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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1885/1936

第1875話、地底人が滅びた理由


 地底から地上への出入り口、そのゲートの封鎖一つというのは実に不安――という意見があったので、複数の隔壁を設けた。

 万が一破られることがあった場合の時間稼ぎができるように備える。


 同盟軍に対して、俺とベルさんがまとめた対シェイプシフター戦術の確認と、それに合わせた派遣戦力の検討が行われた。

 近接戦は控え、範囲攻撃兵器で一掃という案に沿った戦力を選ぶのである。

 地底シェイプシフター攻撃軍の編成が進められる中、例の施設から回収した資料の解析作業が進められていた。


「――研究者の日誌記録が解読できましたのでお持ちしました」


 専門家チームに参加していたダスカ氏が俺たちのところにやってきた。


「地底人が滅びた原因は、どうやらこのシェイプシフター軍にあるようです」

「……」


 そんな気がしていた、というのはあるが、実際にそれを突きつけられると何とも言えない気分だ。

 ベルさんは驚きもせず口を開いた。


「まあ、あれだけ人類に対して攻撃的だとな」


 識別しているのか、というのが疑わしくなるほど早い攻撃だったもんな。


「奴らにしたら、オレらへの攻撃は地底人との戦いの延長をしているだけかもしれんな」

「容姿は微妙に地底人と地上の人類では違うはずなんだけどな」


 ちょっと小柄で肌の色も違うはず。そんな疑問を口にすれば、ダスカ氏は言った。


「例の魔術師が、地底人が地上侵攻のためにシェイプシフターを作ったのではないかと危惧していましたからね」


 彼の残した日記にそう書いてあった。


「それが彼の不安ではなく、事実だったなら、シェイプシフターたちが地上の人間も敵と認識して攻撃してきてもおかしくはありません」

「同盟軍相手にはほぼノータイムで仕掛けてきていたしな」


 ベルさんも同意する。


「で、地底人が滅びた原因が、シェイプシフターだっていう証拠がでてきたわけだな?」

「はい。記録によれば、シェイプシフターを制御する杖が暴走し、地底人に攻撃を開始。地底人とシェイプシフター軍による戦争が始まったようです」

「制御する杖――」


 ベルさんが俺を見た。古の魔術師が残した姿形の杖、それと似たものがあって、それで地底シェイプシフター軍は制御されていたということだ。


「暴走とは……。それは間違いない?」


 俺が確認するとダスカ氏は、翻訳とメモが入った資料のコピーの一枚を差し出した。


「シェイプシフターの解析記録。つまり、このシェイプシフターの開発された時期からかなりの年月が経っていまして、どうやらその情報は地底人たちも忘れてしまっていたようです。そこでここに謎の遺跡を発見し、調査した――」

「忘れたぁ?」


 ベルさんが眉を動かした。


「あんだけのものを作っていて、忘れ去られていたとか?」

「俺らが、古の魔術師の遺跡で姿形の杖を手に入れたのと同じようなものじゃないか?」


 姿形の杖とシェイプシフターたちのことは、俺たちがヴェリラルド王国王都地下遺跡で見つけるまで、地上の誰もしらなかったし。


「あまりに危険だということで封印されていたのかもしれませんね。この日誌記録をつけた者の視点だと、この遺跡の調査によってシェイプシフターを制御する杖を発見し、それが何なのか調べたとあります」


 ダスカ氏は言うが、それはつまり。


「その解析中に、押してはいけないもんを押して暴走しちまったってオチか?」


 ベルさんが皮肉げな顔になった。……そうなるのかなぁ。


「ともあれ、それで暴走したシェイプシフターは数を増やし、地底人世界に攻撃をしてきた……。細部は分かりませんが、残された日誌記録によれば、シェイプシフター軍はその能力を遺憾なく発揮し、地底を征服していったとあります」

「開けてはいけない箱を開けてしまったんだな」


 冒険者をやっていた俺としては複雑な心境だ。俺は姿形の杖を手に入れたけど、変なことをしなかったから暴走しなかった。……これを作った古の魔術師がいい仕事をしたんだろう。

 対して、地底人たちは見つけてビックリな杖を調べて、我が身を滅ぼした。


 いや、古代の地底人が残した杖が不完全だった可能性もあるな。そもそも忘れ去られたという時点で、使いこなせないとみて破棄されたのではないか?

 古の魔術師は古代地底人の研究している途中から独自にシェイプシフターを作ったが、オリジナルのほうは完成しなかった。故にお蔵入りで封印されていたとか。


「――そうなると」

「暴走ではなく、元々不完全なものを無理矢理動かしたせい?」


 ダスカ氏は目を見開いた。ベルさんが皮肉げに口元を歪める。


「予想された破滅ってやつか。古代地底人は注意書きを残しておくべきだったな。これは不良品だから動かすなって」

「まだ仮説の話さ。本当に暴走しただけかもしれない」


 とはいえ、実用化されず封印された時点で、触らぬ神に祟りなし、だったんだろうけどな。


「どちらにしろ恐ろしい話だな」


 しみじみとベルさんは言った。


「古代人が作った代物で、未来の子孫が滅びちまったってのは」

「遺産と言っても残していいものと残してはいけないものがあるということだね」


 嫌な話だ。

 記録によると、シェイプシフターたちは円盤都市に侵入し、そこに人々を襲って喰らっていき、その数を増やしていったとある。


「円盤都市の破壊がほぼなくて地底人がいなかったのは、シェイプシフターたちが食い散らかしたせいだったんだな」


 なるほどね。ベルさんの言う通りだ。町が妙に綺麗だったのは、シェイプシフターたちがその姿を変えて、騒ぎにならないように襲っていたんだろうな。

 彼らの潜入能力を考えれば、水漏れのごとく静かに浸食して広がっていったというのも理解できる。


「その割には、セカンドベースの襲撃以降は、かなり荒っぽい戦い方をしていましたね」


 ダスカ氏がそれを指摘した。


「かつての浸透とは、また別の手で動いているような……」

「相手によって戦術を変えているのかもな」


 変幻自在。それこそシェイプシフターの真髄だ。


「もしかしたら、地上の人間を取り込んだことで、現代流の戦術を身につけたのかもしれないな」


 進化、あるいは近代化。それはそれで厄介なんだよな……。

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まんま、 状況が旧OVAガ○バーの、 OPの歌詞。 掘り起こされた悪夢が囁く、 神が忘れたprogram。
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