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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1873/1886

第1863話、シェイプシフター研究


 魔術師は、地底人が兵器として研究していたシェイプシフターを盗み出し、自らの研究室で調査を始めた。



――シェイプシフターの能力、性能は驚嘆すべきもので、地底で見ていた時から感じていたが、これは通常の手で対抗するのは難しい。



――戦闘となれば、物量と圧倒的火力で対抗は可能。ただし相応の被害を覚悟せねばならず、それで勝っても、その後を考えれば果たして本当に勝てたと言えるのか大いに疑問だ。



 これに対しては俺も理解できる。シェイプシフターは個体の持つ性能を持ったまま増殖ができるが、人間の軍隊ではそうはいかない。

 長年時間と金をかけたベテランを失えば、それより質が劣る新兵が戦うことになり、これに経験コピーのツヨツヨシェイプシフターがぶつかれば、まあ次は負けるよねって。



――魔法に対して火属性系統が有効。ただし辛うじてというレベルであり、他の属性、特に水、氷、土などは高い物理耐性と相まって、ほぼ無効。



 しっかり研究しているな。俺たちがシェイプシフターを軍隊として使っているのと同じくらいその力をよくまとめている。



――真にシェイプシフターが怖いのは、姿を変えることだ。これは単に化けて、人を惑わせるだけに留まらない。むしろ変身能力としてはまだ可愛いほうだ。



――どんな細い隙間にも入り込める柔軟性。分裂することで小さくなり、人の監視を軽々と躱し、忍び寄り、攻撃が可能。正面からの戦いよりも、こうした不意打ち、夜襲などにおいては、彼らの独壇場であり、もはや正面から戦いを挑む前に、決戦前夜で壊滅させられてもおかしくない。



「怖いねぇ、本当。敵に回すと怖い連中だ」


 ベルさんが、わざとらしく言った。

 だろうね。ディグラートル大帝国さんとか、戦争の裏で火事場泥棒をしていた盗賊や犯罪組織討伐で、シェイプシフター兵は大活躍だった。


 特に後者に対して、戦争に必要な物資の消耗を押さえつつ、シェイプシフター兵団を強化するという、まさにここに書かれた日記上での恐ろしい一面と同様のことをやった。

 魔術師はあれこれシェイプシフターの軍隊が攻めてきた場合の対抗策を研究したが、彼が得た答えは……。



――結局、対抗するに最善なのは、同じものをぶつけることだ。つまり、シェイプシフターにはシェイプシフターをぶつければいい。それが他の何をぶつけるものと比較しても、一番被害が少ない。



 ……これは真理だよ。結局、一番の対抗策は同じようなもの、あるいは同じものをぶつけるのが手っ取り早い。他の対抗策が見つかれば話は別だけど、ない場合は。


 古今、歴史を振り返れば、新兵器が生まれればそれの対抗策が作られた。そして気づけば同じ種類同士の兵器でぶつかる。

 この魔術師さんも、その辺りのことをよく理解しているようだ。



――私は、シェイプシフターを使役することに成功した。そして敵がシェイプシフターの軍勢で我々の世界を侵略してきた時のために、その指揮棒の製作にかかる――



 いよいよ、シェイプセプター――姿形の杖を作る、と日記には書かれていた。それがあの遺跡に残っていたわけだから、この先を読まずとも結果はわかった。魔術師は、指揮棒である杖を完成させたのだと。


 とはいえ、大事なことが書かれているのに思い込みで見逃すのもよくないので、しっかりその先も調べる。

 姿形の杖を作るまでの苦労や、シェイプシフターに関する研究についてわかったことなどが記されていた。参考にさせてもらおう。


 とにかく、姿形の杖がこの古代都市にあった理由というのが判明し、その作られた目的が、地底人のシェイプシフター兵器に対するカウンターだったこともわかった。


 結局、この魔術師が生きていた頃に地底人は地上に侵攻することはなかったし、その地底人自体が滅びてしまったようだが、シェイプシフターが兵器となって牙を剝くという危惧は現実のものになりそうな状況だ。


 地底の出入り口は封鎖したが、人間と見たら攻撃を仕掛けてきたシェイプシフターたちのこと。地上へ出てきて攻めてくるという可能性は高い。

 広い地底のことだから、まだ未発見の出入り口があるかもしれない。故に地底のシェイプシフター軍は制圧、無力化しなくては今後の地底開拓もないし、もしかしたら地上の安全もないかもしれない。

 だが懸念はある。特に深刻なのは、地底シェイプシフター軍の規模がまったくわからないということだ。


 ファースト・ベース襲撃や、救出部隊との交戦で確認された分だけしかいないのか。それとももっと大量に地底シェイプシフター軍は存在するのか。

 意気揚々と討伐部隊を送ったら全然兵力が足りませんでしたでは、洒落にならない。


「偵察が必要だな」


 俺が言えば、ベルさんは口を開いた。


「だが地上への出入り口は、今頃連中が見張っているだろうぜ?」


 敵が地上の人間に敵対的であり、基地を破壊したところから見ても、こちらが退却した出入り口を監視しているだろうことは想像に難くない。

 そこへ飛び込むのは、いくら何でも自殺行為だろう。


「そういえば、この魔術師殿は、どうやって地底に行っていたんだろうな……?」

「それについては――」


 ダスカ氏が小さく肩をすくめた。


「この都市の下層に転移魔法陣がありまして、そちらから地底に往復していたようです」

「魔法陣! あるのか」


 いや、ないと地底世界を見たり、シェイプシフターを持ち出して研究とかできないもんな。

 しかし、その魔法陣が使えるなら、偵察に利用できるな。何せ、大昔の魔術師が地底人に気づかれずに利用していたのだから。

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