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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1774/1885

第1764話、その差は絶壁より隔たりがある


 魔術師は、人より頭が良い。そういう認識が世にまかり通っている。

 実際、一部の例外を除いて、字が読めて、魔法や呪文に対する知識を学習し、実践する段階で、確かに一般人よりは勉強している。

 自然科学に対する理解力、計算についても、効率よい魔法、力のある魔法を行使する上で必要不可欠である。


 しかし、頭がいい、あるいは馬鹿というのは、言葉で言うほど単純なものではない。

 俺とベルさん、そしてクルフは、ネオ・ナチャーロの魔術師たちと戦っている。ゴーロス遺跡のプラットフォーム近くで。


「魔術師……」


 弓を番え、彼らは矢を放ってくる。剣など武器を手に向かってくる。ネオ・ナチャーロの魔術師は、魔法ではなく物理で殴りかかってきた。


「魔法とは」


 俺はサンダーブレードで、接近してきた敵を切り裂く。

 攻撃魔法を使わせたらもっと強いだろうナチャーロの魔術師たち。武器の扱いを見るにまったくの素人ではないが、熟練のベルさんやクルフ、俺から見ると残念ながら相手ではない。


 おかしなものだ。攻撃魔法は使わない。そんなルールがあるわけでもないのに、敵魔術師らは、こちらに攻撃魔法を使ってこない。

 一方でジャンプやダッシュの魔法は機敏に使ってくる。実に器用なもので、これらについては、さすが魔法王国の血筋。そこらの魔術師より遥かに優れている。


「だからこそ、なんだろうな」


 近接戦にも使える補助魔法も不足なく使えるから、魔術師にも関わらず武器を使って対応しようなんて考えになる。

 ベルさんやクルフなんていう超絶近接アタッカーの前に、突っ込むなんて自殺行為にも関わらず、ナチャーロの魔術師たちはそれをやった。


「馬鹿だ」


 己の力を過信して、相手の得意なフィールドに、あまり得意でない自分たちが飛び込む。思い上がり、慢心、他者を見下して生きてきた阿呆の末路。


「攻撃魔法を封じられると、魔術師は途端に弱くなる」


 大火力、距離をとって先制ができる戦闘型の魔術師。野戦で一般兵を相手にするには、まあ強い。防御魔法が使えないと、遠距離からの弓兵が弱点になったりするけど。

 ネオ・ナチャーロの魔術師たちが、攻撃魔法を使ってこない理由。それは俺たちが防御魔法を完備していて、攻撃魔法を使っても無駄だからだ。

 だから、彼らは本来得意ではない武器を使った攻撃で、俺たちを殺そうとしている。


「しかし、なんだな。攻撃魔法で封じられた結果、相手の得意レンジで戦うことになって返り討ちにあうってのは」


 兵法においても、もっともやっちゃいけないことなんだ。

 戦いというのは自分の得意を活かし、相手の苦手を衝くことが重要。それができれば大抵勝てるのだが、相手の得意分野で、自分たちが苦手な戦いをやるというのは、一番駄目なやつだ。

 頭ではわかっているはずだが、いざ実行という段階で、それをやってしまう。経験不足、勉強不足、傲慢ゆえの盲目と過信。


「ナチャーロ文明は、魔法を使えない民を人間として見なかったらしいが、その後継者たちがこのザマでは、先祖らも泣いているのではないか?」


 アースウォール。地面から岩の壁を生成し、踏み込んできた敵を空へと持ち上げる。突然盛り上がり、狭い足場が揺れて、ナチャーロの魔術師はバランスを崩して地面に落ちてくる。

 ……ベルさんやクルフだったら、落ちるまでバランスを取ろうとして踏ん張らず、さっさと跳躍系の魔法を使って蹴って離脱しただろうな。

 現状維持の姿勢。ここでも経験の差が出たな。


「岩石落とし」


 敵の真上に魔法で巨岩を生成、それを重力に任せて落とす。何人かは防御魔法を使い、また何人は反応できず潰れた。防御魔法を使った者たちは巨岩の重量を支え、完全に足が止まってしまう。さらに何人かは重みに耐えられず、防御魔法を張ったまま押しつぶされた。


「ものは使いよう。魔法も応用」


 呪文書のテキスト通りに受け取っていると、こういう変化球に対応できなくなる。

 勉強ができる奴にも二種類いて、表面をなぞるだけのテスト優等生と、真に理解し応用できる優等生だ。


 後者は、よく天才などと言われることもあるが、俺に言わせれば、天才とも違うと思っている。優れていても、真に天才かと言われると、その域ではないというか、上手く言葉では表現できないけど、感覚と違うと判断できるくらいは違う。


 俺の足元に蔦が伸びてきた。補助魔法で、相手の足を取り、動きを封じようというのだろう。

 しかし防御魔法が、その接触を阻む。見えない壁が侵入を拒んでいるのだ。


 攻撃魔法が効かない時点で、相手に触るような魔法も通用しない。だからアンチマジックウェポンを使って、防御魔法を崩そうと殴りにきている――というのが、ネオ・ナチャーロの魔術師たちの戦法だ。

 苦手な物理武器で、苦手なインレンジを挑む理由は、つまるところそれ。なまじ防御魔法を消せる武器なんて持っているから、こんな犠牲の多い戦法をとっているわけだ。結果的に自分たちの首を絞めているんだけど、それでも実行するあたり、頭が固いというか、固定概念に囚われているというか。


「落とし穴」


 建物の屋上に穴を開け、不意を衝かれた魔術師が一人、屋内に落ちていった。

 武器を手に突っ込んでいたから、足元が疎かになっていたんだろうね。俺を武器で刺すことばかり考えて、脳内の意識がそちらに行ってしまったのだろう。普通に魔法戦をやらせていたら、こんなヘマはしなかっただろうに。


 弓を引き絞った魔術師が、矢を飛ばしてくる。これでこちらの意識を引き寄せ、近接組が攻撃しやすいようにするか、あるいはこれ自体にアンチマジック効果があるかもしれない。

 まあ、いいさ。意識がそっちへ流れたのは事実だ。魔力で操作、矢の軌道を変更、否、ねじ曲げる!


「ぐえっ!?」

「うわっ!」


 飛来した数本が向きを変え、俺に迫っていた近接魔術師に突き刺さった。アンチマジック付きだったみたいね、ニシシ。

 指先で横線一本を描くように動かし、弓使い魔術師たちを切断!


 敵の周りの魔力を使ってのエアカッター。防御魔法の後ろに攻撃魔法を生成させれば、その防御も無視できる。特殊な武器など使わなくても、防御魔法は突破できるんだよ。

 こんなやり方は、教科書には載っていないだろうけどね。

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― 新着の感想 ―
源平の合戦に、 ATやASを持ち込む様なものですねぇ。
IntelligenceとWisdomは違うのだよ(゜д゜)
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