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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1889/1927

第1879話、順調に進行中


 シーパング同盟軍討伐艦隊、旗艦『バルムンク』。俺は敵が制圧する拠点への攻撃に向かった各小隊の報告に目を通していた。


「……敵の反撃は航空機によるもののみ。それ以外は現状、確認できず」


 航空機自体は俺たちは戦っていて、ミサイル兵器を使うというのは情報共有されていたわけだけど。


「レポートを見る限り、特に前回から変わっているところはなさそうだ」

「何だか不満そうじゃないか、ジン」


 ベルさんがからかうように言った。不満? いいや――


「拍子抜けしているだけさ。俺たちと戦って、進化しているんじゃないかって気になっていたからね」

「前回の戦いの記憶を連中が持ち帰っていれば、その分賢くなっているはずだからなぁ」


 しかしベルさんは首をひねる。


「案外、情報共有されてねえかもしれねえな」

「報連相が上手くいっていないのかな?」


 というのは冗談として。


「一目見て劇的に変わることもあれば、変わらないこともある]


 シェイプシフターは変化までの時間が非常に短い。物理的な変身スピードのことではなく、考え方というか要は成長スピードだ。ただ外見を変えるだけでなく、その変身したものそのものになろうとする。つまりは言語や考え方、癖などの外見には現れない部分でもだ。

 彼らがセカンドベースの同盟軍を攻撃した時、ワスプヘリの模倣だけでなく、パワードスーツに似た姿や銃器を扱いこなしているのも、真似るだけではないシェイプシフターならではのスキルが現れている。

 ……見えない部分、か。


 地底シェイプシフターは、過去の地底人の記憶を取り込んだだけではない。ライオネル博士とその研究チームに地上での勢力や状況の知識を得て、交戦した同盟軍兵士から、シーパング兵器と戦い方をも手に入れた。


「そう考えると……俺たちは表面しか見ていない可能性もあるな」

「あ? 何のことだ?」


 ベルさんが首をかしげ、報告書の整理をしていたラスィアと顔を見合わせた。


「つまりだ。俺たちは地底シェイプシフターに騙されているんじゃないか、ということだよ」

「詳しく」

「シーパング同盟軍の戦い方を知っているはずのシェイプシフターにしては、航空機の性能も使い方もいまいちだ。その上、前回とまるで進化している様子もない。これはもしかして、わざとやられているんじゃないか?」

「地底シェイプシフターがか?」

「どうしてです?」


 ラスィアも聞いてきた。


「わざとやられる理由は?」

「情報収集だろうな」


 地底シェイプシフターが取り込んだ同盟軍は、陸軍戦力主体で航空機や艦艇に関しては、そういうものがあるという知識は得たが、実際の能力については、ある程度の推測しかできていない、もしくは未知の存在となっているのかもしれない。

 だから、俺たちがそれを実際に使うことで、どういうものか見て学習しようとしているのではないか?


「ファーストベースやセカンドベース、円盤都市を取り込んで数を増やそうとして見せたのも、どうにも胡散臭い。いかにも攻撃してくださいって言っているような気がしないか?」

「考え過ぎでは……?」


 ラスィアは半信半疑だったが、ベルさんは違った。


「あと侵食されて残っている円盤都市は二つだったか?」

「ええ、そうです」


 ラスィアは頷いた。


「現在、各軍は残りの二箇所へ集結中です。もっとも先着した小隊から攻撃して、終わらせてしまうかもしれませんが」

「もし、わざとやられているとすれば、どういう理由が考えられる?」


 ベルさんが言ったので、俺は考えを口に出した。


「地底シェイプシフターが殲滅されたと確認されたら、地上と地底を遮るゲートが開放される。ゲートが開いたら隠していた戦力を地上へ一気に進出させる」

「!?」


 現在、地上へ出られない地底シェイプシフターが、地上進出するためにゲートの封鎖を解除させるために芝居を打っているという説。


「あと、情報収集で思い出したが、戦闘のどさくさに紛れて、こちらの艦艇に潜入しようとしているとしているかもしれない……いや潜入して艦艇やそこにいる軍人を取り込んで知識を得ようとしているな。ラスィア、全艦艇に改めて警告。地底シェイプシフターが航空機や艦艇内に侵入する可能性大。厳重警戒せよ」

「はっ、はい!」


 ラスィアが専用端末まで走る。それを見送り、ベルさんは俺へ視線を戻した。


「相手がシェイプシフターじゃ、艦への侵入は防げねえんじゃねえか?」

「シールドを展開していれば簡単には入れないが……。航空機にくっついて入り込んでくるパターンは防げないか。だがそれでも、何も知らないよりは心構えができる方がいい」


 本当は敵対しないのが一番だが、地底に居座り、攻撃の機会を窺っている敵を放置するわけにもいかない。

 それに地上の人間たちも、いつまでも地底封鎖しているとウーラムゴリサ王国が地底文明の技術を独占しようとしている、とかあらぬ疑いをかけてくるかもしれない。

 地底を我々にも解放せよ! ……それで地底シェイプシフターが大挙地上に進出したら誰が責任を取るというのか? 取らないんだぜ? 一方的に他者を非難し、利益にあずかろうとしている連中は。


「お前さんの話からすると、だ」


 ベルさんは真顔になる。


「円盤都市の敵を殲滅するまで、奴らは適当に戦っているふりをしている。むしろ、円盤都市の敵を叩いてからが奴らにとっての本番ということだな?」

「こちらがゲートを開放した時か、最短は現在攻撃中の目標が全て破壊された直後、かな」


 順調に見えているときが危ないというのは、よく言ったものだ。油断するつもりはなくても、終わったと気が緩んだ時はあるからな。


「これで何もなかったら笑えるぜ」


 ベルさんは皮肉る。俺も同感だよ。


「何もないなら、それに越したことはないさ。考えすぎで笑われるほうが、実害はないからな」


 だが油断の末に大きな被害を受けたら、洒落にならないからね。

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