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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1641/1884

第1631話、戦いが終わったということは……?


「ようやく、戦争は終わったな」


 そう言ったジャルジーは大変機嫌がよかった。

 戦争自体は、少し前に終わっていたんだけどね。反乱軍の後始末まで終わって、ようやく一息というところ。派手なドンパチももうないと思いたいね。


 細かなところで言えば、数人、十数人単位の残党はいるだろうし、それくらいになると、反体制派として突然湧いて出てくるから、正直キリがない。

 そこまでなら新政権の治安維持部門で、何とかしてもらいたい。これ以上は、シーパングや同盟国の過干渉になるからね。


「これで、オレもエクリーンをバンバン抱けるぞ」

「おいおい、ジャルジー」


 偉いさんの酒の席――といっても、俺とアーリィー、ベルさん、そしてジャルジーの四人で飲んでいるわけだけど。……頼むぜ、兄弟。アーリィーの前でそういうのやめろよ。


「なんだ、お前さん、遠慮してたのか?」


 ベルさんが面白半分の顔で言ってきた。ほらみろ。こういう人の夜の話が大好物な魔王様だ。


「ポータルで、ちょくちょく帰ってたんだろう?」

「まあ、そうなんだがな、ベルさん。しかし、ポータルはいい。出征しながら、こう毎日帰って故郷の妻と会えるのだから」


 全員が全員ってわけじゃないし、そこは公爵閣下、次の国王陛下としての特権ではある。ただ、戦場に赴く者にとっての不安事は、国に残した家族や愛する人のこと。逆もまた然り。……エクリーンさんの方も心配しているんだぜ?


「あれで、可愛いんだよ。ベッドだととても甘えてくるんだ」

「へぇ……」


 それ毎日会えるからこその弊害(へいがい)かもしれないな。今日は帰ってきたけど、明日は帰ってこないかもしれない。今日が最後かもしれないから、目いっぱい愛そう――そういうものなのかもしれない。

 解析度が高いのは、アーリィーがそうだから。俺もそうだけど。近くにいるからこそ、ふといつもの『行ってらっしゃい』が最後かもしれないなんて、思ってセンチな気分になるわけだ。


「あのエクリーン嬢がねぇ……」


 ベルさんがニヤニヤしている。


「ツンツンとは言わないけど、結構すました顔をしているからな。……へぇー、ああ、そう」

「お、おい、ベルさん。何を考えているが知らんがやめてくれ」


 ジャルジーがたまらず叫んだ。言い出しっぺはお前だろうに。

 でもまあ、ほぼ毎日会って愛を確かめあえるのは悪いことではない。出征中の心配事の一つに、相手が別の異性と関係を持ったりすることがある。戦場にいる方は生の実感が欲しくて、故郷にいる方は寂しくて。

 でも、毎日会っていれば、そのどちらの可能性もほとんどなくなる。


「それで、そっちはどうなんだ、兄貴とアーリィーは?」


 ジャルジーが話題を逸らして、こっちにぶん投げてきた。おいおい、野郎だけの集まりならともかく、アーリィーがいる前でぶっ込むか?


「そっちもヤってるんだろ?」

「こらこら」

「まあ……そうねー」


 アーリィーは視線を彷徨わせた。


「でも、戦争も終わったし……そろそろもらっても、いいのかな?」


 ……。


「おー」


 ジャルジーとベルさんがニヤリとした。


「熱いねぇ」

「これは兄貴も力入れて励まないとな」

「力入れるところは下腹部だぞ」


 下ネタ野郎どもめ。閉口する俺だけど、アーリィーは満更でもない様子。これは相当待たせていたってことだよな。


 戦争が終わるまでは、子作りは控えようねって約束だったけど、その戦争も終わったということで、いつでもオーケーということなのだろう。

 仕込むのはいいけど、その前に結婚式をあげておかないと、体面がよろしくないだろうね。できちゃった婚は、貴族社会じゃよろしくないんじゃなかったっけ?



  ・  ・  ・



 制限がなくなった。でもやることはほとんど変わらない。一部、大事なところは変更されたが……まあ、大変燃え上がりましたよ、ええ。

 婚約してなかったら、別の意味で大炎上だぜ、ってね。


 生きる活力をもらい、夜は明けて朝がきた。そこからはお仕事モード。

 反乱軍を討伐し、イースタスは解放された。ここに長く留まる必要はないので、俺たち同盟軍は、現地に守備隊を置いて、艦隊は帝都に凱旋した。

 降伏した反乱軍兵は、新政権の手に委ねられ、処分が決まることになる。これについては、新政権の仕事だからね。


 俺は、その間にも偉い人周りをした。転移魔法で、要人に顔を見せてご挨拶。

 まずは何はなくとも、エマン王のもとへ。南方侯爵を賜り、ヴェリラルド王国の貴族をやっている以上、直接の上司がまず最初だ。

 エマン王は、ウィリディスの白亜屋敷にいた。完全なプライベートである。


「まずは、ご苦労だったな、ジン」

「痛み入ります」

「反乱軍の討伐も済んだらしいな。さすがに行動が早い。最初は、何もお前がやらずとも他の者に任せればよいのに、とは思ったのだがな。思えば、お前はそういう男であった」


 エマン王は鷹揚だった。


「南方での反乱の時も、長引くと思われた鎮圧をわずか二日でやり遂げた。そう、お前がやったほうが早い、というやつだ」

「面倒は早く片付けたかったんですよ」


 連合国の裏切り。あれで戦争が3年近く伸びた。死ななくても済んだ人間の数が数十万人、ひょっとしたら数百万人を超えたかもしれないと思うと、やはり当時の連合国は大戦犯だろう。


「大帝国との戦争となった時……」


 エマン王は遠い目になった。


「正直に言って、次の年を迎えられる予感はまるでしなかった。かの大国に比べれば、我が国は西方諸国の一つに過ぎない。しかし結果は、大勝利という形で終戦を迎えることができた」


 王は俺に向き直った。


「お前のおかげだ、ジン。この王国の民すべての代表である私から、礼を言わせてもらう。ありがとう、ジン・トキトモ」


 そう言うと、エマン王は静かに俺に頭を下げた。義理の父にこうまでされてしまうと、大変恐縮してしまう俺であった。

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