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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1893/1925

第1883話、敵性シェイプシフターを掃討せよ


 アンバルⅡ級軽巡洋艦『ルーダル』。その艦橋。艦長のカッテン中佐は戦術モニターから視線を外し、オペレーターに声をかけた。


「クルーの検査の進捗は?」

「現在9班が実施中。もうあと半分といったところですね」


 検査が終わったクルーは順次、艦内巡検にかかっており、面倒な確認作業はしばらく続きそうである。

 艦橋のクルーがぼやく。


「戻る前にチェックしたばかりというのに、またチェックですか。いくらアミウール将軍の命令とはいえ、用心が過ぎますよ」

「それだけシェイプシフターというのは厄介ということなのだろう」


 カッテン艦長は腕を組んで言った。


「念には念を入れる、というやつだ」

「しかし、転移で移動したんですよ? 敵の反応なしで移動してまた調べるなんて、さすがに間隔が短い過ぎますよ」


 その時、艦橋のエレベーターが開いた。立っていた警備兵が振り返った瞬間、エレベーターからクルーが三人入ってきて、銃らしきものを撃った。


「うっ!?」


 警備兵がドサリと倒れ、艦橋のクルーらが何事かと振り返った時、入ってきた者たちはそれぞれ発砲。カッテンが撃たれ、艦橋要員たちも次々に射殺された。

 入ってきた巡洋艦乗組員は、それぞれキャプテンシート、オペレーター席へ移動する。

 が、彼らが座る前に緊急事態を告げる警報が鳴り響いた。

 艦橋要員の死亡を確認したアンバル型シップコアが、艦の機能をコア制御に切り替えたのだった。



   ・  ・  ・



 戦艦『バルムンク』の艦橋にいて、俺とベルさんが様子を眺めていたら、恐れていた事態が発生した。

 チーフオペレーター席についたラスィアが早速報告する。


「戦艦『シェルシェール』、空母『クラニオ』、巡洋艦『ダンテ』『ルーダル』にて、艦の乗っ取りが発生。シップコアが艦内機構を封鎖しました!」

「……まったく」


 ベルさんはため息をついた。


「あれだけ警戒してこれかよ」

「うちの艦艇(ふね)が、シップコア搭載でよかったな」


 俺はバルムンク・コアを見やる。機械文明時代に、人数不足を補う形で無人艦構想があって、そこで作られたのが艦艇制御システムであるシップコア。

 俺たちウィリディス勢が初期の再生艦艇を運用するにあたって、シェイプシフター兵が艦の操作を習得するまではシップコアに大いに運用を助けてくれた。


 以後も乗員のサポートに活躍し続け、現役ではあるがそのプロトコルには、こうした敵性存在による乗っ取りに対する防御も組み込まれていた。……二重の安全装置って大事だよな。


「あいつら、艦を乗っ取ってどうするつもりだった?」

「まあ、乗っ取っていない艦を攻撃して、地上を襲うつもりじゃないのかな」


 俺は適当に言ったけど、それ以外には考えられないんだよな。


「艦艇から離脱する物体がないかも各艦チェックしろ」


 乗っ取りができずに艦から外へ、と考える地底シェイプシフターもいるかもしれない。地上でも何でも紛れ込んでしまえば、そのうち無視できない規模に膨れ上がる可能性だってあるのだ。


「バルムンク、従属回路(スレーブ・サーキット)で、ロックされた艦を集めろ。制圧部隊を送り込み、潜伏していた敵性シェイプシフターを討伐させる」

『了解』


 バルムンク・コアが、操艦系と外部アクセスハッチを閉鎖した艦を遠隔で操作する。艦隊の一斉運動に活用されるスレーブ・サーキットは、旗艦コアの制御のもと、隊形の形成や一斉に回頭ほか複雑な機動をもこなす。


「しかし、1隻ならともかく、4隻も乗っ取られるとはなぁ」


 ベルさんがぼやけば、ラスィアが振り返った。


「用心に用心を重ねてこれですからね」

「きちんと言いつけを守ってのこれか、それとも油断があって見過ごしたのか」

「後者だったら注意すれば、で次からは何とかなりますけど、前者だったら抜本的に見直しが必要ですよね」


 注意に問題がなかった――というなら、対策に抜けがあったってことだからな。しかし乗員の注意力不足、油断、慢心というのなら、それはそれで問題だ。

 言葉の受け取り方は、良くも悪くも人それぞれ。中には慢心したり注意を疎かにしてしまう者もいる。そしてそれは大半の人間にあることで、こうしたヒューマン・エラーは気をつけていても発生してしまうものなのだ。


 シェイプシフターオペレーターが振り返る。


『空母『天鳳』から通信。艦より離脱する物体を確認! おそらく敵性シェイプシフターとのこと』


 あー、とベルさんが声を上げた。


「やっぱり、まだいたか」

「ダミー世界を作って正解だったな」


 昨日つくったストレージを参考にした異空間。地上――ウーラムゴリサっぽく建物や地形をディーシーとシードリアクターの魔力でこしらえたのが、いま俺たちがいる場所だ。

 馬鹿正直に地上に転移していたら、本当危なかったよな。


「逃げた敵を追跡、これを排除しろ。いくら異空間で逃げられないとはいえ、残しておいていいものじゃないからな」



   ・  ・  ・



 封鎖された艦に閉じ込められた敵性シェイプシフターは、俺たちが送り込んだ陸戦隊によって制圧された。

 それらが済むまで、その艦のクルーたちもそれぞれいた区画で閉じ込められていたが、一部のクルーが敵に艦が占領されたと誤解して、手動で封鎖を破り、面倒なことになったりした。


 ぶっちゃけると、陸戦隊が掃討するまで、敵性シェイプシフターはエアダクトや些細な隙間に入り込み、逃げ回った。それが掃討までの時間がかかり、乗員たちに脱出騒動を起こさせた一因であったりする。


 ひとまず艦隊に潜入した敵はすべて片付けたが、今後さらなる対策を講じる必要になったのは……まあ、仕方ないね。

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