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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1698/1884

第1688話、意外な決着?


 これはどういうことなんだろうな?

 剣戟が聞こえる方にいけば、王座の間について、そこで美少女剣士がベルさんと戦っていると。

 フィンさんがいて、何やらアンデッドが6人いて、先に行かせたアリス・ロッターがいたから、俺はのんびり近づいて声をかける。


「あれは何をやっているんだ?」

「あ、ジン殿」


 生真面目騎士さんが振り返る。


「サンドルは……?」

「元の世界に帰してきたよ」


 影使い、暗殺者だという異世界勇者サンドル。……まあ、彼は勇者という肩書きが、反吐が出るほど嫌っていたようだけど。


 彼の世界は町の他は荒野ばかりという、中々殺伐としていた。治安は、あまりよくなかったね。そんな中で暗殺者というのは、どんな扱いなのかと言えば、報酬次第で殺すお仕事ということで、サンドル自体は金のない殺しは、徒労なのでしないというスタンスだった。


 ただ、あまり堂々と公言できる職業というわけでもないらしく、それ故、こちらの世界で勇者などと言われるのが、重度のストレスだったそうな。

 閑話休題。


「で、あの美少女さんは?」

「あれがクロウ。反乱を企てた元勇者です」


 アリスは答えた。へぇ、あれがそうなのか。まさかこのような容姿の子とは、まったく想像していなかった。名前だけではわからないものだな。


「それで、ベルさんとやりあっているのは大したものだけど、説得の方は……この質問は愚問かな?」

「そうだな」


 フィンさんが返した。


「元の世界には未練がないそうだ」


 そうかぁ……。ベルさんとフィンさんが説得して駄目だったというなら、俺が話しても駄目かな。


「結局、あの子は何が不満で、反乱を起こしたんだ?」

「さあね」


 そっけなくフィンさんは軽く方をすくめた。えぇ……。


「ちゃんと話したんじゃないのか?」

「こちらの要求は伝えたさ。私の屋敷から奪ったものの返却をね。拒絶されたが――あぁ、説得自体はベルさんがやったよ。だが、クロウは帰らないと突っぱねた。これで充分だろう?」


 誠意ある説得とは、思えないのは気のせいかな? 何となく投げやりに呼びかけたりしてない? クロウがどう返事しても、あまり関心がない感じとか。


「……うーん」

「ジン殿?」


 アリスが心配そうな顔になる。俺は、まじまじと彼女を見つめた。


「こっちは何か割って入るのも(はばか)られる空気なんだよな」


 ベルさんと五分五分――まあ本気を出していないんだろうけど、それはそれで楽しそうだし、クロウの方も完全に顔が戦いを楽しんでいる者のそれだ。殺し合いの場なんだろうけど、邪魔するのも空気が読めないていない雰囲気なんだよな。


「アリス、先に君の世界に帰ろうか」


 ベルさんもフィンさんも不死だし、俺がいなかったから死ぬとかそういうのがない以上、ただじっと待つのも芸がない。


「表の反乱騒動は、ほぼ終わったみたいだし、君がここにいても、もうすることがないでしょ」


 後はクロウをどうにかすれば、おしまい。


「いや、それは……」


 アリスは戸惑った。考えながら、彼女は言う。


「いきなりが過ぎるんだ……。いや、もちろん元の世界には戻りたい。ただ、お世話になった人たちに挨拶もしていないのは――」

「それもそうか」


 何というか、この世界の人とも良好な関係を築けていたんだろうな、アリスは。元来の真面目さなのだろうが、礼儀も欠かさないのは騎士様なんだろうね。

 しかし、そうなると彼女、反乱の後始末とか手伝って、数日動けないパターンになりそうだ。……それはそれでいいんだけど。


 と、背後からそれなりの人数の足音が聞こえてきた。金属の擦れる音もしていて、騎士や兵隊だろう。

 表の反乱がほぼ鎮圧され、城内の反乱勇者も片がついたから、こちらにようやく駆けつけられた、というところか。


『陛下ーっ!』

『陛下はご無事かっ!?』


 国王の安否を確かめにきたか。そりゃ城の兵たちは、反乱勇者に一掃されていたから、城外から駆けつけた者が慌てているのもわかる。

 そういえばここ、いかにも王の間っぽいけど。


「王様って?」


 俺が尋ねると、アリスが無言で、一点を指さした。……あらまー、頭と胴体がお別れしている。これは……マズいな。


「こんなところを城の兵士たちが見たら――」


 ベルさんとクロウの戦いに割り込んで、面倒なことになりそう。王を殺されれば、逆上もしよう。……仕方ないな。


「フィンさん、撤退しよう」

「うん?」


 仮面のネクロマンサーが首を傾げるのを余所に、俺は声を張り上げる。


「ベルさん! 時間切れだ! 一旦、引こう!」

「あ?」


 ベルさんが、クロウの刀を弾きながらこちらを一瞥した。俺は続ける。


「城の兵たちがきた! 邪魔が入って、もう戦闘どころじゃなくなる!」

「あぁ、そういうことか。仕方ねぇな」


 暗黒騎士姿のベルさんが、後方に飛び退いて、俺たちのところまできた。フィンさんは言う。


「いいのか、ジン?」

「フィンさんの用件も伝えた上で、決裂したんでしょう? じゃあここに留まっても仕方ないよ」


 そもそも、俺たちフィンさんの取り立てのお供にきたのであって、反乱がどうこうなんて異世界人である俺たちには関係ない話だし。一般人が犠牲にならなくなったなら、もう干渉する必要もないわけで。


「ジン殿! いいのですか!?」


 アリスが驚きつつ言った。


「クロウは、今回の反乱の首謀者なんですよ!? 見逃すのですか!?」

「知らん。それは本来、この国の人間がどうこうする問題であって、俺たちには関係がないんだ。……もちろん君にとってもね」


 俺は、異世界召喚された被害者を元の世界に帰してあげようという思いで、ここにいるのであって、それ以外のことはこの世界の人間がどうにかしてくれ。


「ということでクロウ! 我々はここらでお暇させてもらうよ」

「えぇっ、ちょっと待ってよ。ここまで戦って、それはないよ……」


 完全に戦闘狂のそれ。容姿も相まって、遊園地から帰るのを渋る子供みたいな態度だ。これで反乱を実行している勇者だというのだから、言葉もないね。

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