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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1864/1885

第1854話、地底建造物


 空中探索艇を降りたライオネル博士とその探索チームは、発見した建築物を見上げていた。

 黒一色、四角い形状で、高さは二階建て建物くらいの高さである。


「扉はありますが、窓はないようです」


 助手のパンケルは壁を叩く。金属のその壁は頑丈そのもの。ライオネルは首をかしげる。


「うむ。……思ったよりこじんまりしているな」

「これだけでは、そうですね」


 パンケルは下を見る。


「この建物、地下がメインでしょうか」

「そうであれば、いいがね」


 ライオネルは苦笑いである。そうでなければ少し大きな倉庫みたいな、雰囲気だけの建物になってしまう。遺跡と思ったら倉庫だったは勘弁してほしい。


 ――いや、地底人の倉庫なら、そこに収められているものは当時を知る資料になるか。


 そう思い直すライオネル。


「それで、どうかね? 扉は開けられそうか?」


 扉の前には護衛として雇った冒険者が二人いて、左右開きの扉をそれぞれ力いっぱいに引いていた。

 ガガ、と重いものがこすれるような音がして扉が開かれる。


「おおっ! でかした」


 特に扉を壊すことなく、人力で開いたことにライオネルは感嘆する。魔力式や機械式の可能性があったが、操作端末やパネルなどが見当たらなかったので破壊するしかないかもと諦めかけていたところだったのだ。

 二人の冒険者は、顔を真っ赤にするくらい力を入れていたようで、相当扉は重かったのだろう。


「キミのパーティーは優秀なようだね」


 ライオネルは、護衛の冒険者パーティー『クラッコ』のリーダー、アンソニーにそう告げた。


「……力仕事も仕事のうちと解釈しています」

「うむ」


 アンソニーは寡黙な男だった。熟練の冒険者らしく鍛えられた体の持ち主で、どちらかというと元騎士か、あるいは傭兵をしていたように思える。大陸戦争で主や組織を失い、冒険者になった元傭兵や騎士、兵も少なくない。


「博士、入りましょう」


 パンケルが促した。ライオネルら研究員四名、冒険者五名が扉から中に入る。なお探索艇にはパイロットと研究員一名、冒険者二名が警戒として残る。


「おおっ……これは」


 真っ暗だった室内が床や天井の赤い光によって照らされる。血のように真っ赤であるが、光があるだけ暗闇よりはマシである。


「この施設、生きていますよ」

「奥は……あぁ、下り坂だね」


 ライオネルはこの建物が地下へアクセスするための入り口だと理解した。アンソニーは目を細くする。


「どうだ、クラース?」

「ダメですね。見えるんですが、見えないです」


 赤すぎて見えているようで非常に見難かった。遠くになればなるほど細部がよくわからない。


「とりあえず、俺ら以外に動いているモノはないようです」

「慎重に進め。……いいですね、博士?」

「そうしてくれ」


 未知の場所の探索である。慎重であらねばならない。これまで地底人に遭遇してこなかったとはいえ、これからもそうとは断言できないのだ。


 ――もしかしたら、この先に地底人たちの居住する空間があるのかもしれない。


 円盤都市ではなく、地底世界の地下に生活環境を変えた。確証はないが説などは様々出るものだ。

 そしてそれが正解だろうが外れだろうが、前に進めばわかるのである。



  ・  ・  ・



 ウーラムゴリサ国内、首都アルモニア郊外に建てられたドーム。

 俺はベルさんとラスィアを連れて、そちらを訪ねる。クローマ女史が薄らと笑みを浮かべて出迎えた。


「これはアミウール王。ようこそおいでくださいました」

「これはご丁寧に……。で、どうですか?」


 俺はさっそく尋ねる。

 ドームの中央に鎮座するのは、巨大ムカデモンスター『クルエル』を動かしていた制御装置の片割れ――脳味噌だか卵だかに見えたアンテナを含めた装置である。

 ケーブルに繋がっていたそれを俺たちは回収し、専用の建物をこしらえた上でシーパング同盟の技術者を招いた。そして解析調査をしているのである。


「お察しの通り、地底の円盤都市から命令を受け、それを前線のクルエルに伝える翻訳機兼アンテナです」

「翻訳機?」


 ベルさんが怪訝な顔をすれば、クローマは薄く笑った。


「都市の施設からの命令をクルエルの理解できる信号に変換する……まあ、そういうことですよ。逆にクルエルから発せられる魔力波を翻訳して、地底の都市へ送る中継器でもあります」


 ということは――


「これがないと、地底都市はクルエルに直接命令できないということか?」

「一斉命令についてでしたら都市から動かせます。ただ各個体への指示や報告――特に後者の通信量がかなり膨大なものになるようで、その処理のために間に中継器が必要なようですよ」

「なるほど」


 大雑把でいいならこの装置は不要だが、臨機応変に対応させようとするなら、その都度命令を発したり、報告を受けるためにこれが必要となるわけか。

 ベルさんが片方の眉を吊り上げた。


「こいつ単体ではムカデどもを制御できないのか?」

「非常用の制御室があります」


 クローマは巨大卵っぽい装置の一角を指さした。


「中にコンピューターがありますから、有人操作が可能です。ただし、かなり限定的なものですが」

「できなくはないが、便利ではないか」


 俺は腕を組む。このままの状態では、シーパング同盟が望むような転用は難しいということだ。クローマは言った。


「構造はわかりますから、新規に制御装置を作れば補いがつくでしょう。……そんなものが必要になるかどうかはわかりませんが」

「使わずに済むと、世の中平和でいいんですけどね」


 いざという時のために備えるのは大事ではあるが、一歩間違えればこれが原因で大きな災害を招くこともあるから慎重にならざるを得ない。……都市側の装置をぶっ壊したのは俺たちなんですけどね!


 今の時点では、操作対象のクルエルがほとんど駆逐されて、スタンピードなどは起こらないんだけど……。他の生物で実験、兵器として運用されても困るんだよな。

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