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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1912/1929

第1902話、エンジェルフォール作戦


 シーパング同盟軍第二艦隊が、地底シェイプシフター拠点と思われる第30番峡谷攻撃に動いた。

 戦艦8、空母8、強襲揚陸艦6、巡洋艦16、駆逐艦22から構成される艦隊は、転移で地底にある30番峡谷へと移動した。


「全艦、戦闘配置」


 第二艦隊司令長官フレッド・ヴァーゲ中将は、艦隊に周辺警戒を命じる。


「第一次攻撃隊、発艦せよ」


 まずは渓谷とその周囲をエクスプロージョン爆弾で吹き飛ばす。


「何もなければ、渓谷の形に沿って戦艦の魔導放射砲を一撃見舞って掃射したいところなのだがな」


 ヴァーゲ中将は司令官席から正面を見据えれば、参謀長のアルメニ少将は口を開いた。


「残念ながら、地形がそれを許しませんな」


 峡谷の奥にある拠点とおぼしき施設。峡谷内の敵に魔導放射砲を使えば、もれなく施設も巻き込んで破壊してしまう恐れがあった。


「故に航空機による爆撃で、渓谷周りの敵を一掃となります」

「わかっている」


 空母群からイールⅢ攻撃機、ファントム戦闘爆撃機が次々に発艦する。搭載されたエクスプロージョン爆弾はロケット化されていて、真上から落とさなくても離れた場所から攻撃することが可能だった。

 また揚陸艦の飛行甲板から直掩のファルケ、ストームダガー戦闘機が浮遊発艦して、爆撃機隊と艦隊防空を担う。


「我々は、地上の施設を制圧せねばならない。その間、艦隊は上空に滞空することになる。おそらく敵は艦艇と航空機を送り込んでくる。そいつらを撃退し、地上部隊を守らねばならぬ」

「第九戦艦戦隊のようなことにはならないと信じたいですな」


 厳粛な面持ちで参謀長は言った。

 敵が集団で来れば魔導放射砲で薙ぎ払うが、奴らもまとまってはくれないだろう。精々一発撃てれば御の字。こちらの魔導放射砲を警戒して、四方から分散して向かってくる。

 弾数が限られる魔導放射砲では効率が悪いとなれば、個々の砲や誘導兵器で応戦するしかない。


「敵シェイプシフターは、航空機はともかく、艦艇クラスだとプラズマカノンでは仕留め難い」


 撃沈できなくはないが、一発で破壊することは難しい。


「追加された副砲は、役に立つんだろうな?」

「技術部の触れ込みでは有効とのことです」


 アルメニは告げた。


「プラズマカノンに比べれば射程は劣りますが、対シェイプシフターに有効な火属性弾頭ですから、データ通りであれば一発撃沈も可能です」

「そうあって欲しいものだな」


 ヴァーゲは口元を緩ませる。参謀長の言ではないが、第九戦艦戦隊と同様の運命を辿るかどうかは、副砲と火力マシマシの対艦誘導弾の働き次第となる。


「こちとら、今までのように敵がきたからと転移で逃げられないからな」


 退却する時は、地上攻略が失敗した時だ。第二艦隊には、それまで峡谷上空での継戦も期待された。

 一応予備戦力はあるが、時間的にかなり粘った上での交代であるのが望ましい。


「峡谷より敵迎撃機とおぼしき反応出現! その数、十から二十――」


 レーダー士官が声を上げ、航空誘導士官がただちに管制下の戦闘機隊に指令を出す。


「ヘルキャッツ、ウォードックス、峡谷より敵機。迎撃せよ」

「――爆撃隊、峡谷へ突入!」


 艦橋内が忙しくなってきた。司令官席のヴァーゲは、無意識に両の手を合わせてこすった。その目は戦術モニターに注がれ、戦況を注視している。


「――遠距離センサーに反応! 複数の敵性艦艇出現!」


 報告と共に、モニター上に敵を示す赤いの光点が現れる。ただちにセンサーが敵影をスキャンし、形状を解析、これまでの記録と照合する。


「北方グループ、突撃戦艦5、同巡洋艦9。南東グループ、突撃級7、ド級擬態型4、巡洋艦13、コルベット20」


 いきなり団体の登場だった。モニターを見やり、アルメニは眉間にしわを寄せた。


「さすが、敵の本拠かと予想された場所だけあって、敵も有力な戦力を出してきますな」

「まったくだ」


 ヴァーゲは真剣な面持ちである。


「『ウィスコンシン』に南東グループに対して魔導放射砲の発砲を指令。それ以外は、各個に迎撃態勢。空母と揚陸艦は守れよ!」


 比較的集団である敵に対してドレッドノートⅢ級戦艦の1隻が艦首を向けた。高速で接近しつつある地底シェイプシフター艦隊。北方グループはすでにバラけつつあったが、南東グループも徐々に分散する機動を取り始めた。


「『ウィスコンシン』、魔導放射砲を発射」


 強烈なる光の波が範囲内にあった地底シェイプシフター艦を飲み込み、蒸発させる。散開しつつあった南東グループの7、8隻が消えた。しかしそれ以外の艦艇は構わず突撃してくる。


「誘導弾、攻撃始め!」


 エクスプロージョン爆弾ほどではないが、当たれば燃える火属性弾頭ミサイルだ。こちらも弾数は限りがあるが、敵の小型艦減らしには最適な武器である。


「主砲、プラズマカノン、射程に入り次第砲撃せよ!」


 命中カ所を蒸発させるが、燃え上がるわけではないのでシェイプシフター相手には効いてはいるが、いまいちなプラズマ弾だが、それでも数を当てれば動力をぶち抜いて破壊できる。

 第二艦隊の戦艦、巡洋艦がそれぞれの主砲で接近するシェイプシフター艦艇へ砲撃を開始する。

 すると、擬態型シェイプシフター艦――ドレッドノート級に似た形状の地底シェイプシフターが、プラズマカノンを撃ってきた。

 敵の砲撃は第二艦隊の間をすり抜ける。当たらなかったが、ヴァーゲは顔をしかめる。


「こちらの武器をよくもまあヌケヌケと……!」


 その間に敵の第二射が通過。今度はきちんと当ててきた敵もいたが、シーパング同盟艦は防御シールドで、その一撃を弾いた。もっとも、シールドで耐えられるのは同盟軍基準と同格ならば数発であろう。砲撃戦を続ければ、いずれは破られる。


「さあて、どこまで耐えられるか……」


 まだ1隻も失われていないが、敵艦隊は目の前のものばかりではないだろう。増援が何波でもやってくるだろう。

 ヴァーゲは航空管制士官に確認する。


「爆撃機隊はどうか?」

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