第1872話、飛来する地底シェイプシフター群
車が爆発して10秒と経たず、地底シェイプシフター軍のワスプヘリ10機が被弾した。
俺のTセカンドの攻撃、地上のシェイプシフター兵の待ち伏せロケットランチャーは、敵を奇襲したわけだが、ここで面倒なことが起こる。
相手は兵員輸送コンテナをぶら下げた汎用ヘリ。墜落させるならヘリを狙うのが正解ではあるが、敵は地底シェイプシフターである。
地上にコンテナが落ちて、中にいた兵たちが激突の衝撃にさらされようとシェイプシフター兵であれば無傷。骨が折れることもなければ内臓が破裂することも脳震盪を起こすこともない。
では兵員コンテナを先に吹き飛ばせば……今度は戦闘力を有したヘリのほうが残る。地上のシェイプシフター部隊は、ほぼコンテナを優先して攻撃した。……そうやって敵の注意を引きつつ、魔法でまとめて吹き飛ばす。
「ファイアーストーム!」
Tセカンドから、敵集団めがけて炎の魔法を放出。シェイプシフターに相性のいい炎を風という広範囲でまとめて一掃する。
「燃えろよ……!」
超高熱が漆黒のワスプヘリの大半を巻き込んだ。その胴体を構成するシェイプシフター体が表面から燃焼、溶けていく。
十八機、消滅! 残り範囲外に逃げた二機。反応のいい奴がいた。動いてなかったらまとめて燃え尽きていただろうに。
『逃がすかよ!』
ベルさんのブラックナイト・ベルゼビュートが両肩のマギアブラスターを放った。赤い熱線は射線上の敵機を瞬時に蒸発させた。さすがの対応。しかしオーバーキルだなこれは。
『これで全滅か?』
「待ち伏せをしかけたんだ。これくらいはやっておきたいね」
センサーなどには反応なし。索敵機の方はどうなんだ? 問い合わせをしてみよう。もしもし――
『北方より移動する敵性航空隊、接近。ワスプヘリ30』
おかわりが来たらしい。
『北ってことは、さっきの連中とは別の場所からか』
ベルさんは言った。どうやら敵さん、あの施設を攻撃されている間に救援要請を出していたんだな。俺たちはその援軍到着前に制圧してしまったが。
通信の方法が気になるところではあるが、今はやってくる連中を迎撃しないとな。
「レーヴァ隊は施設付近まで戻って、防衛線を構築。俺とベルさんで北方の敵の数を減らす。コントロール、ファルケ戦闘機隊もこちらに寄越してくれ」
『了解』
うちのシェイプシフター部隊がそれぞれ動き出す。俺はTセカンドの向きを変えて、北へ針路を取るとマギアスラスターを噴かした。
「さて、ベルさん。さっきの連中は問答無用で車を吹っ飛ばした。次の連中も同様の戦闘部隊だと思うかい?」
『どうせワスプはコンテナが付きなんだろう? 施設に突入する気満々ってことだ。敵だろうよどうせ』
なら、さっさと撃ち落としてもよかろう。
「見えた」
戦闘機にも負けない推進力を誇るTセカンドとブラックナイト・ベルゼビュート。モニターには複数の分隊にわかれたワスプヘリの集団。ご丁寧に兵員輸送コンテナ付きだ。
『なあ、ジン。妙だな……』
ベルさんが違和感を口にした。俺も同感だよ。
「妙にバラけているな。これではまるで、まとめて攻撃されるのを回避しようとしているようだ」
広範囲攻撃を受けても一撃で全滅しないような位置取りで移動する敵集団。
「シェイプシフターは対応力が早いのは理解しているが、それは生き残ればという話だ」
先の第一波は欠片も残らないように焼き払った。あれで生き残った奴はいないと思うが、万が一残ったとしてもこうも早く警告できるのか。
『これ、どこかで覗き見している奴がいるぞ』
監視衛星や偵察機のように、俺たちが把握していないところから覗いている敵がいる。そう考えれば、先ほどと違う行動を地底シェイプシフターたちが取り始めても説得力はあった。
『スパイ野郎がいるとなると、最初から施設の外から見張られていた可能性もあるな』
「レーダーやセンサーにも映らないほど小型のやつ荒野にポツンといるのかもしれない」
こちらの捜索にも引っかからないほどの擬装をした敵が。シェイプシフターであれば、それが可能だ。
『手の内を見せるようで気が引けるが……。そうもいかないんだろうな』
ベルさんがぼやいた。
「目の前の敵を放置するわけにもいかないからな。……やるぞ、ベルさん」
『応よ!』
Tセカンド、マギアランチャーを召喚。遠距離では魔法の効果がいまいちだ。ランチャーで不足分を補い、薙ぎ払えるだけやっつける!
「行けよ!」
熱線が複数の黒ワスプヘリを消滅させる。ベルさんもまたマギアブラスターで一閃。七、八機くらいが吹き飛んだかな。
ワスプヘリの何機かがコンテナを投棄した。黒いコンテナは、その場で形を変える。シェイプシフターお得意の変身だ。
「戦闘機だ」
それはウィリディスのファルケ戦闘機の矢じりのような胴体に、ドラケン戦闘機の主翼をつけたようなシルエットだった。機首が短いのに翼はデカい、そんな印象だ。
『あんな機体、見たことがないがな!』
「取り込んだ情報から独自に作ったんだろうな」
ただ変身するだけでなく、長所を盛り込んで異質な形態になることもある。その一例だな。
『意外と速いな!』
「中に人間を乗せる必要がないだけ、自壊しない程度に加速できるからな!」
戦闘機の脆弱な部分の一つが人間だって言われることもある。高速移動中に高いレベルの運動をする際に発生するGがパイロットを押し潰す。それがなければ、戦闘機はもっと殺人的な加速や運動ができるのだ――という話。機体の剛性というものもあるから、空中分解してしまうこともあるが。
スタンプガンで照準。トリガーを引く。敵機の胴体を貫通、エンジンに誘爆!
「まず1機!」
向かってくる敵機。主翼のパイロンからミサイルが投下される。
「ほっ、ミサイルも模倣済みかい」
これはまた厄介だな。
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