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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1731/1961

第1721話、問題はどこにでも


 旧連合国のニーヴァランカから、ネーヴォアドリスへ武装勢力が侵入した。

 この報告は、同盟軍を経由して、俺のもとへ届いた。


「どういうことなの?」


 寝耳に水である。ディアマンテ・コピーからの報告に、俺は突っ込まざるを得ない。


「いやね、滅びた旧連合国内で、次の王様の座を基礎って自称王様デスマッチやっていたのは知っているよ? でもそれはあくまで自分たちの国のキングオブキングを目指した戦いであって、よその国に喧嘩を吹っかける所じゃないでしょ」


 まず自分のところの地盤を固めるのが先で、外征している余裕はないはずなんだ。


「それとも、俺たちが知らないところで、ニーヴァランカは統一された?」


 王様が決まったので、国は一つになりましたって言うのなら、考えたくはないが、よそ様に戦争もわからんでもない。


『いえ、まだ一つの勢力に統一はされていないと諜報部は報告しています』

「だろうね。統一されたにしても、ネーヴォアドリスへの侵攻が早すぎる」


 国の勢力をまとめたとしても、後始末や今後の運営などやることがあるもので、じゃあ戦争しに行きましょうは無理なんだ。

 考えれば考えるほど、妙な話だ。大陸の東で起きた出来事、で片付けるには、ちょっと気持ち悪いんだよねぇ……。


「ネーヴォアドリスは?」

『国境警備部隊が鎮圧したものの、それなりに被害が出たようです』


 ディアマンテ・コピーは資料を読み上げる。


『部隊の増員が図られるようで、魔人機大隊を二個大隊、国境に増強するとか』

「……戦争でもするつもりかねぇ」


 ちょっと過剰じゃないかと思わないでもないが、それをやるということは、侵入したニーヴァランカ勢は、魔人機を有する部隊だったのだろう。


「ますますわからんな」

『ネーヴォアドリスがですか?』

「いいや、ニーヴァランカから攻めてきた連中だ」


 言ってはなんだが、同盟に参加した旧連合国の中で、一番強力なのがネーヴォアドリスである。あの辺りでは最強の戦力を有するネーヴォアドリスに喧嘩を売るのも問題だが、それにそれなりのダメージを与えたニーヴァランカ勢も、ちょっとおかしい。


「ニーヴァランカの資料を」


 俺は、資料を取り寄せる。

 かつては連合国の中で、ナンバー2と言われた列強だったのがニーヴァランカだ。盟主であるウーラムゴリサ王国とはライバルの関係にあったが、陸上兵力の規模においては連合国一と言われていた。


 が、ディグラートル大帝国を相手にすれば、歩兵は互角でも、ゴーレムや機械兵器を前にしては苦戦を強いられた。防御陣地にこもった防衛戦には定評があったニーヴァランカは、同盟軍と接触する前も何とか踏みとどまっていた。

 しかし、本気を出した真・大帝国によって滅ぼされてしまった。……というのがこれまでのニーヴァランカ。

 今はどうなっているのかというと――


「大帝派……何これ?」

『ニーヴァランカが形成される前に、存在した王朝の系譜のようです。ヴァランという民族が中心のようです』

「ふうん……。これが最大勢力か。対抗しているのが北方連盟、鉄斧同盟、……正当軍?」

『ニーヴァランカの前政権の残党勢力です。ニーヴ・ランカ民族が中心であり、支配層だったところです』

「シーパング同盟と交流があった政権に近いのが、この正当軍か」


 国を統治していた中央は、真・大帝国によって殲滅されたから、直接関係があるかと言われるとないけど。


「で、この四つの勢力が、主にぶつかっていたわけか。……ネーヴォアドリスに仕掛けてきたのはどこの勢力なんだ?」

『現在、確認中であるのですが、もっとも可能性が高いのが正当軍、北方連盟、鉄斧同盟です』

「うん? 連合した?」

『確証はないのですが、正当軍の魔人機に北方連盟のシンボル、さらに鉄斧同盟の武器が用いられていたようで』

「それは……調査待ちにもなるか」


 水面下で同盟を組んでいた、ということなのかな、それは。


「ネーヴォアドリスに喧嘩を売った理由もわかっていないんだよね?」

『はい」


 そこのところは、各勢力が普段何を言っているか、どう行動しているか、というところから探っていくしかないだろうな。よそにちょっかいを出さなくてはいけなかった理由があるんだろうけど――


「とりあえず、ネーヴォアドリスは国境の防備を強化するみたいだが、状況によっては、ニーヴァランカへの逆侵攻もあるかもしれないな」


 間違えましたって規模じゃないんだよな。ニーヴァランカ側も、攻撃の意思を持って軍を越境させた。

 大帝国と断固戦ったネーヴォアドリスのこと。明確な意思を持って売られた喧嘩は買わないなんてことはないだろう。

 さっさと妥協点を見出さないと、本格的な武力衝突――戦争に発展する。


 と、本来ならこれは当事者たちの問題で、俺や他所の国の人間がああだこうだ言うものでもない……と言いたいところだが、事と次第によっては、こっちも干渉せざるを得ない。

 何せ、ネーヴォアドリスはシーパング同盟の一員だ。


 そして今回、先に手を出したのはニーヴァランカ側だ。同盟がこれを『侵略行為』と断定し、ネーヴォアドリス側から申し出があった場合、『同盟軍』が防衛出撃することになるのだ。

 ただでさえ、得体の知れない超巨大卵の件で、同盟の判断を仰ぐことになりそうなのに……。嫌なタイミングだね。


『閣下』


 ディアマンテ・コピーが急に声を出した。


『ただいま、同盟軍宛てに緊急救援を求める通信が入りました』


 緊急救援? ネーヴォアドリスの件……にしては早過ぎるな。まだ緊急っていうほどではないと思ったが。


『救援の発信源は、ゴーラト王国です』


 大陸西方――連合国とは逆の位置にある国だな。ヴェリラルド王国なども西方諸国などと言われるが、さらに西にあるのがゴーラト王国だ。魔物領域が多い大陸のさらに西方ではあるが、スティグメ吸血鬼帝国が現れた時に一度滅ぼされかけた。

 アンノウン・リージョンを塞ぐついでに、シーパング同盟が駆けつけ、同地を解放したことが縁で、同盟国入りしたのがゴーラト王国である。


「ゴーラトで何があったんだ?」

『正体不明の巨大生物が出現したとのことです。至急、軍の派遣を要請するとのこと」

「正体不明の――」


 巨大生物、とな? おいおい、こちらはレヴィアサンの卵云々で、ちょっと問題になりかけている時だぞ。

 そこにきて謎の巨大生物とか……。あるんだなー、怪獣映画みたいな話が。

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