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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1914/1931

第1904話、入り口の攻防


 同盟軍は、シェイプシフター峡谷を制圧しつつあった。

 艦隊は地底シェイプシフター艦艇と航空機の相手をしているが、その間に降下部隊が突撃海兵連隊を送り込み、崖の裏にある基地らしきものの入り口に向かいつつあった。


「見ていられる分には、楽なんだけどね」


 俺はモニターに移る前線の様子を眺める。場にはベルさんとラスィアがいる。


「ここまでは想定通りってところじゃね?」


 ベルさんは口元を緩める。

 同盟軍爆撃機部隊は戦闘機隊の援護を受けて、第30番峡谷を焼き払った。海兵隊のパワードスーツは無人の荒野を行くが如く、入り口に取り付いたのだった。


「問題はここからだ」


 何せ基地と思われる入り口の向こうがどうなっているか、さっぱりわからないのだから。


「ここから敵が出てきているということは、中も大量にいるんだろうな」

「対策していない機体を投入したくない状況だ」


 シェイプシフターは僅かな隙間であっても入り込む。それでパワードスーツや魔人機なども内部から破壊したり、中のパイロットを殺したりと、普通ではないやり方で仕掛けてくる。


「室内となると、外で使っている大型エクスプロージョン爆弾や魔導放射砲は使えない」


 ある程度威力を落とした攻撃。室内突入前に小型エクスプロージョン爆弾や火炎放射器で焼き払うくらいはできるし、おそらく突入する海兵隊も装備はしている。


「ギッシリ詰まってやがったら侵入前に火を投げ入れたらよく燃えるんだろうぜ」


 ベルさんは冗談めかした。

 突撃海兵は、パワードスーツ『サラマンダーⅡ』を先導させて……と、その前に火炎放射器で中に炎を送り込んだ。


「考えることは同じか」

「丁寧なクリアリングってやつだな」


 基本に充実なのはいいことだ。慎重かつ丁寧に。相手はシェイプシフターなのだから、念入りにやるくらいがちょうどいい。おざなり対応は命取りだ。

 後方から撮影されているこれらの映像は、前線の同盟艦隊はもちろん、地上の司令部や関係各所で見ることができる。俺やベルさんのように、軍の偉いさんも作戦の進捗を見守っているだろう。


「入り口は……魔人機が通れるサイズか」


 レアヴロード系列のヴォルカンがギリで通れる高さのようだ。これにはベルさんが鼻をならす。


「オレ様のブラックナイト・ベルゼビュートじゃ、ちと厳しいな」

「ベルさんのやつ、他よりちょっと大きいからね」


 魔王パワーで強化されたベルさん専用機は、生物らしくマッシブである。横幅は入り口でいけるが、高さはどうなのかな。屈めば入れるはいいが、その先ずっと屈んだ姿勢でなければ進めないというのでは意味がない。


 外の戦いを移すモニターを見れば、同盟軍艦隊は奮戦中。接近するシェイプシフター艦艇に対して有効な立ち回りを演じていた。

 それもこれもエクスプロージョン砲弾による攻撃が成功しているからだ。

 追加装備された副砲が撃ち出すエクスプロージョン砲弾は、射程2万メートル。命中すればたちまち炎によって目標を焼き尽くす。


 火属性耐性がほぼないシェイプシフター艦である。プラズマカノン数発、十数発は耐えて突っ込んできても、旋回俯仰の早い小型の副砲であれば即時、照準、発砲まで持っていけた。

 しかも一発当たればいいんだから、迎撃するほうとしても敵に押し切られる確率はだいぶ低くなるだろう。


 実際、次々に現れるシェイプシフター艦を同盟軍艦隊は払いのけており、今のところ損傷、離脱した艦はない。

 しかし、それもしばらくのことだ。エクスプロージョン砲弾は弾数に限りがあるから、この調子で敵に攻められ続ければ、弾切れになる。


 艦隊だけなら、弾切れ前に離脱も可能だが、地上部隊が敵拠点の制圧に動いている状況だとそうはいかない。

 陸上戦力を残して離脱すれば、下の者たちが孤立し、敵艦艇や航空機の攻撃にさらされることになる。


 地上部隊にはできるだけ早く敵拠点を攻略してほしいが、そう簡単にいかないのが地上戦というやつだ。同盟軍も上空の艦隊の引き継ぎや予備を準備しているだろう。


 俺は地上戦の方へ視線を戻す。

 入り口にいる突撃海兵は、火炎放射器の後、エクスプロージョン手榴弾を放り込んだ。爆発が入り口から飛び出し、それが収まったのを確認してからまずパワードスーツが突入した。

 今の攻撃で室内温度とか空気が凄まじいことになっていそうではある。パワードスーツでなければ海兵隊のほうが大変だったかもしれない。


 前衛に追従するカメラは、入り口から奥の映像を寄越した。中は広々、魔人軍機どころかスーパーロボットでも動ける大きさがあったが、そこには多数の黒い塊――シェイプシフターがいた。


「やっぱ基地内ともなると、外のようにはいかないか」


 燃焼弾装填のマシンガンやエクスプロージョン手榴弾を使って、中の敵を攻撃するサラマンダーⅡ。

 地底シェイプシフターもパワードスーツタイプに変身して機関銃で撃ち返してくる。突入した分隊ではどうしようもないほどの圧倒的な火力差。海兵は素早く後退。より火力のあるエクスプロージョン爆弾をバズーカで撃ち込んで、即時外へと脱出した。


 爆発、内部の地底シェイプシフターを焼き払う強化爆裂魔法の炸裂。それが収まった後、サラマンダーⅡは再び武器を構えて内部へ。

 ベルさんが口を開いた。


「あと何回くらい入り口でこのやりとりを続けるんだろうな?」

「二、三回で終わってくれると先へ進めるんだけどね」


 奥から敵がどんどこ湧いてきたら、入り口周りの制圧までに今の攻撃を繰り返すことになりそうだ。


「そもそも、敵の総戦力が不明だからな」


 どれくらい拠点内に残っているかわからないから、最悪入り口周りで戦っているだけで同盟軍の攻撃が終わってしまうこともありそうだ。


「やはり一筋縄ではいかないな」

「拠点攻撃ってのは、そういうもんだ」


 ベルさんは皮肉げに言った。航空戦などと違い、基地攻防は時間がかかるものなのだ。

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