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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1793/1885

第1783話、生まれました


 俺とアーリィーの第三子が生まれた。


「女の子です」

「おおっ」


 アミウール家としては十一人目。サッカーチームができるな。

 うぶ毛は金髪かな……? リンとユーリは俺と同じ黒だったからな。この子はアーリィーと同じ髪色になるか。


「お疲れさま、アーリィー」

「うん……」


 彼女としては三度目の出産だけど、その痛みに耐えてよく頑張った。精根尽きる感じはするのだが、されど三度目、リンの頃に比べれば少し余裕が感じられた。


 女性の体って凄いよな。男性では、とても耐えられないものだと言われている。実際、その痛みは女性だけのものであり、男性には具体的にどれほどのものかわからないから、痛み比較もできないんだけど。


「祖父母参りもしないとな」


 エマン王は、すぐ外でお待ちだけど、日本の俺の両親に、新しい孫の顔を見せないとな。


「その時は、わたしたちも――」


 と、アーリィーの出産に集まった妻たちは言う。はい、家族みんなで異世界――日本旅行で俺の実家に行きましょうね。親父もお袋も、孫が増えて喜ぶだろう。


 女の子か……。うちの坊主たちが、またぁ、とか言いそうだな。もし次に子供ができて、その子も女の子だったら、ダブルスコアがついてしまうからね。

 現時点での末っ子誕生を、今は祝おう!



  ・  ・  ・



「――で、新しい娘の名前は?」


 アーリィーの第三子誕生を聞きつけて、駆けつけたベルさん。シーパング本島の中央病院こと、セント・アミウール病院……名前だけで恥ずかしくなるそこの談話室にて、俺は友人であるベルさんに答える。


「アリーシャと言うんだ」

「ほぅ、つけたのはお前さんか? それとも嬢ちゃんか?」

「最終的にはアーリィーが決めた」


 候補を出し合って、予め決めていたんだ。ベルさんは小さく笑った。


「まあ、何はともあれ、おめでとう。十一人目?」

「十一人目」


 俺が頷くと、ベルさんは酒瓶を出した。


「出産祝いだ。嬢ちゃんが酒を解禁したら、皆で飲め」

「ありがとう、ベルさん。……エルフ産?」

「お前とアーリィー嬢ちゃんのお祝いに、といったら、最高級の一品を用意してくれたよ」


 ベルさんはさらに笑った。


「さあ、覚悟しろよ。これから色んなところから、出産祝いが届くから」

「だろうね」


 こういう言い方もなんだけど、いつものことだ。伊達に十一人目じゃない。


「今度のは、ヴェリラルド王国側からの祝い品が多いだろうなぁ」

「あまり母親の身分で、差はつけて欲しくないんだけどね」


 そういうの、子供側としては、地味に傷つくからさ。俺が結婚する前から、シーパング王家の出ということになっていたから、アーリィー、アヴリル、エレクシア以外の妻の出産の時の祝い品も普通に届いていたけど。

 ただ先の三人の時は、その出身国の王族の子ということで、まあ祝い品の数が多い傾向にある。そして今回は、ヴェリラルド王国のアーリィーの子だから、まあ、そういうことだ。


 そこへ秘書官モードのラスィアがやってきた。軍服姿ではなく、秘書姿のダークエルフさんは、一礼した。


「失礼します。よろしいですか?」

「もちろん」

「まずは、ご出産おめでとうございます」


 ありがとう。挨拶は基本だね。ラスィアは持っていたデータパッドを操作した。


「先ほどから、ジン様宛てに、出産祝いの祝電が届いています。時間と共に増えていくでしょうね」

「耳敏い奴らだ」


 苦笑するベルさん。


「今度は何百件来るかな? ひょっとして四桁いったりして。各国政府、要人、貴族、エルフにアミール教会――他には?」

「同盟軍一同から、冒険者ギルド、ヴェリラルド王国南方領の各県庁とか」


 数える気にもならないね。


「もう公式発表されたのか?」

「いえ、これからですよ」


 ラスィアは談話室のテレビをつけた。シーパング国の国営放送局が、速報を流す……。シーパングでテレビ放送が始まって、何回目になるかな、俺関係の話がニュースになるのは。


 と思っていたら、記者会見場と、新聞記者や放送局の報道担当が、すでに集まっていた。え、生放送?

 カメラで大写しになったのは、エルダーエルフのニムだった。シーパング政府特別報道官――実質、俺関係の話の時に出てくるので、それだけで内容を知らなくても、俺絡みの話とわかったりする。


『本日は、また一つめでたい話題を皆さんにお届けいたします』


「笑えー。笑顔が足りないぞ」


 ベルさんが、別会場で起きているそれにヤジを飛ばす。当然聞こえるわけがないんだけど。


「あいつは昔から、笑顔が足りないんだ」

「そういう性格なんだよ。真面目な報道官っぽくて、いいじゃないか」


 こういう会見の場でヘラヘラしていないんだからさ。ある意味、適任かもしれないよ。


『我らが偉大なる神、ジン・アミウール様とその妻、アーリィー様の間に第三子が、無事誕生しました』


 モニターがピカピカと光って眩しい。カメラのフラッシュにお気をつけください……。というか、真面目なニムの写真をとりまくってどうしよって言うんだ。フラッシュ浴びまくりの彼女が、目を細くしている顔が、失礼ながら笑えて困る。


『お子様の性別は――?』

『お名前は、もう決まっているのでしょうか?』


 報道陣が先走って質問を飛ばす。ニムは静かに、と合図すると、何やら呪文のロールのようなものを持った。そしてそれを広げる。……何かどこかで見た構図。


『お子様は女の子です。名前は、アリーシャ様となります』


 でかでかと『アリーシャ』と書かれたその紙。見ている俺が恥ずかしくなってきた。

 先ほど以上のフラッシュがたかれて、画面がほとんど真っ白になった。ほんと、眩しい。

 ベルさんが薄ら笑いを浮かべる。


「さあさあ、今度は回線がパンクしないといいな」


 報道を見た者たちから、あっという間に祝いの電報が届くことになる。まさしく滝のように。

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