表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1877/1884

第1867話、シェイプシフターハウス


 報連相は大事である。

 現状のわかっていること、つまり地底偵察における情報は、我らが親愛なる兄弟であり、同盟議会議長であるジャルジー王に伝え、同盟軍も万が一の事態に備えて、臨戦態勢を整えてもらう。


『すでに地底で問題が起きていることは放送されているからな』


 通信機から表示されるホログラム状のジャルジーは言った。


『相手については不明だが、地底の同盟軍基地が攻撃を受けてウーラムゴリサ国も撤退、現在地底は封鎖――相手の正体については伏せているが、地底人の仕業という説がまことしやかに報じられている』

「姿を自在に変えて、どこにでも現れる敵なんて知らせたら、パニックが起きそうだ」

『地底を封鎖していなかったら、そんな奴が地上を闊歩しているところだからな……。そりゃあ混乱するだろう』

「とりあえず、敵の規模については不明な部分も多いからさらに調べる。地底で決着をつけたいね」

『了解した。地上に飛び火しないことを祈っているよ。もうすでに犠牲者も出ているからな。これ以上面倒は増やしたくない』


 そいつは同感だ。


「それでなくても、ここのところ忙しいからな」


 ニーヴァランカ問題とか、ウーラムゴリサ内乱とか、それに絡んだら地底問題ときたもんだ。


『兄貴が絡んでくれていなかったら、もっとややこしいことになっていただろう。今も解決のために右へ左へだ』

「振り回されるのが今の俺たちの仕事だよ」


 俺が言うと、ジャルジーは微笑した。


『情報はシーパング情報局とも共有してくれ。こちらとしても役に立てる情報はそちらに流す。もちろんシーパング大公殿として、な』

「肩書きが多いのも考えものだが、こういう時に建前としてでも使えるのなら、利用しましょ」


 やれやれ、ってやつだな、まったく。

 通信終了。さてさて、始めますかね。



   ・  ・  ・



 遠巻きから偵察は続けるが、もっと直接的な偵察活動も行う。


「威力偵察というやつだな」


 俺たちが狙いをつけたのは、ライオネル博士ら研究チームが発見、その後消息不明となった始まりの場所。


「同盟軍もやられた場所だな」


 暗黒騎士姿のベルさんは言うのだ。俺たち強行偵察部隊は、黒い倉庫のような建物に密かに近づいた。


「今にして思えば、あれもシェイプシフターなんじゃねえか?」

「円盤都市を侵食していたみたいだからな」


 遠距離視覚の魔法で拡大。映像でなら何度も見た建物がそこにある。


「姿を変えるのは得意というのはわかるが、あれ自体がシェイプシフターとは普通は思わないよな」

「よく言うぜ。お前さんは、そのシェイプシフターを魔人機サイズにしたり、飛行機にして飛ばしていただろうが」


 ベルさん、言うねえ。だけど。


「それはまだ常識の範囲内じゃないかな」


 姿を変えるシェイプシフターが、敵対するものの姿に変わるということはよくあることだ。大蛇やドラゴンにだって、その気になれば化けられるんだから、魔人機や航空機なんてあり得るだろう。


「建物、倉庫まるまる変身するのは、さすがにないんじゃないかな……?」

「目の前にあるじゃねえか」


 狭い常識の範囲。とベルさんは皮肉った。


「あれがシェイプシフターハウスなら、普通は入ったら死ぬぜ?」

「肉食獣の口の中に自ら入るようなものだからな」


 まあ、それでも行くんだけどね。俺たちは死なない。


「ということで、レーヴァ。見つからないように監視を頼む」

『承知しました』


 シェイプシフター隊長に後を任せて、俺とベルさんは、始まりの黒い倉庫のような建物に近づく。


「残骸も残っていないんだな」


 ここを見つけた博士らを乗せてきた探索艇はもちろん、後に乗り込んだシーパング同盟のワスプⅠヘリとか。


「あいつら悪食だから喰っちまったんだろうぜ」


 ベルさんは軽口を叩く。堂々と歩いていったら、何か反応があると思ったが建物側に反応はなし。


「敵対的になるのは、入ってからってか?」

「トラップみたいだな」


 こちらの行動に対してのリアクション。何もしなければ、それ自体も何もしない。


「トラップハウスかぁ。さてさて、前に入った連中は跡形もなく喰われているんだろうが、何があるのやら」


 入り口は閉まっている。と思ったら、すすっと自動ドアよろしく左右に開いた。


「おいでおいでしてやがるぜ」


 ベルさんが笑った。


「どうぞお入りくださいってさ」

「罠じゃなかったら、こっちと交渉する気が少しはあるのかね」


 俺は思ったことを口にしたが、ベルさんは首をかしげる。


「どうかな。食虫植物とかは、獲物がかかるように口は開けてるもんだしな」


 あくまでトラップの一環というわけだ。戦闘兵器が戦わないで何をするんだ、って話だしな。


「でも、敵味方の識別くらいはするだろうよ」

「もうあっちは仕掛けてるんだぜ、ジン」


 セカンド・ベースにファースト・ベース。同盟軍守備隊もやられた。宣戦布告なき攻撃によって。

英雄魔術師@コミック第12巻、発売中! ご購入、よろしくお願いします!

既刊1~11巻も発売中! コロナEX、ニコニコ静画でも連載中!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リメイク版英雄魔術師、カクヨムにて連載中!カクヨム版英雄魔術師はのんびり暮らせない

ジンとベルさんの英雄時代の物語 私はこうして英雄になりました ―召喚された凡人は契約で最強魔術師になる―  こちらもブクマお願いいたします!

小説家になろう 勝手にランキング

『英雄魔術師はのんびり暮らしたい 活躍しすぎて命を狙われたので、やり直します』
 TOブックス様から一、二巻発売!  どうぞよろしくお願いいたします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ