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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1825/1885

第1815話、惨事の予感


 ダンジョンスタンピード。ダンジョン内のモンスターの異常大発生。それらが増えすぎたことで、表に出てきてしまう吐き出し現象。

 何らかのバランスが崩れたことで発生する災害のようなものである。餌が不足してきたので、山から降りてきた獣みたいなものだ。ただしイナゴの大発生みたく、その数が尋常ではないのが厄介なところだ。


「最近、スタンピードなんて聞かなくなっていたな」


 俺の素直な感想がそれだった。


「兆候と言ったが、発生の場所は?」

「ウーラムゴリサ内、デロタ山に魔力異常反応が検知されました」


 ラスィアが資料を確認する。


「かつての王国の記録では、デロタ山にはダンジョンがあり、これまでの周期的にも、そろそろ発生する時期になっていたようです」


 定期的に魔力が溜まり、ダンジョンスタンピードが起きていた。これまではその地方の冒険者がダンジョンのモンスターを狩って、増えすぎないよう調整していたのだが――


「大陸戦争以来、ウーラムゴリサは国としてあってないようなものですから。冒険者ギルド自体が機能していませんし、めぼしい冒険者は国外へ逃れたか、地方軍閥に加わるかして、ろくに活動していていなかった……」


 ラスィアの眉が下がる。


「結果、規模としてはかなり大きなスタンピードになると、データから予想されます」

「間引きしなきゃ、そうなるわな」


 ベルさんは肩をすくめた。


「で、これが発生した場合、地元連中で鎮圧できるのかい?」

「各勢力間で連携なんてほとんどないでしょうですし――」


 ラスィアはデータパッドを操作する。


「つい今しがた、我々への対抗としてまとまりかけていたみたいですが、それでも鎮圧できるかは微妙です。ウーラムゴリサ領内の一般人含め、大きな被害がでると予測されます」

「スタンピードとあれば冒険者の役割ではあるが……」


 まあ、俺らで代わりを務めるしかないだろうね。


「モンスターによる一般人虐殺の阻止。GEGが動いても大義名分にはなるか」

「やれやれ、オレ様たちが介入しなくても、ウーラムゴリサの地元連中はスタンピードでやられていたんじゃね?」

「……かもしれない」


 でもその時は大勢の民間人も犠牲になっていただろうからなぁ。ウーラムゴリサに残存する人々も、文字通り滅ぼされてしまうところだったかも。


「事が起こってからでは、たとえ駆けつけたとしても大勢の犠牲者は出ていただろうな。幸い、俺たちは今から対応できるから、人間への被害をある程度抑えられる」


 忙しくなりそうだ。デロタ山とやらに部隊を派遣して出てきたところを叩く。


「ジン様」


 ラスィアが軽く挙手した。


「もしかしてロゥクーラのいう秘策とは、このダンジョンスタンピードなのでは……?」

「人が制御できるものじゃないよ。……根拠は?」

「根拠というのは弱いですが、デロタ山は、ロゥクーラのテリトリー内です」


 あぁ、なるほどね。これは偶然と決めつける前に、きちんと考える必要があるな。


「ロゥクーラはダンジョンモンスターを制御下に置いているということか?」

「できなくはないんじゃね? ダンジョンコアがあって、それを支配していれば」


 ベルさんは指摘した。

 ダンジョンコアと言えば、俺もそうだし、かつてヴェリラルド王国で、元冒険者がダンジョンコアを使って人工的なスタンピードを起こした事件があった。


「できなくはない、か。……だがロゥクーラの連中がダンジョンコアを持っているのだとすれば、その力を利用してウーラムゴリサの統一を果たすことも難しくない。……何故、今までやらなかった?」


 そもそも、ロゥクーラは各勢力の幹部を集めて共闘を持ちかけた。スタンピードを起こせる術があるなら、そんなことをせずとも独自にGEGとも戦えたのではないか?


「ダンジョンコアを手に入れたのがつい最近だったのかもよ」


 ベルさんはニヤリとした。


「準備していたところに、オレ様たちがきて、まあついでに他の組織を利用して、いいところどりするつもりだったかもな」

「もっともらしい理由だな」

「確証はないがね」

「まあ、ダンジョンスタンピードを鎮圧すれば、ロゥクーラの仕業かどうかもわかる」


 俺は戦艦『バルムンク』をデロタ山へと向けた。ロゥクーラ陣営の領地だから攻撃されても文句は言えない立場だが……どの道、あそこの副頭領ソリオの態度を見る限り、GEGと全面対決の意思をもっていたから、ドンパチになっても構わないか。



  ・  ・  ・



 ロゥクーラの副頭領ソ()オは、頭領であるディーオ・ロゥクーラに、会談の結果を報告した。


「ほほぅ、そうかそうか、ジン・アミウールか」


 長い金髪のディーオは、細身だが引き締まった体つきの男で、いかにも派手好きの悪党という風貌をしている。


「大胆不敵にもその正体を現したと。……よく生きていたな?」

「顔見せのつもりだったんでしょう」


 ソシオは口元を緩めた。


「実際、何人かは彼が現れた途端、ずいぶん大人しくなりましたから」

「フフーン、そうか。となると、おれらの言うことを聞かない奴らも出てくるか……」


 後ろ手に、室内を行ったり来たりするディーオ。


「まあ、とりあえずはGEGって野郎を片付けてからだな。こちらに従えない奴らの始末は」

「では、始めますか?」

「ああ、始めよう。ウーラムゴリサにロゥクーラの旗を掲げる時だ! ……って、何だか外が騒がしいな」


 ディーオが顔をしかめれば、ソシオもまた席を立った。


「確認します」


 その瞬間、扉がバンと開いた。モヒカン頭の部下が顔中汗まみれで駆けてきた。


「頭領! 大変でさぁっ!!」

「バッカ野郎、スタンクっ! 扉は静かに開けるもんだろうがっ!」


 ディーオは静かに、しかし語気を強めて、最後は怒鳴っていた。スタンクと呼ばれたモヒカン頭は萎縮する。


「も、申し訳――いや、それどころじゃありませんぜ、頭領! やばいんです!」

「何が?」

「ダンジョンスタンピードが起きました!」

「は?」


 ディーオは耳に手を当てる。


「何だって?」

「ダンジョンスタンピードが勝手に起きたんです! こちらは何の指示もしていないのに!」

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