで何度も思ったことだけど、世の中うまくはできていないものだ。……見方の問題なのかもしれないが。


「それで、今から動員をかけるのか?」

「人を集めていたら、同盟軍の増援とどっこいだ」


 それじゃ間に合わないかもしれない。今こうしている間も第二艦隊は、迫り来る地底シェイプシフターの艦艇と航空機と交戦しているからね。弾薬は消費され続けている。


「俺たちを除いたら、シェイプシフター兵とシップコアに頼ることになるな」


 それが即応部隊ということだ。

 ただ、出撃は即応だが、対地底シェイプシフター用に武装のアップグレードや細かい部分の改修はすでに終えている。

 同盟軍だけに任せられたらよかったが、そうもいかなかった場合の予備としてね……。


 ウーラムゴリサ王の執務は、分身君に任せて、いざ戦場へ。



   ・  ・  ・



 戦艦『バルムンク』に俺たちは移動した。ただちにシップコアが起動され、艦内機構のスリープを解除。シェイプシフター兵たちが持ち場へ移動する。


 艦橋に到着すれば、シップコア『バルムンク』がスレーブサーキットを使って艦隊を稼働状態にした。

 随伴するのは改アンバル級の巡洋艦『アンバル』『グラナテ』『エスメラルダ』『ネフリティス』『アハティス』、空母『アウローラ』『アクアマリナ』、揚陸船『ペガサス』となる。

 ベルさんがこの陣容に突っ込んだ。


「『ペガサス』は戦闘力ないだろう? 使えるのか?」

「補給艦として使う。戦う方は気にしていない」


 それで言えばシードリアクター搭載艦の空母『アウローラ』も近接防御にマギアブラスターを使えるが、必要な弾薬の生産を行い、巡洋艦にエネルギー供給をする役割の比重が大きいと考えている。

 艦載機は積んでいるが、これは同盟軍の航空隊とさほど変わらない。ただアウローラからの弾薬供給で、こちらで生産しているエクスプロージョン系弾薬が補充できるから、割と継続して戦線に留まれる。


 同じくシードリアクターを積んでいる『バルムンク』以外が、戦線に長く留まれるかは、まさにこの『アウローラ』が鍵を握っていると言える。

『バルムンク』の方は、対シェイプシフター用武器を自力補充できるので、こちらは心配していない。


「艦隊、抜錨せよ」

『全艦艇、抜錨』


 戦艦『バルムンク』が飛び上がり、横一列に並んでいた『アンバル』以下巡洋艦群も順次、その後に続く。

 空母、揚陸船も続き、艦隊は揃う。さあ、同盟軍艦隊の支援に出かけよう。


 バルムンク艦隊は一斉に地底世界へ転移した。

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