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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1910/1928

第1900話、被害は増えるよ、どこまでも


「きちんと戦争してるんだな」


 ベルさんは、そう言うのだ。


「きちんと?」


 俺は端末を操作し、モニターに移るレポートに目をやる。今回の地底戦争における戦死者のリストである。

 連日の地底爆撃は、敵シェイプシフターの数を減らしている。だが俺たちシーパング同盟は、地底の地表を全部焼く勢いで爆撃を続けていた。

 だがここ最近は、戦死者の数もちらほらと見えてきているのが気になっていた。


「シェイプシフターは対応している」

「エクスプロージョン爆弾での爆撃は、かなり命懸けになってきたんじゃね?」


 ベルさんは肩をすくめる。


「ありゃ、敵の真上まで飛ばねぇといけない。そして最近じゃ、爆撃地点に行くまでにやられるようになった」

「爆撃のやり方を変えないといけない」


 対策されてきているのに、そのままのやり方なのはよくないな。同盟軍的には、大衆の地底解放の希望に添うよう、地底全土の爆撃を早く済ませたいと考えているようだった。


「情報がオープンな国だと、民衆の声というのも大きいからね。政治がそれに影響されることはよくあることだ」

「そうかい?」


 ベルさんも自分が見ている情報端末の画面をスクロールさせる。


「シーパング同盟に関係する国はそうなんだろうけど、それまで民の声なんて、あってないようなものだったぜ?」

「民の声はずっとあったよ。為政者たちに耳に届いていなかったか、敢えて聞かないようにしていただけさ」


 人間は都合の悪いものは見ない、聞かないが発動するからな。

 それで自己保身と身分差別に走って民をないがしろにするから、反乱起こされて制裁されるんだ。


「だから今も昔も、人間社会は多少便利になったくらいで、本質は何も変わってはいないのさ」


 変わったつもりでいるだけってやつだ。


「ふうん。で、話を戻すと、軍の行動が急ぎがちなのは、大衆の影響だと?」

「早く戦争を終わらせたいのはどこも同じだ。それは事実だ」


 俺はモニターを注視する。


「ただ、今のように情報が早いとね。大衆の声というよりは、はやく地底利権にあやかりたい一部の人が煽動している感じかな」


 大衆の声というよりは、一部の声のデカい奴の意見ってやつ。それも民の一部であるのは違いないんだけど。


「大半の人間にとっては、戦争が早く終わってほしいと思っているが、地底どうこうは気にしちゃいないよ」


 対岸の火事、危機感のなさ。そりゃあ地底なんて行く機会もない人間のほうが圧倒的多数だからな。

 相手がシェイプシフターで、こいつらが地上に出たらどれだけの犠牲がでるか、自分たちの生活どころか命も危ないという感覚がどうしても薄くなってしまうのだ。


「報道では戦争と伝えられているけど、人によっては害獣駆除、大発生しているモンスター討伐の延長くらいと感じている人もいるんじゃないかな?」

「少し前までは軍もそうだったんじゃね?」


 第九戦艦戦隊事件かな? あれで、もう完全に軍の中では地底シェイプシフターを侮る空気がなくなったとは思う。

 俺も参加した第一段作戦も犠牲は出て、艦艇が乗っ取られるところまでいったのが出ていたが、基本は勝ち戦だった。


 だが第九戦艦戦隊事件のほうは完全に負け戦。しかも貴重な航空艦艇技術まで流出した可能性が大だからね。現場指揮官の判断で避けられた損害だったから、現場の空気はもう真剣そのものだ。失敗したら人のせいにできないもん。あれだけ対策して駄目なのは人為的ミスなんだから。


「やっぱり、矢面に立たないと人間は変われないものだな」


 これについては自嘲も含まれているけど。

 この世界に召喚された直前の俺は、社会に疲れて引きこもりの死にかけ。だが尻に火がつけば人は動くもので、あれよあれよで英雄魔術師だもんな。

 アニメや漫画的に、絶体絶命の時に何か特別な能力に目覚めるって描写はよくあるけど、能力とはいかないけど、九死一生を得た人間がその後ガラリと変わることは実際にある話ではある。

 閑話休題。


「世間はまだ軍がどうにかするだろうと無責任でいられるが、前線はそうもいかなくなってきている」

「あの事件よりは被害は出てないぜ?」


 第九戦艦戦隊事件を、あの事件といってやるなよ、と。


「細々としたところでな。現場のミスとは言い切れないレベルで。ベルさんの言うようにシェイプシフターの攻撃が先鋭化している」


 今はまだ被害が少ないからー、で手をこまねいていると、ある日突然、被害が急カーブを描いて伸びていくものなんだ。


「俺の世界のかつての大戦で、敵の通商破壊の被害が戦前の予想より少なかったからと、特に力を入れることなく過ごしていたら、ある時期から急に被害が拡大した……という話がある」

「へえ、何で急に被害が増えたんだ? 相手側が通商破壊に本腰を入れてきたのか?」

「それもあるんだけどね。一番は武器の欠陥が改善されたことじゃないかな」

「何だそりゃ」

「被害が少なかった原因は、使っても相手の船を沈められない欠陥魚雷を使っていたせいでもあったんだ。だけど欠陥はわかれば修正されるものだろう? 対策ではないが、きちんと間違いを正した結果、本来の成果が出るようになった」


 逆に自分のところの被害が少ないのが相手の欠陥があってのことだったのに、それで対策が疎かになってボカチンとやられまくるのがもうね……。後から手を打っても遅かったってやつ。……まあ、日本という国の話なんですけどね。戦争中期から潜水艦にボカスカにやられて、戦後は潜水艦絶対殺すマンになりましたとさ。

 それはそれとして何が言いたいのかと言えば。


「被害が出始めているってのは、正直対応としては遅い方なんだ。さっさと対策しないといけない」

「そうだなぁ」


 ベルさんは同意した。

 まあ、正直、こういう状況での『対策』って言葉は、個人的にはあまり好きではない。もうすでに後手に回っているみたいでさ。

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