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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1765/1962

第1755話、ゴーロス遺跡へ


 捕虜君――ルィーナクという男に対して、ベルさんが尋問したところによると、彼らは『神聖・魔法国』という名の魔術師の集まりだそうだ。

 先祖がナチャーロ文明の人間で、その血を引く魔術師たちの結社らしい。


 魔術師は世界にとって尊い存在であるとし、魔法が使えない者は、人の形をしたクズなのだそうだ。

 ナチャーロ文明の悪いところを受け継いでいる彼らは、実際に見たこともないかつてのナチャーロ文明こそ理想の世界とし、新たなナチャーロ国を作ろうとしているらしい。


 ネオ・ナチャーロ。

 略したら違う意味で、ヤバいものになりそうだ。それについてはノーコメントとしておこう。偶然って怖いなぁ。中身はそれとは別物なんだろうけどさ。


 シェールィ・カニェーツのことをルィーナクに聞いたら、彼女はネオ・ナチャーロのお姫様らしい。文明最後の王妃、カニェーツ・ナチャーロの血筋ということになっているという。

 彼女はネオ・ナチャーロのリーダー格のひとり、いう話だった。


「いつの時代でも人が考えることで、同じなんだな」

「先祖や故郷を信じ、それを復活させようというのは、よくある話ではあります」


 クルフは空中艇を操縦しながら言う。かつての大帝国製連絡艇を、元大皇帝様自身が操縦する。……絵柄が凄い。


「そういう団長だって、ご自身で操縦されるじゃないですか」


 そうクルフは言い返すのである。魔人機だって戦闘機だって、時に戦艦(バルムンク)すら操る。アドヴェンチャー号を乗り回していたのは、お姫様や女王様を伴侶にした異世界の魔術師である。


「確かに人のことは言えないな」


 俺は振り返り、補助シートに固定されているルィーナクを見る。


「そういえば、神聖・魔法国はこのフネをどこで手に入れたんだ?」

「商人から、手に入れた――」


 無表情、棒読みな感じでルィーナクは答えた。……ベルさん、やり過ぎじゃないかね。


「最近の商人は、連絡艇を売り物にしているらしいな」

「こんな調子で、アポリト文明時代の戦闘機や魔人機も売られているんですかねぇ……」


 クルフは世も末だ、という顔をする。

 それはさておき、ベルさんの尋問によってルィーナクから聞き出した話に戻そう。

 ネオ・ナチャーロは、かつての時代の遺物である怪獣が復活し、暴れて今ある世界を破壊するのを待っていたそうだ。

 彼らは、怪獣を制御する術を持っていて、一通り怪獣が暴れた後、自分たちの支配下において、その後、自分たちの国――神聖ナチャーロ魔法国を建国するつもりらしい。


 多くの民を滅ぼしておいて、魔術師だけで国を作る……というんだけど、何というか、それやり方間違ってない、と突っ込みたくなるね。

 何というか、視野が狭い、極端な奴をトップに置くと上手くいかないの典型というべきか。この手の極端な、優れた者だけいれば理想の世界が作れると思い込んでいる系って、いざやってみたら途中で、挫折・自壊しそうに思えるのは気のせいだろうか。


 本当に優秀な奴なら出来てしまうのかもしれないが、たぶん真に優秀な奴って、自分で考えているより遥かに少ないと思う。

 俺、私ならできるって思ってる奴は、その段階ですでに駄目なんだろうな。中途半端な頭でっかちってやつだ。こういう奴は声がでかい上に、何だかんだ責任取らないし、しくじりを人のせいにする。


 おっと、話を戻そう。

 ルィーナクの話だと、大陸各地にある怪獣の同時復活について、ネオ・ナチャーロの連中は、『崩壊の日』と呼び、その日が来るのを待っていたんだそうな……。


 つまり、同時多発の怪獣出現については、ネオ・ナチャーロは直接関与はしていないという。ある程度、調べてはいたものの、自分たちで封印を解くことはできなかったそうだ。封印を施した魔力が切れて、解かれるその日までひたすら待ち続けていたらしい。


 この件をルィーナクから聞き出していた時、やたらクルフの目が泳いでいた気がする。封印について、何か知ってるような感じだ。こいつ当事にいた人間だから、もしかしたら怪獣の卵封印の場にいたりしたとか……? だとしたらあの予言についての彼の推測も、推測というかほぼ正解なんだろうな。

 ともあれ、封印が時効を迎えた結果、各地で怪獣が出現し、ネオ・ナチャーロはその日がきたと活発に動き出したというわけだ。


 よくもまあ、忍耐強く数千年も待ち続けたものである。崩壊の日を迎える前に寿命を迎え、子孫に延々とこの話を引き継がせてきたかと思うと、何とも言えない気分になる。


「――それで、お前たちがニェードラにきた理由は?」


 俺たちが、ナチャーロ文明の都市巡りをするなんて公にしたおぼえはないし、行き先まで知っているのは、シーパング情報局など限られた者たちだけだ。


 にもかかわらず、通信妨害に、魔力スキャン回避の特殊スーツ装備で、俺たちを探しにきた。怪しいじゃないか……。


「我々が来たのは、文明の資料探しのため」


 ネオ・ナチャーロは、かつてのナチャーロ文明の資料を現在進行形で発掘を続けているのだという。

 そして定期的にニェードラ他、古代遺跡を巡っているのだが、そこで俺たちが侵入しているのを発見。資料流出を阻止するため、通信妨害をかけて、こちらを捕まえるか、あるいは処分するつもりだったらしい。


 何とまあ、間が悪かったな。かち合うなんて。

 俺たちや情報局から、情報が漏れたわけではないのを聞いて、ひとまず安心した。ついでに言えば、ルィーナクらは、俺たちがどこの誰か知らなかった。誰か捕まえて、何者か探るつもりだったらしい。逆に捕まったな。


 そうこうしているうちに、ネオ・ナチャーロの秘密拠点――ゴーロス遺跡に到着した。

 旧ナチャーロのローク大森林地帯にある遺跡。その入り口前は切り開かれ、空中艇用の着陸スペースになっていた。……特に着陸パッドやその手の装備など人工物は遺跡以外はなし。


「静かですね」


 斜め下方の視界を気にしつつクルフは、地上の様子を見る。ベルさんがシートに手をかけた。


「用心しろよ、いきなりぶっ放してくるかもしれないぜ? オレたちは招かれざる客だからな」

「この連絡艇に防御設備はないですよ。戦闘用ではないんですから」

「おい、そうなのか?」


 ベルさんがルィーナクへ顔を向ければ。


「防御用シールドの発生装置が、搭載されている……」

「あるとさ」

「……この見慣れないスイッチですかね」


 クルフがシールドを起動する一方、俺は風の噂魔法具のクリスタルを手にとった。


『聞こえるか、シェールィ。こちらは、ゴーロス遺跡に到着したぞ。見えるか?』


 念話を送って、こちらの来訪を伝えてやる。さてさて、どう対応してくるかな……?

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