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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1627/1884

第1617話、投入される兵器


 イースタスの町の中に、魔人機が入ってきた。

 町を戦場にするための準備、という割には、入ってきたのは、わずか4機。町を破壊して回るには魔人機といえど、いささか少ない。

 もちろん、何か特別な装備があれば別だが、特に標準タイプのドゥエル・バッフェに見える。


 町を破壊するのに、魔人機1機があれば不可能ではないが、恐ろしく時間がかかるし、住民たちも犠牲は出るが大半の人が逃げ出せるだけの余裕があるだろう。

 新政府と同盟軍に悪評を与えるような戦い方をするのであれば不充分だ。俺らが、町全部を破壊されるまで悠長に見ているわけがない。

 壊し始めたら5分以内に全滅させて、被害軽微で終わらせるというものだ。


 じゃあ、何をしに、反乱軍は魔人機を町中に4機送ってきたのか? ということで俺はしばしその動向を見張り……そして察した。


「あいつら、ディフェンスシールド発生機をどうにかしようとしているな」


 歩兵程度の携帯武器では壊せなかったのは、現地の反乱軍兵もわかっているから、よりパワーのある魔人機で、シールド突破を試みようとしているのだろう。

 結界水晶防御なら、アポリト魔法文明製魔人機ならばそのまま通過できただろうが、ディフェンスシールドはアンバンサー――異星人の技術だ。ただの魔人機ではどうにもなるまい。


「どうするのだ、主?」


 ディーシーが、ポチポチと都市にいる反乱軍守備隊将校を選んで、町の外へ転送させながら言った。……うーん、忙しそう。


「あれは放っておいても大丈夫だろう」


 将校が転送されるのは、その場にいる兵しか気づかないだろうが、歩行中の魔人機が消えれば、多くの兵の注目を集めるだろう。

 それが上層部に報告が行き、より数を増やして送り込まれたり、都市破壊を早められたりされても困る。



  ・  ・  ・



 シーパング同盟地上軍は都市に近づいていた。

 陸上駆逐艦は、都市近くの平原にて固定。味方魔人機やAS部隊のための支援砲撃を行う。


 すでに都市も攻撃圏内だが、むろん同盟軍から町を狙って砲撃することはない。

 地上に掘られた魔人機用塹壕から、反乱軍の魔人機エアナルやドゥエルタイプが射撃武器を撃つ。

 下半身、もしくは胴体下辺りまで地面の下にあるから、同盟軍の魔法弾や銃弾による被弾面積を小さくしている。だが攻撃しようと頭を出すと、後方からルプス戦車の76ミリ対魔人機徹甲弾によるスナイプを決められ、塹壕に沈む。


 よく戦車兵器は、人型メカに雑魚扱いされるのだが、戦車砲の射程を活かしたアウトレンジアタックは、狙撃のそれであり、前線の敵ばかりに気を取られて迂闊な動きを見せれば、即、死が待っている。


 そうやって前衛の人型兵器部隊と、後衛の戦車による砲撃の合わせ技で、同盟軍地上部隊は、塹壕陣地にこもる反乱軍兵器を着実に破壊していった。

 ただ、中には、機体性能を活かして、突撃するような強者もいるわけだが。


 ベルの操るブラックナイト・ベルゼビュートも、そんな突進部隊の一つだった。

 敵の射撃を物ともせず、高速で塹壕まで辿り着くと、シールドを兼ねる両肩アーマーのマギアランチャーを放ち、敵魔人機を根こそぎ薙ぎ払う。


「所詮、残党ってのはわかっちゃあいるが、手応えのねえことだ」


 思わず声に出せば――


『おいおい、ベルさん。そいつはフラグとかってやつじゃないのかい?』


 リーレの魔鎧機ヴルカーンが、反乱軍魔人機を撃破しながら追いついてきた。


『戦いってのは、最後まで気を抜いちゃいけないんだぜ』

「それはそう。だがなぁ――」


 不老不死コンビには、万が一ということもないわけで、緊張感を保つのは案外難しい。


「強ぇヤツがいれば、少しは引き締まるんだがな」


 飛んできた魔法弾を、肩アーマーのシールドで弾く。お返しと放ったマギアランチャーの光は、斧を振り上げたドゥエル・アクストを貫通、爆散させた。


「むっ……!?」


 ベルは、自機の周囲に魔力が揺らいだのを感じた。何かの魔法――魔神機サイズでこれでは、それなりの大魔法と見る。

 瞬時にジャンプして離れれば、地面に亀裂が走り、局地的地震と共にそこにあった魔人機の残骸ごと地面に引きずり込んだ。


「魔人機級のアースクエイクか……。油断は禁物だな」

『だから、そう言ってるでしょうが!』


 敵の増援。向かってきた魔人機は――


「おやおやこれは――」

『女の子メカだ』


 リーレが思わず呟いた。


 アポリト魔法文明の巫女たちが乗り込んだ女性型魔人機、セア・シリーズが現れたのだ。かつての魔法文明の上級魔人機。信仰のせいか、女性を思わす造形をしている。


「魔法をぶっ放してきたのは、こいつらか」

『レアモンだぜ、こいつは!』


 スカート付きの騎士姫のようなセア・フルトゥナ。トンガリ帽子を被った少女チックに見えるのは、セア・ラヴァ。

 風と火。

 さらに水属性のセア・プルミラ、土属性のセア・クスィラが、複数機向かってきた。


「出し惜しみなしってところかい」

『ベルさん! まだ何か来るぞ!」


 リーレが警告したその瞬間、地面から何か巨大なものが突き出てきた。細長い、しかし、そのサイズは、魔人機とは比較にならない長く、大きなもの。


「メカのワームか?」


 グリーディ・ワームという巨大ワームに出くわした時のことを思い出す。あれを機械で再現したかのような兵器。


「真・大帝国の試作兵器のようだな」


 いわゆる戦争に間に合わなかった、というやつ。反乱軍はそれを投入してきたのだろう。


『ひぇぇ、デケぇ……! って、駆逐艦がヤベ!』


 リーレが見守る中、メカワームはジャガノートⅡ級駆逐艦を上回る高さからのトップアタック。

 正面に防壁があるが、それを超えての攻撃が、駆逐艦の船体に突き刺さり、そして貫通した。


「おおっ、やりやがった!」

『ベルさん!』


 見とれている場合ではない。セア・シリーズ魔人機が武器に魔法を宿して向かってきた。


「へっ、心配しなくても、見えてるっての」


 ブラックナイト・ベルゼビュートは、大剣を手に新手に向き直った。

次話は明日、木曜日更新予定。

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