表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1878/1882

第1868話、シェイプシフターと接触


 内部は暗い。赤い照明がつけられているのを見ると、普通に建物。これがシェイプシフターが化けているなんて思わないよな。


「こうまで作り込みがされていると、わからないよな」

「お前さんだって、シェイプシフターの変身能力の高さは知っているだろ。潜入部隊のシェイプシフターには道端の石ころはおろか、花瓶やコップにだって化けさせていただろう」


 ベルさんは突っ込む。これには俺も苦笑する。


「そりゃそうだ」


 そう考えれば、建物に擬装したって見分けがつかないのも充分あり得る話だ。


「だがこの規模で変身できるって、かなりのものだぞ」


 建物と見分けがつかないレベルの作り込み……。というか本当は黒いだけで普通の建築物じゃないのか――そう思わせるのだから大したものだ。

 地下へと下っていく。同盟軍の歩兵部隊が入った時と変わった様子もなく、ここまで施設側から何らかの動きがなかったのも同じだ。

 何事もなく進んでいると、きたきた例の仮面をつけた騎士らしきものが二人、通路上に立っていた。


「ジン」

「まずはコミュニケーションを取ろう」


 一応初対面であるし、挨拶は基本というからね。


「攻撃されるぜ?」

「政治家になるとね、相手に手を出させるよう振る舞うものなのさ」


 現場はそれで苦労させられるわけだが、責任者が前に出て殴られてくれる分には、前線の兵たちも犠牲にならなくて済むだろう。……責任者が前に出るな? 大丈夫大丈夫、俺も捨て駒だからね。


「話し合いにきた。ウィリディス代表のジン・アミウールというものだ」


 名乗りは大事。要件も伝えた。さあてどう出る?


『お前は……』


 おっ、喋ったぞ。コミュニケーション可。


『人間の親玉か?』

「一国の王であり、一国では公爵、一国では南方侯爵。……まあ、それなりに身分がある者と解釈いただきたい」

「神ってのを忘れてるぜ、ジン」


 ベルさんが小声で冷やかした。シェイプシフターに神様という概念が存在するか怪しいから黙っていたんだ。わからないものは敬えないでしょ。


『こちらへ』


 仮面の騎士が奥へと招いた。話し合いに応じる流れを期待してもいいのかな、これは?

 正直、彼らが何を目的に動いているのか、こちらにはわかっていない。彼らがシェイプシフターであり、地底人に作られた兵器であるのはわかる。だがその地底人がいない今、何故攻撃してくるのか、これがわからない。

 人間など知的生物を抹殺するために動いているのか、それともと何かを守るために動いているのか。それがわかるだけでも対処方法はガラリと変わる。

 やはり情報が不足しているんだ。色々と……。


『ここで待て』


 仮面の騎士がそう言うと、俺とベルさんの前後の扉が閉まった。ベルさんは肩をすくめる。


「これ、閉じ込められたんじゃね?」

「検査でもしているのかも」


 まあ、いい予感はしないよな。

 すると天井と足元から空気が吹き出すような音がした。ふーむ、これは。


「どうやらオレ様たちは歓迎されていないようだぞ」

「そうなる場合も想定はしていたよ。だから俺たちがきたんでしょうが」


 他の者に任せると、帰ってこれないかもしれないからさ。


「さて、流し込まれているのは睡眠ガスか? それとも毒ガスかな?」

「吸ってわかるといいんだけどなぁ」

「ここの俺たちにわかるのは臭いくらいか?」


 効かないとなれば、そのうち向こうから動くでしょ。



    ・  ・  ・



『死なないのか?』


 仮面の騎士はモニターを注視する。カメラに移るジン・アミウールと名乗った男とお供の騎士は、毒ガスの充満する室内で何やら談笑をしている。


『ガスが効かない?』

『地上人にもガスは有効だった』


 仲間と顔を見合わせる仮面の騎士。


『この二人が特別な体質の持ち主なのかもしれない』

『片方の騎士の装備はもしかしたらガス対策なのかもしれない』

『あとで装備を解析しなければ……』


 地上人がああいう装備を多用してきた時に備えて。

 仮面の騎士の一人は言った。


『直接取り込め。地上人の幹部級ならばメッセンジャー役として利用できる』

『室内にシフターを送り込みます』



   ・  ・  ・



「待たせるもんだなァ」


 ベルさんが苛立ってきた。無色透明のガスが充満する室内。これが普通の人間ならとっくにやられているのだろうが、俺たちは普通ではないのでね。


「あちらさんも、俺たちが倒れるまで待っているのかもしれないな」


 顔を上げる。天井の穴から黒いドロリとしたものが垂れてきた。おやおやこれは――


「どうやら、シェイプシフターさんを投入だ」

「オレらを取り込んで殺そうってことなんだろうな」


 話し合う気があるなら、扉を開けて奥へどうぞ、だろうからね。連中は端から話し合う気などないということだ。

 それが想像ではなく確定しただけでもきた甲斐はあった。よろしい、では戦争だ。


 俺たちを取り込もうと飛びかかってきた黒い塊――シェイプシフターは俺たちに触れる寸前に燃え上がった。


「俺たちが何の対策もしていなかったと?」


 ファイアウォール。触れる者を炎上ダメージを与える攻防一体の火属性魔法。


「あ、ジン、これ――」


 ベルさんが言いかけた時、室内のガスが爆発した。どうも引火しやすい成分が混じっていたらしい。

 凄まじい爆発は扉を内側からねじ曲げ吹き飛ばした! もしかしたら真空状態になってしまったかな? ふっと煙が消える中、俺とベルさんは扉をぶっ壊したのを幸いに前へと進んだ。

英雄魔術師@コミック第12巻、発売中! ご購入、よろしくお願いします!

既刊1~11巻も発売中! コロナEX、ニコニコ静画でも連載中!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リメイク版英雄魔術師、カクヨムにて連載中!カクヨム版英雄魔術師はのんびり暮らせない

ジンとベルさんの英雄時代の物語 私はこうして英雄になりました ―召喚された凡人は契約で最強魔術師になる―  こちらもブクマお願いいたします!

小説家になろう 勝手にランキング

『英雄魔術師はのんびり暮らしたい 活躍しすぎて命を狙われたので、やり直します』
 TOブックス様から一、二巻発売!  どうぞよろしくお願いいたします!
― 新着の感想 ―
話し合い() これは話し合い()
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ