第1882話、ひと段落ついたので、一旦、帰還
警備兵がライトニングバレットを発砲。さらにファイアロッドで炎を噴き出す。倒したテーブルの影に隠れることでアルメック――シェイプシフターは、炎を躱すと、低い姿勢で移動し、どこから取り出した拳銃型の武器を発砲。警備兵の一人を撃ち倒した。
そのままテーブルとテーブルの間を駆け抜けようとするシェイプシフター。だが別の警備兵が先回りするとファイアロッドを使い、敵を焼却した。
「少佐!?」
「かすり傷だ」
地底シェイプシフターの使った銃弾がラーバントン少佐の肩をわずかに抉ったのだ。軍服の破れからわずかに血が滲む。
警備兵がファイアロッドで、さらに追い打ちをかけて地底シェイプシフターを焼き尽くす。動かなくなっても一欠片も残さない勢いだ。
事実、一欠片も残してはいけない。そこからシェイプシフターは生き延び、他者を取り込むことで、元のサイズに戻ったり増殖したりするのだから。
イーリメ大尉は倒れたテーブルを起こしつつ自身も立ち上がる。敵が発砲した時、とっさに近くの遮蔽に向かって飛んだせいだ。
「本当にシェイプシフターがすり替わっていたとは。……くそ!」
昨日、初陣を潜り抜けたパイロットの一人がシェイプシフターによって殺されたのだ。実戦の経験のあるパイロットは貴重だし、今後の成長も見込める。生きていれば、いずれはエースになれた可能性だってあったのだ。
それがこんなことで終わりを迎えていたとは、パイロットとして無念としか言いようがない。
警備兵たちが、シェイプシフターが残した欠片がないかテーブルや椅子の裏なども念入りに確認する。
その間、ラーバントンは携帯通信端末のスイッチを入れた。
「ラーバントンです。艦長、パイロットの一人がシェイプシフターと入れ替わっていました。……はい、他の乗組員も全員確認の必要があります」
すでに封鎖して半日。この間に、シェイプシフターにやられたのはアルメックだけとは限らない。
地底シェイプシフターを敵にするということもあって、上層部が口うるさく言っていたことが、いざ現実になるとなるほどとラーバントンは思った。
昨日までの顔見知りが、別人になってしかも敵になっているという恐怖。警戒してもしたりない。用心深さが必要になるが、こうなると気が休まる時がなくなる。
まだ地底シェイプシフターとの戦いは始まったばかりというのに……。
艦長から言われて『いないだろう』と思って探したら、さっそくヒットするのだから始末が悪い。もし真面目に探していなかったら、何人敵にやられていただろうか。……これでは先が思いやられる。
その後の艦内調査で、乗組員全員が人間であることが確認された。しかし、まだ艦内のどこかに潜んでいるのではないか――疑心暗鬼になる者が相次ぐのだった。
・ ・ ・
討伐艦隊内に、地底シェイプシフターが潜入していた。
予想はしていたとしても、実際にそうなったというのはショックだった。俺は地上に戻る前の対策を組み立てていたが、それを使う前からスパイよろしく潜入されていたのだから始末が悪い。
「あれだけ気をつけてと言ってこれだからな」
「言わなきゃ発覚してなかったこともあるだろうから、まあいいんじゃね?」
ベルさんが真面目ぶる。
「指示出ししてなかったら、今頃いくつかフネが乗っ取られていたか、爆破されていたんだろうぜ」
「シェイプシフターには、それができてしまうからな」
「忘れるなよ、ジン。オレらはそのシェイプシフターを使って、大帝国や吸血鬼、異星人の機械に勝ったんだぜ」
忘れてはいないさ。むしろわかっているから、対策しているんでしょうが。
「切り札は使われないほうがいいんだ」
俺は戦艦『バルムンク』へ戻って、さっそく討伐艦隊に地上への転移を行うことを通達した。
所属艦艇の5隻で、敵性シェイプシフターの潜入が発覚。一応、発見された敵はすべて排除されたと報告されたが……。……いるんだろうなぁ、発覚していないやつがまだ。
「全艦艇へ、地上へ転移する。転移後、念のため艦内、備品、クルーの最終確認作業を実施。我らの故郷に地底の敵を持ち帰るわけにもいかない。侵入の危険性のない場所での最後の土落としと思ってくれ」
討伐艦隊は、『バルムンク』の艦隊転移で移動。……さてさて、討伐艦隊がいなくなった後、隠れている連中が動き出すかな?
監視ポッドはばらまいたが、どうなることやら。あっさり敵の姿を捉えるか、はたまたポッドが喰われて、その行為自体で敵の存在を証明するか。どちらに転んでも敵の有無はわかるという寸法だ。
『戦艦戦隊、転移配置につきました』
『空母戦隊、待機中』
各戦隊ごとに転移配置についたと報告がくる。それでは、転移しましょうか。……ただし、地上ではないがね。
「転移!」
転移ボタンを押し込み、シードリアクターの魔力により転移魔法が、艦隊全ての艦に発動する。
転移終了! 瞬間移動だからまばたきの間に、艦の外の景色が様変わりする。
ようこそ、我がウーラムゴリサ王国の王都近くの荒野へ!
「よく似てるな」
ベルさんは言った。
「瓜二つじゃないか?」
「傑作だろう? ディーシー先生を褒めてやってくれよ」
俺はキャプテンシートの通信端末を叩いた。
「全艦へ。敵性シェイプシフターがついていないか最終確認を実行せよ」
これで敵がいなけりゃ、最高。もしいたら、仕掛けた甲斐があったということだ。後者は勘弁してほしいところだがね。
通信機を艦内に切り替え、こちらも敵性シェイプシフターが潜入していないか確認を指示。地上に出たと聞いて、敵さんも何らかの反応を示す――つまり、動き出すだろうからね。
連絡を終えて、俺は戦術モニターを注視する。ベルさんも隣で同様だ。
「さて、動くかな?」
「動いてほしくない気持ちと動いてほしい気持ちが半々だ」
あーあー、嫌な感じだ。本当に。
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