第1899話、P111の戦い
シーパグ同盟軍の地底掃討作戦は進行している。
だが地底シェイプシフター軍も黙ってはいない。
敵も日々、どこかで経験を重ねているのか、迎撃に出てくる迎撃機や艦艇の形が洗練されつつあった。
航空機の形が、ブーメランのような全翼スタイルからダーツのような、如何にも速そうなシルエットに変わった。
同盟軍のストームダガー軽量戦闘機をさらに細身にしたような、翼のついた剣のような航空機。パイロットなんて乗らないからと胴体を細く絞り、空気抵抗を抑えたシルエットは確かに速かった。
こっそり計測したら、通常エンジン型では最速のファルケ無人型戦闘機に匹敵した。……レイヴン偵察戦闘機の魔力ブーストには敵わないんだけどね。
この頃になると空中戦が展開されていた。それというのも、爆撃機がエクスプロージョン爆弾を投下しようとしているところに、地底シェイプシフター機が向かってきたからだ。
艦艇の魔導放射砲で一掃するのと違い、エクスプロージョン爆弾は射程が短い。着弾した際の効果範囲は広いが、特にロケットがついているわけでもない。
つまり、無誘導爆弾であるのだ。航空機が運べる大きさと威力、それらを勘案した結果、威力を優先、射程についてはオミットされた。
そんなわけで、敵機がきたからといって、おいそれと逃げては何のために出撃したかわからなくなる。
だからエクスプロージョン爆弾を目標地点に投下するまで護衛の戦闘機がついて、爆撃機が仕事を終えるまで守ることになったのである。
・ ・ ・
『ファントム33、ボギー。そちらに向かう――』
通信機から聞こえるは空中管制機のオペレーターの声。ファントム33――爆撃機中隊のリーダーは口を開いた。
『ファントム33よりエンジェルアイ、了解。敵さんの登場か?』
地底で確認できる未確認機なんて、十中八九敵だろうに。
『こちらエンジェルアイ、ファントム33、ボギーはバンディッド。荷物の宅配を終えろ、急げ』
『了解』
不明機から『敵』認定。ファントム33は首を横に振る。――知ってた。
『ファントム・リーダーより各機。クルーズから、戦闘速度へ』
部下たちの返事を聞く一方、空中管制機からの声は続く。
『シャドウ・スコードロン、バンディッドを迎撃せよ』
『了解、エンジェルアイ』
無機的な声が入った。
爆撃機中隊を護衛する戦闘機隊――シャドウ中隊が、エスコート位置から迎撃位置へと移動する。
機体は古めかしい矢尻型の戦闘機ファルケ――その無人機型だ。敵機と交戦するに辺り、人命を失わないように、交戦係を仰せつかっている。
しかも敵に部品が鹵獲されても、今やほとんど影響しない旧式機ときている。もちろん捕獲されそうになった場合、重要部位は自爆で吹き飛ぶようになっている。
『敵はダーツが9機』
最近の地底シェイプシフター軍の主力戦闘機ともいうべき細身の戦闘機が向かってくる。特に敵が名乗っているわけではないので、ダーツという呼び名も同盟軍がつけたコードネームである。
ファルケ戦闘機も負けじと加速。正面から相対すると見せかけ、投射武器による攻撃で先制する。
誘導されたミサイル兵器はダーツに迫る。だが敵機もまた搭載された二十ミリ機関砲やビーム兵器――いずれも同盟軍の鹵獲品のコピー――を連射して、ミサイルを阻む。
そしてダーツの名の通り、近くのファルケ戦闘機に体当たり同然の肉薄攻撃を仕掛けてくる。
常人であれば、声を上げる間もなくすれ違うようなスピードを見て回避などできないだろう。だが無人型ファルケは、紙一重のところを回避した。
驚異的な反射速度で衝突を避けたファルケは、機体が軋みを上げるほどの急旋回をすると、同じく旋回するダーツに対して、ミサイルの二発目を発射する。
ダーツは高速の反面、旋回性能はさほどよくない。高速一転張りの迎撃機として、潔いほどの直進速度を優先しているためだ。
パッとダーツの後ろ半分が吹き飛んだ。空対空ミサイルが突っ込んで爆発したのだ。
先端部分が煙を引きながら落下していく。ファルケ戦闘機は落ちていく敵機の機首にダイブして接近、プラズマカノンを撃ち込んでトドメを刺す。
そこへ別のダーツがさらに上から垂直落下してきて、ファルケ戦闘機に突き刺さった。機体を貫通、墜落する中、取り込もうとする地底シェイプシフターだが、直後ファルケは自爆した。飛散、燃えながら散っていく地底シェイプシフター。
戦闘機同士がぶつかる中、ファントム爆撃隊は予定ポイントに到着。エクスプロージョン爆弾を投下した。
『よし、離脱するぞ』
『隊長、下方よりダーツが!?』
『何っ!?』
爆撃地――何もない荒野と思いきや、そこには地底シェイプシフターがいて、爆撃に対するカウンターとして、地面から迎撃機が生えたかと思うと、ミサイルのように垂直に飛び上がってきたのだ。
『緊急退避! 急げ!』
ファントム・リーダーは、瞬時に転移離脱ボタンを押した。ミサイルを撃たれたら、即回避運動。それがシェイプシフターならさっさと逃げろ――その刷り込みにも似た反射が、彼を間一髪救った。
だが運のいい者ばかりではないのが世の中だ。
転移で集結ポイントに移動した時、周りを見渡したファントム・リーダーは、部隊の爆撃機が半分に減っていることに気づき、愕然とする。
『あんな一瞬で、部隊が半壊だと……! クソッタレ!』
地底シェイプシフターは、同盟軍のやり方を学習している。目標となる地形にシェイプシフターがいようがいまいが関係なくエクスプロージョン爆弾で焼き払う。
そのまま隠れていてもやられるならば、死なば諸共。迎撃機に変身して爆撃機へと自ら突っ込んできたのだ。
訓練で育てあげたパイロットたちが、たった数秒の間に半分が死んだ。無人戦闘機と違って、こちらは生身なんだぞ――いくら嘆こうとも、彼らは帰ってこない。
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