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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1891/1926

第1881話、潜入者を探せ


 空母『天鳳』での、地底シェイプシフターの潜入は、ただちに各艦艇にも共有された。

 実際に敵が侵入していた。


 ただちに艦内に警報が発せられ、かならず行動は複数人で行動をと徹底された。

 ディフェンス・シールドを張り、外部からの侵入を阻止する。阻止できる――そんな気分になっていた同盟軍兵士にとっては、ますますピリピリした警戒配置となった。

 改タブシャ級空母『ファンタスマ』。飛行隊長のエリック・ラーバントン少佐は、昨日の出撃で飛んだ戦闘機中隊長のイーリメ大尉を呼んだ。


「はい? 様子のおかしな奴ですか?」


 イーリメは怪訝な顔になる。


「まさか、うちの隊のパイロット連中を疑っているんですか?」

「『天鳳』で、地底シェイプシフターが発見されただろう?」


 ラーバントン少佐は淡々と告げた。


「機体に取り付いていたヤツがいたのだ。他の空母、他のフネにもあり得る」

「ですが、昨日、格納庫に降りた後、私を含めてパイロット全員シェイプシフターのすり替わりじゃないと確認したじゃないですか!」


 戦闘で疲れて帰ってきたパイロットに、検査機を当てて人間かシェイプシフターかを判定したのだ。結果、全員白――人間だと確認された。


「シェイプシフターは何にでも化ける」


 少佐は辛抱強く言った。疑えば、中隊長をはじめパイロットたちから反発されることがわかっていたからだ。


「検査機は人間なのかシェイプシフターなのかを判定はしたが、パイロットスーツやその他装備品までは確認していなかっだろう?」

「それはまあ……。パイロットが気づかないうちに身につけているスーツを着替えるなんてあり得ませんからね」


 イーリメは皮肉る。


「で、調べるんですか?」

「装備品の数が合っているか確認しているところだ。だが何も潜り込んだシェイプシフターがそのままということもないだろう。隙を見て、誰かを喰らい成り済ましている可能性もある」

「……それで、様子のおかしな奴がいないか聞いてきたんですね」


 腕を組んで警戒しつつも、イーリメは納得した。シェイプシフターが成りすました直後、喰らった相手の記憶をどこまで吸い上げるかは実のところよくわかっていない。

 要するに、記憶取得は時と場合により、差があるということだ。これはシェイプシフター諜報部が前の大戦で活動していた頃から報告されていたことであり、地底シェイプシフターがどの程度の情報取得ができるか不明ではあるため、あくまで参考ということにはなっている。


「そういえば、アルメックが昨日から口数が少ないって話を聞いたような」

「アルメック」

「戦後入隊のパイロットです。まあ、前回が初陣だったので、現実を思い知らされたってところだと思ったんですが……」


 初陣を生き延びたパイロットによくあることである。戦う前は自信に満ちあふれ、威勢のいいことを吐き散らかす。なんてことはない。緊張の裏返しだ。

 が、生死の境を潜り抜けた新人は、戦場の恐怖を体験し、急に大人しくなるのだ。戦場で受けるストレスは凄まじい。 


「もしかしたら、それ以外の原因があるかもしれない」


 ラーバントンはチラと時計を見た。


「アルメックは?」

「休憩しているはずなので、自室かパイロット待機室のどちらかでしょう」


 ラーバントンとイーリメ、そして武装した警備兵が四人。新人パイロットのもとへと艦内を移動する。


「物々しいですね」

「相手が相手だからな」


 真顔のラーバントンである。イーリメは小さく肩をすくめた。


「できれば、新人特有のアレであることを祈りたいですよ」


 そうでなければ、つまりアルメックがシェイプシフターが化けているものになっていたら、元の新人はすでに殺されているということになるからだ。

 パイロット待機室には、他にもパイロットたちがいた。テーブルを挟み、談笑している者もいれば、カードゲームに興じている者もいる。皆、待機はしているものの、休憩と同義でそれぞれの時間を潰していた。


「少佐」


 イーリメは待機室の端を顎で指した。(くだん)の新人アルメックは一人で部屋の角にいて、同僚たちの様子を眺めている。

 これを見たラーバントンは、直感的にシェイプシフターが、人間を観察している動きのように感じた。


「大尉、こいつらを外に出せ」

「了解です。野郎ども、そのケツをあげて表に出ろ。ほら集合だ、とっとと格納庫へ行け」

「何です?」

「装備はいりますか?」


 パイロットが、ある者は迷惑そうに、またある者は真顔で尋ねる。イーリメは適当な調子で言う。


「艦長のありがたいご挨拶だよ。装備はいらないから、そのまま行け! ほら、急ぐんだよ!」


 なんだよ――

 勝ってたのに――

 文句を言いながら動き出すパイロットたち。イーリメは「急げ急げ」と囃し立てる。

 そんな中、ラーバントンと警備兵たちはパイロットたちの間を抜ける。待機室の端にいたアルメックの動きは当然、周りより遅い。


「アルメック軍曹! おい、貴様、こっちに来い!」


 少佐は怒鳴る。アルメックは左右をキョロキョロと見渡した後、ワンテンポ遅れて、ラーバントンらの前に立った。


「気をつけはどうした軍曹!」


 一喝するラーバントン。もうすでに目の前のパイロットが怪しくてたまらない。警備兵に検査機を使うように合図する。


「!?」


 その瞬間、アルメックが横へ動いた。待機室の丸テーブルを倒して――


「逃がすな! 撃て!」


 ラーバントンは躊躇がなかった。検査機を見て、普通のパイロットが逃げ出すわけがない。こいつはシェイプシフターだ。仲間の皮を被った偽物だ。

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