第1874話、地上と地底の対決
俺たちは施設から資料を回収し撤収した。
ライオネル博士とそのチーム、突入したシーパング兵の生き残りが捕虜になっているかもと探したが、確認できなかったのが残念である。
「どこかの施設に移されている……なら、可能性は――」
「ないだろうな」
ベルさんはにべもない。それは過剰な期待というやつということなのだろう。地底シェイプシフターたちに取り込まれたと見るべきかもしれない。
うちのシェイプシフターたちも、大帝国相手には散々やってきたからな。
回収した資料の解析作業を専門家たちに委ねる。古代文明研究者たちも、ここのところの地底探索で、地底人の残したものについて理解を深めつつあるから、これら資料の内容がわかるのも時間の問題だ。
「それはそれとして、地底シェイプシフターをやっつける方法を考えようぜ」
ベルさんは言うのである。
あちらさんは、こちらと交渉する意思がまるでない。それでもって攻撃してくるとなれば、もはや生存をかけた闘争だ。
交渉も和平もないのなら、滅ぼすしかないのだ。
「兵器なんだよなぁ」
「戦うことが存在する意味ってこったな」
そのために作られた。だから戦う。彼らの中には、それ以外のことは存在していないから、別にこちらを憎んでいるとかそういうのはないんだろうな。
「炎は通用するから、いざ組み付かれたら、それで振り払う手もありだな」
「むしろ、それ以外だと振り払うことは不可能じゃないかな?」
実際は組み付かれた時点で、ほぼアウトだと思う。魔人機や機械兵器ならば、ワンクッションの間に反撃できそうだ。先の戦闘でもブラックナイト・ベルゼビュートに取り付いた敵機を炎で焼き払っていた。だけど、対人戦闘中だとこういうのは無理だろう。俺たちみたいに魔法で防御できない限りは。
「近づけさせないのが一番だけど、飛び道具では炎属性とアウトレンジってのは相性がよくない」
たとえば火炎放射器なんて射程が短い。無理に炎属性攻撃の射程を伸ばそうとすると、余計に出力を上げたり魔力をぶち込む必要があって、つまりは燃費が悪くなる。
「有無を言わさず、先制攻撃で殲滅ってのが一番楽だろうな」
「そりゃあ、どこと戦ってもそうじゃね?」
ベルさんは言った。そうなんだけどさ。
「シェイプシフター相手だと特に。どこで分離して逃げているかわからないから」
オーバーキルぶちかまして、地形ごとごっそり削るのが確実だと思う。ヘリや戦闘機、魔人機もどきと戦って爆発四散させても、その一欠片が合体して復活とか普通にあるのがシェイプシフターだから。撃破前より賢くなって、というのが始末が悪い。
「円盤都市にくっついている奴、ファーストベースやセカンドベースを侵食している奴は、バニシング・レイ――魔導放射砲で都市や地形丸ごと吹っ飛ばす。……これを基本にしようと思う」
変に近接戦を挑んで犠牲を増やすこともない。
「地底文明の都市とか遺跡を破壊してしまうのも、人命と比べたら仕方ないのかな」
「それで犠牲者が出ない、減らせるっていうなら、そうするべきじゃね?」
ベルさんは首を傾ける。
「まあ、大きなところはそれで減らせるだろう。問題は小規模だったり、分かれて動いている奴らだな」
「基本は、範囲魔法や高火力兵器による一撃殲滅。推奨はエクスプロージョン系列。風で飛ばしたり凍らせたりはあまり……という印象」
俺の率直な意見だ。
「一対一どころか、近接戦はするべきではない」
「だが地底シェイプシフターは飛び道具も使ってくる」
指摘するベルさんだが、俺は肩をすくめる。
「それならまだマシだよ」
密着されて喰われることに比べればね。
ただ、状況が近接戦を要求してくる事態もある。細かな部分での掃討戦をやるなら、そこも考慮しなくてはいけない。
「世の中、そうそう上手くいかないものだ」
「それでケリがつけば楽ではあるんだがな」
大魔王様も同意した。
「炎属性の魔金属を使ったパワードスーツがあっただろう? あれなんかどうだ?」
「サラマンダーか? 作ったはいいが、いまいち出番がなかったんだよな」
しかも七、八年前に作ったやつだ。パワードスーツ系は、魔人機のこともあって需要はあったがそこまで目立っていなかった。ノーマルや空中対応型、水中型と違って、戦場よって特定の強みがあったわけでもなかったし。
「新規に用意したほうがいいかな。当時のものがどれくらい稼働しているかわからないし」
「犠牲を減らすという意味では、出し惜しみはするもんじゃねえからな。全然ありだと思うぜ」
「確かに」
相手がシェイプシフターであるなら、ケチケチせず当たるべきではある。
地底のシェイプシフター軍の殲滅のため、準備にかかる俺たち。シーパング同盟にも軍派遣を要請するが、対シェイプシフター対策を講じた上でないと、侵入されたり兵器を乗っ取られたりとろくなことにはならないからね。
・ ・ ・
シーパング同盟議会に地底を偵察した件を報告した。地底拠点に攻撃を仕掛けてきた地底シェイプシフター軍は、人間との対話を拒否し攻勢の準備をしている。
議会員の中から、こんな発言があった。
「人類が地底に入ったことで仕掛けてきたのではないか? つまり撤退すれば奴らは攻撃してこないのではないか?」
地底シェイプシフターは防衛本能で攻撃を仕掛けてきているから、人類が地底から引けばいい――という意見だ。
だが残念ながら、そうは思えない。
「我々が撤退した後の彼らの動きがこれです」
映像資料を提出する。ファーストベースとセカンドベース、そして円盤都市に浸食し、その数を増やしているシェイプシフターたち。
「彼らは地上侵攻を考えています。それ以外に、人類がいなくなったにもかかわらず戦力を増強している理由がありますか?」
「……」
同盟軍の地底シェイプシフター軍に対する防衛出動が決まった。
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