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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1767/1885

第1757話、大皇帝と王妃の子孫


「どうして、私の名前を使ったんです?」


 クルフ・ラテース――かつてディグラートルを名乗った彼は、そう言った。

 シェールィ・カニェーツとの風の噂魔法具での念話通信が終わり、さあ連絡艇から降りましょうというところである。


「いや、相手がナチャーロ文明の最後の王妃様の名前を持っているからね。身分的には、大皇帝の名前を出したほうがいいかな、と」

「あなただって、公爵で南方侯爵で、王様でしょう?」

「そうは言うが、君は歴史の教科書に乗るレベルの有名人だからね。ネームバリューじゃあ、俺より上でしょ」


 主に悪名で、歴史に名を残す方だけどね、クルフ君の場合。シーパング同盟では俺も名前を知らない人がいないくらいの有名人だけど、世界レベルの悪名には勝てないんだよねぇ。


「え、どっこいじゃね、お前さん」


 ベルさん、それはないよ。


「何はなくとも、かのディグラートルとくれば、威圧感はあるだろう。今、関係が怪しいシーパング同盟の英雄魔術師だと、敵対的行動をとられかねないし」


 今回の怪獣騒動の裏で、神聖・魔法国が関わっているなら、シーパング同盟はほぼ敵視されているだろうからね。事実、そうなら俺たちにとっても潰さなきゃいけない組織ってことになるし。

 クルフは振り返った。


「では、私は姿を変えた方がいいですか?」


 貫禄のある大皇帝の姿に。……そうだな。


「俺は若い時の姿を知っているから構わないけど、周りはディグラートル大皇帝といえば高齢な印象だろうし、このままだと、あからさまに嘘だと思われるかもな」

「では――」


 クルフは七年前の姿になった。ベルさんは言う。


「通信はジンが話していたけど、クルフに喋らせるのか?」

「どうなんです、団長?」


 大皇帝の姿になったはいいが、さっきまでシェールィと通話していたのは俺だもんな。


「俺が話すよ。声の感じですぐにわかるだろうけど」


 ということで、俺たちは連絡艇を降りた。

 石造りの遺跡。周りは草木が生い茂り、ザ・秘境という雰囲気をまとっている。遠くで鳥のギャアギャアという叫び声が木霊した。


「地下遺跡とは、また印象違うよな」


 ベルさんが辺りを見回す。ニェードラも廃墟都市だったけど、あちらはそれでも大都市、こちらは古代文明の遺跡っぽい。パッと見だと、同じ文明とは思えないかも。


「よく見れば、意匠など細かな点で類似がありますよ」


 クルフは崩れかけの建物を指さした。


「まあ、ナチャーロ文明の最盛期よりも古い時代の遺跡のようですけどね」


 話しているうちに、建物の一つから男女が現れた。いずれも白いマントを身につけているが、あれが神聖・魔法国のユニフォームなのかね。


「あれか?」


 ベルさんが言ったので、俺は首肯した。


「シェールィ・カニェーツだ」


 中央の女性は、ニーヴァランカの砦内で見かけた。ナチャーロ文明を研究していたマールスティル氏の弟子をしていた彼女だ。

 後ろの二人は、部下か護衛といったところだろう。他には……建物や障害物に隠れているが、こちらを監視、包囲しようとしているのが何人かいるな。


「ようこそ、自称クルフ・ディグラートルさん」

「シェールィ・カニェーツだな?」


 クルフが重々しい声で告げた。


「なるほど、カニェーツ・ナチャーロ王妃の面影がある」

「!?」


 あからさまにシェールィは驚いた。内容もそうだが、驚いた理由は、クルフが発したのがナチャーロの言葉だったことも関係しているだろう。なお、俺はベルさんの能力を介して、ナチャーロの言語も習得済だ。

 面食らって固まってしまったシェールィを、控えていた男が正気に戻させる。促され、シェールィは咳払いした。


「先制攻撃だったのなら、大成功ね。何から突っ込めばいいかわからないわ」


 そりゃそうだ。遥か昔の人物であるナチャーロ文明最後の王妃の名前を出されても、シェールィは直接会ったこともないから、真に受けていいのかも微妙なところだ。大体、自称クルフ・ディグラートルが何故、王妃を知っているのか、という疑問も起きたはずだろう。当に死んでいる過去の人物だから。


 出任せにしては、名前は正確な上、ナチャーロ文明の言葉を使うなど、込み入り過ぎて理解できなくなるのも無理はない。

 そもそも、公式では死んでいる元大皇帝が現れたこと自体、すでにおかしいのだ。


「死んだはずの大皇帝が現れた上に、ナチャーロ文明の王妃を知っている……。出鱈目(でたらめ)にもほどがあるわ」

「では、出鱈目ついでにもう一つ、教えておこうか」


 ねえねえ、クルフ君。話すのは俺って言ったよね? 挨拶終わったらなら、こっちに話を振ってくれないかな?


「君がナチャーロの子孫であるように、私にもかつてあの時代を生きた者の名を受け継いでおる。……クルフ・ラテース、そう言ったらわかるかね?」

「っ!?」


 シェールィどころか、部下二人も顔面が強ばった。というか、素速く棒状の武器を取り出して構えたのだ。

 おいおい、クルフよ。本名を名乗ったら、何か相手を刺激してしまったようだぞ……?


「クルフ・ラテースだと!? そうか、お前はその子孫かっ!」


 シェールィのあなた呼びがお前になった。いや、念話通信の時からそうだったか。


「よくもぬけぬけと! ナチャーロを滅ぼした元凶め!」


 神聖・魔法国の人たちがいきり立つ。クルフが文明崩壊に手を貸したって話は聞いていたけど、彼女らの口ぶりでは、指名手配レベルでやらかしているようだった。


 ……なんてことバラしているんだよ! ディグラートルのままのほうが、まだマシだったのに、話し合いの前に、すでに戦闘寸前みたいな空気になっているんですけど!


「あの反乱は、私が手を出さずとも、いずれナチャーロを滅ぼしていただろう。だが今の君があるのも、あの頃の私が王妃を見逃したから、でもあるのだぞ?」

「なっ……馬鹿なことを!?」


 火に油を注ぐようなことになっているけど、クルフ君。爆弾発言が、さっきから続いている気がしているんだけど、気のせいじゃないよねー?

 本当の話? それとも嘘八百?

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