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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1777/1884

第1767話、神聖・魔法国の後始末


 シェールィ・カニェーツは投降した。


 彼女の口から、神聖・魔法国と、最近の怪獣騒動について、一気に話が進んだ。

 まず直近の行動だが、ゴーロス遺跡から脱出した一団は、シーパング同盟と対立を避けた。俺の言葉に従い、新天地を探してそこでひっそり国を立ち上げるつもりだという。


「本当か?」


 ベルさんが胡乱な目を向けてくる。俺は手を振った。


「あんたの脅しが効いたんだろう。怪獣に頼るのをやめた連中は、独力で建国を目指すんだとさ」

「それに反対する奴らは……」

「もう返り討ちにしましたからね」


 クルフは朗らかだった。


「聞けば、神聖・魔法国の者たちも、文明の遺産を利用するつもりでいたものの、直接、怪獣を復活させたわけではありませんし、シーパング同盟が粛正しなければならない『敵』ではないでしょう」

「『敵』になりかねない奴らは、もうやっちまったってか」


 ベルさんが鼻で笑った。

 細かなことを言えば、同盟が残党狩りや報復に動く理由はなくはない。怪獣を利用する気があったって、その怪獣で被害が出ているわけだし。


 割を食ったのは、同じく怪獣を利用しようと越境までやらかしたニーヴァランカ正当軍だけど、あれ、ネオ・ナチャーロが裏で糸を引いていたよね。

 シェールィは、情報操作して、そそのかしていたようだし、マールスティル師を殺害したことは、普通に殺人で立件できそうではある。


「シェールィねぇ……」


 ベルさんが、ちらとクルフを見やる。


「こいつの子孫ってのも気の毒な話だが」

「どういう意味ですか?」


 反論するようなクルフだが、ベルさんは流す。


「それはそれとして、あれは何でマール何とか氏を殺したわけ?」

「神聖・魔法国は、伝説の獣――怪獣の存在を、ニーヴァランカ正当軍にリークして、地上征服のために利用しようとしていた」


 俺は、彼女から聞き出した話を披露する。


「伝承の研究家であるマールスティル師は、正当軍に伝説の獣や予言について報告していたが、彼、そこでナチャーロの子孫たちが何か企んでいることに気づいてしまったみたいなんだ」


 どうも自分たちは利用されているのではないか。ナチャーロの子孫が動いているぞ、と。


「なるほど、気づいてしまったのか」


 ベルさんは、したり顔になる。


「それで口封じされちまったと。……かわいそうに」


 本気で思ってるベルさん? 他人事っぽい口ぶりに聞こえるけどさ。……いやまあ、他人事ではあるが。


「で、結局、この事件はどういう決着になるんだ?」

「神聖・魔法国は、手を引いた」


 そうなるとシーパング同盟が気にすべき問題は――


「後は怪獣が出てくれば退治する、というところだな」


 情報局経由の話では、ネーヴォアドリス領に出たオオサンショウウオもどきも、分身君の操る戦艦『バルムンク』が討伐したという。今のところ、次の怪獣は現れてはいない。


「まだしばらくは監視態勢と警戒は続けないといけない」

「封印が時効で解けて、出てくる可能性があるわけですね」


 クルフの言葉に、俺は頷いた。


「ネオ・ナチャーロの魔術師たちも、怪獣に乗っかっているだけで、その所在を全て把握していたわけじゃないからね」


 場所がわかれば、予め手を打てるんだけどねぇ。

 ベルさんが首を動かした。


「おい、クルフ。お前さんも、どこに怪獣が眠っているか憶えてねえのかよ?」

「封印をしたのは私ではないですから。全てを把握していませんよ」


 そりゃあそうだ。当人ならいざ知らず、直接やっていないことまで記憶していないか。


「しかし、怪獣を操るのも凄いけど、封印をした魔術師は、ナチャーロ文明でも相当な実力者だったんだな」

「どんな奴なんだ? それくらい知っているだろ?」


 ベルさんが尋ねれば、クルフは遠くを見る目をした。


「そうですね……。熱心なアミール教の信者でした。何でも先祖は、アミールの子だったとか、そんなことを言っていた気がします」

「あの時代に、俺の子孫なんていたか?」


 俺は苦笑である。この時代まで、こっちの世界では子供はいなかった。……引き取ったというか、面倒を見た子供たちがアポリト文明時代にいたけど。――まさかね。

 アポリト文明時代に残り、生き延びた子供たちの誰かの子孫だったかもしれない。それなら、俺を信仰するアミール教の信者ってのもわからなくもないし、その子孫というのを否定できなくなるわけだ。


「誰だったんだろうな……」

「どうかな、後世の後付けやねつ造って説もあるぜ? アミールの子をかたっておけば、箔がつくってんで」


 自称、誰々の息子、誰々の娘、先祖は誰々だった――有名人にはよくある話である。突然知らない身内が現れて、財産寄越せというのは悪いパターン。


「真相はさておき、その魔術師は、主流に逆らって、魔法が使えない者たちのために、怪獣を封印したり、戦ったりしたんだ。歴史に名が残らなかったのが残念な偉人と言えるんじゃないかな」


 ナチャーロが続けば、裏切り者、大罪人だったんだろうけど。運命とは、よくわからないものだな。

 文明崩壊のゴタゴタで、その魔術師に関する資料はなし。当然、ナチャーロ魔法国側の資料にも残っていなかった。犯罪人リストでも発見されれば、もしかしたらわかるかもしれないが。


「子孫の話が出たんで、ついでに聞くんですけど」


 クルフが口を開いた。


「シェールィはどうなるんですか?」

「あ? 昨日まで他人だったのに、気にすんのか?」


 ベルさんが片方の眉を吊り上げた。


「遠い遠い子孫っつっても、これまで何もしてこなかっただろう?」

「知らないことには、何もできませんよ」


 クルフは返した。それもそうだ。俺も、例の魔術師が子孫かもって聞いた時、血は絶対繋がっていないけど、ちょっと親近感というか同情みたいなものが芽生えたからな。


「どうなるんだろうね、彼女」


 シェールィ・カニェーツの問題。

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