第1629話、反乱軍艦隊の最期
指揮官であるエアガル元帥は、おそらく参謀長であるグリーンヴェルとやらによって排除された。
グリーンヴェルは、青エルフクローンによる体当たり自爆を含めた最終攻撃を命令していた。とっさに俺が、反乱軍の全通信チャンネルに向けて、参謀長に命令権はないと流して、時間稼ぎをしたが――
「まだ、体当たり自爆はほとんど見られないな」
戦艦『バルムンク』の艦橋にいて、シャドウフリートに敵旗艦本隊への攻撃を命じた俺だが、思いがけず反乱軍が指揮権継承に手間取っているらしい。
命知らずの青エルフクローンは命令されれば、突撃自爆も平然とやる。それを仕掛けてこないのは、まだ正規の命令がくだっていないからだ。
俺の適当時間稼ぎが、まさかここまでグリーンヴェルの足を引っ張ることになるとはね……。
「逆に、組織立って体当たり自爆を始めたら指揮権継承が行われたということなんだろうな」
「それまでには終わらせたいですね」
ラスィアの発言には俺もまったくもって同意。
「まったくだ。単機ならともかく、複数で同時にかかられたら、一部の艦以外は防ぎ切れないだろう」
敵のシュトラム戦闘機を始め、アポリト魔法文明時代の兵器は、結界水晶防御をすり抜ける。
だから敵が突っ込んできた時は、結界水晶防御は無意味。対空銃座、ミサイル兵器による迎撃で撃ち落とすしかない。
仮に対空防御を嫌って、敵機が結界水晶防御を展開したら今度は、艦のほうで結界水晶防御を展開すると、防御同士がぶつかって反発する。
しかし結界水晶防御以外の防御障壁などだと、また別で……と、細かなことを言い出すと滅茶苦茶面倒になる。
そこを猛スピードで突っ込んでくる敵機に合わせて対処というのは、まあ難しいものだ。
考えている時間は数秒もなく、対処時間もあるからまあ本当に余裕がない。野球で例えるなら、ピッチャーが投げてくるボールを、瞬時にストレートか多種多様な変化球のどれかを見極めてバッターが打ち返すようなものだ。できなくはないが、素人には難しいよな。
もっとも、アンバンサー製ディフェンスシールドや、ブァイナ装甲であれば、敵機がどんな状態でも防げるのだが、如何せん全艦に対応していないからね。
その間にも、『バルムンク』は先陣切って、敵本隊に迫る。
反乱軍戦艦5、巡洋艦7、駆逐艦8というところか。すでにジャルジー艦隊が砲撃を仕掛けていて、俺たちシャドウフリートもそれに加わる。
『バルムンク』の46センチプラズマカノンが、砲撃中のゴルドア級戦艦に突き刺さり、その装甲を穿って、爆発させる。
ステルス戦艦である『グングニル』も、マギアブラスターによる高熱熱線で敵戦艦を一撃のもとに屠る。
重巡洋艦『ヴァンジャンスⅡ』『フィエリテ』もプラズマカノンで、敵クルーザーへの砲撃を浴びせる。
「さて、そろそろ敵旗艦を仕留めよう」
アーリィーの航空隊が、反乱軍航空機を駆逐しつつあるが、わずかな敵機でも当たり所によっては重装甲の戦艦とて一撃で戦闘不能にすることもある。
ラスィアが、敵艦艇のデータを戦術モニターの一角に映し出した。
「反乱軍の旗艦は、ゴルドアⅡの後継艦とおぼしき新型戦艦です。真・大帝国が建造していたものですが、実戦運用前に終戦となったため、今回が初見ですね」
シェイプシフター諜報部は、真・大帝国の空中艦船局の情報から、この建造中だった新鋭艦艇の諸元も得ていた。
全長350メートル。武装は43センチ連装プラズマカノンをゴルドアⅡと同様に14基搭載。その武装配置は、なるほどゴルドアⅡとよく似ている。
純粋な進化版という感じだ。元のゴルドアⅡが全長284メートルだから、大きくはなっているし、火力も増強されている。
とはいえ、マギアブラスターなどの強力な武装はない。これは純粋に量産型として作られたから、ということもあるのだろうが、同盟軍戦艦が魔導放射砲を装備していることを考えると、艦隊決戦兵器に欠ける分、総火力は落ちる……か?
いや、違うな。これはプラズマカノンによる砲撃戦で威力を発揮する型だ。搭載する砲門数では、同盟軍の主力であるドレッドノート、ドレッドノートⅡを上回っており、魔導放射砲なしでの砲撃戦となれば、主砲のパワーを含めて新型ゴルドア級の方が上だ。
艦隊決戦兵器に対しては、結界水晶防御で防げるから、敢えてその手の決戦兵器をオミットして砲撃戦に極フリにしている……という設計思想かもしれない。
「やはり、出てくるのが少しばかり遅かったな」
量産されていれば、例えば転移による殴り込みで、威力を発揮しただろう新型だが、その前に戦争は集結し、実戦に出てきたのは1隻のみ。
「……エアガル元帥は惜しいことをした」
あのまま反乱軍との停戦もあったかもしれないのに。
フィーネ・グリージスの真・大帝国の停戦の時も、今回のように部下が責任者を殺して、戦争継続になる可能性もあった。……あちらは、そうならなくてよかった。
「敵旗艦に砲撃を集中。ここで終わらせろ!」
バルムンクが、グングニルが、プラズマカノンによる射撃を敵新型ゴルドア級戦艦を攻撃する。
青いプラズマ弾が、反乱軍旗艦に集まり、その艦体に命中、吹き飛ばす。ジャルジー艦隊に続き、大帝国解放軍も砲撃に加わった。
敵旗艦の砲撃が止まる。
『敵旗艦、結界水晶防御を展開の模様!』
「ミサイルで対抗しろ」
今さら結界水晶防御で、どうにかなると思ってもらっては困る。
・ ・ ・
同盟軍艦隊の猛攻に、反乱軍艦隊旗艦『シュペール』は耐えきれなかった。
いや、艦長のハイマン大佐に言わせれば、数で押されれば如何に新型戦艦であっても、限界があることはわかりきっていた。
グリーンヴェル参謀長は、連続する被害報告にもはや呆然自失だった。
「こんな……ことで――」
結界水晶防御を貫通するミサイルが立て続けに直撃し、艦を激しく揺さぶった。
破壊音は途切れなく続き、艦体が壊れていく。
限界がきた。厚い装甲に守られた司令塔内部にも爆発の炎と衝撃波が吹き荒れ、グリーンヴェル参謀長以下、そこにいた人員を焼き尽くした。
爆発、四散。
反乱軍艦隊旗艦『シュペール』は、同盟軍艦隊の集中砲火によって爆沈したのであった。
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