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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1811/1884

第1801話、武装介入の時


 シーパング同盟は、ヴァラン国に対して中立を保っている。それはヴァラン国もまた同様で、ニーヴ・ランカ人への国外追放はすれど、虐殺行為はほぼなくなり、諸外国に対しては特に何もしなかった。

 GEGでも監視はしていたんだけど、シーパング情報局もまた、ヴァラン国に対する偵察、監視活動は続けていた。


「――ご指摘のとおり、墓荒らしの件はあるにはあったのだわ」


 シーパング情報局局長、グレーニャ・ハルはそう言って俺にその資料を見せた。

 情報局の局長室。その面談スペースで俺はベルさんとハルを訪ねていた。


「ほぅ、墓荒らしねぇ」

「標的は金持ちの墓か」


 俺がその資料に目を通せば、ベルさんも覗き込んでくる。


「貴族や王族の墓。これまでニーヴ・ランカ側が管理していた墓が狙われたってか」

「ニーヴァランカの貴族たちは、自分の墓所に生前愛用した貴金属を入れる習慣があるのよ」


 グレーニャ・ハルはエルフ産の紅茶を口にする。


「それを狙っての行動のようね。いつの間にか現地に進出した軍が始めて、割と広くやられたみたいよ」

「一般の墓地では?」

「細かなところで複数。ただ遺体を粗雑に扱うというより、金目のもの目当てのようだったけど。一部の不心得者の仕業程度で、ヴァラン人がー、とかいうには、ちょっと熱意が足りないようなのだわ」

「熱意ね……」


 泥棒する建前に利用するって程度で、本当に民族の恨みでやっているかは怪しいというやつ。とりあえず、国の政策に乗っ取り、愛国を叫べば許されるとでも思っているのかもしれない。

 犯罪は犯罪だけど、ニーヴ・ランカ人とその財産については取り締まらないだろうからな、ヴァラン国も。


「対立感情はあったとて、数年前までは共存してたわけで、一般人が墓に故人を埋葬するとき、そう高価なものを入れてないくらいは知っているってことよ」


 例外は、金持ちの墓、ということか。


「これは……やってるといえばやってる」

「だが、噂ほど民族がどうとかって対立感情でもない、か?」


 ベルさんが首をかしげた。……うーん。


「こういうの、困るんだよな。半分正解、半分間違っているっていうのは」

「それ間違ってるってよくね?」

「部分的にそう、っていうのがあるだけで、説得力がなくなるんだよ」


 先にも言ったが、やってると言えばやっているんだから。そしてその一部でもやっているというだけで、否定的な者たちは鬼の首を取ったように声高に叫ぶわけだ。叩く口実がほしいからな。


「これは、触らぬ神に祟りなし。何も言わないのが正解かな?」

「一部の過剰なねつ造に、釘を刺すくらいじゃねえのかね」


 ベルさんは鼻をならした。


「とりあえず、オレらGEGが出張るようなものはないってことでいいな、ハル?」

「ええ、ヴァラン国もこれ以上騒動を大きくして、他の国々から反感を買いたくないというのが本音のようなのだわ」


 ハルは、そこで新たな資料をテーブルに置いた。


「ベルさんには、むしろ、こちらの方が関心があるかもね」

「どれどれ――」


 ベルさんが紙に目を落とす。


「ウーラムゴリサか」

「元ウーラムゴリサ。あそこにかつての王国はないのだわ」


 グレーニャ・ハルは冷めていた。ヴァラン国のお隣、ウーラムゴリサ。大陸戦争で、真・ディグラートル大帝国によって完全破壊された王国。

 それって、この前ちらっと聞いた気がするけど。


「地方の貴族の生き残りだか、武装集団だかが幅を利かせて、戦国時代やってるって感じだっけ?」

「戦国時代というのが、何のことを指しているかわからないけど、混沌としているのは事実ね」


 グレーニャ・ハルは紅茶を啜る。


「で、とある武装集団が対立していた勢力に勝ったんだけど、集落を一つ焼き払い、住民を皆殺しにした」

「……なんてことだ」


 神よ、これを許されるのか――世間では俺のことを神と言う人もいるけど、俺はこれでも人間なんでね。


「こういう世界だからな」


 ベルさんは、さもありなんという調子だった。


「だがウーラムゴリサって今は国として機能していないわけで、そもそも武装集団? 盗賊の間違いなんじゃねえの?」

「無法者の集団なのは間違いないわね」


 グレーニャ・ハルは認めた。


「普通の国で見たら討伐対象よね、これ」

「ジン、やっちまおうぜ」


 ベルさんが言った。


「GEGでなくても、冒険者としても、こいつはぶっ潰す案件だろうが」

「クエストは出てないぞー」


 俺は棒読みである。


「まあ、こういう無法者を放置するのもよろしくないよな」


 国が機能していない状態で誰も助けてくれない状況だ。それで略奪とくれば、GEGを出しても言い訳は立つか。

 国は関係ないといいつつ、説明責任はあるからね。武力行使する場合は、こういう理由付けは必要になるのだ。面倒ではあるが、ただの無法者と違うところは見せておかないと、支持はされなくなるだろう。


 同盟各国、その他諸外国にとっても、討伐対象を排除する分にはまあ大目にみようとなるが、厄介者は潰される。

 悪党を潰すのにも理由がいるというわけだ。


 まあ、俺たちが掲げている題目から見れば、これは出張らないと嘘になるけどね。

 これ以上略奪からの虐殺行為をさせるわけにもいかない。


「ハル、その武装勢力の情報をもらえるか? あるんだろう?」

「もちろん。こちらは情報局よ。当たり前なのだわ」


 グレーニャ・ハルはニヤリとした。


「航空機は持っていないけど、大帝国の型落ちを何機か保有しているわ。まあ、ちゃんとメンテされているかといえば、そうでもないみたいだけれど」

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