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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1626/1885

第1616話、念のために、細工をしておこう


 イースタスの町の外は、シーパング同盟軍が、反乱軍を追い込みつつある。

 やはり陸上駆逐艦という巨大な壁は、敵対する者にとって恐れの感情を抱かせるのだろう。

 俺の方に送ってくる映像で戦況を確認しているが、ベルさんのブラックナイト・ベルゼリュートやリーレの魔鎧機など、味方陸戦部隊を上手くリードしていた。


 一方の空の戦いは、反乱軍は転移装置を用いて、同盟艦隊の懐に飛び込む大胆な突撃戦法を仕掛けてきた。

 同盟艦隊の各旗艦を狙った攻撃で、『ディアマンテ』が大破したが、ジャルジーの旗艦をはじめ、他の旗艦は健在だった。

 敵も中々やるものだが、そうなると、このイースタスの町のことも何かしら仕掛けてくるかもしれないな。


「ディーシー、一つ確認だが」


 俺は、都市をダンジョンテリトリーに収めている彼女に問うた。


「都市の住民を避難させるのと、都市の反乱軍を外へ飛ばす。やるとしたらどちらが確実だ?」

「何か、気になることがあるのか、主よ?」

「気になっているから聞いてるんだよ」

「ふむ……何か兆候でもあったか?」


 ディーシーが、テリトリースキャンの情報を読み取る。


「爆発物の見落としはなさそうだが……」

「勘みたいなものだよ」


 気にしてしまったようなので、俺は意図を説明する。


「確証はないが、反乱軍の指揮官は食わせ者みたいだからね。爆発物を取り除いて安心していると、厄介なことが起こりそうな気がしている」

「たとえば?」

「……破れかぶれの、都市攻撃」


 守備側から攻撃側へ。町の住人を、避難もさせず自宅待機させている反乱軍だ。


「住民を戦いに巻き込むつもりの奴らだ。空からの攻撃はディフェンスシールドで防げるが、地上にいた守備隊戦力で、直接町を焼き払うという手もある」

「町の住民を生け贄に、同盟軍非難へと世の向きを変えようとしているのだろう?」


 ディーシーが異議を唱えた。


「自分から攻撃したら、反乱軍の極悪非道ぶりが増すだけではないか? 奴らとて、支持基盤を失うぞ」

「しかし、結局都市の住民を守れなかった、という点で、新政府や同盟軍への政略的攻撃自体は果たせるんだよ」


 俺たちが都市を反乱軍から奪回し、守らなければならないという点は変わらない。戦いに巻き込まれた、反乱軍が虐殺を行った――どのようなパターンであってもだ。


「面倒この上ないな」

「同感だよ、ディーシー。反乱軍が住民を避難させなかったということが、破れかぶれの手を使わせる可能性を残させているわけだ」


 敵のことだから、艦隊や軍が窮地に陥ったら、死なば諸共で、都市攻撃、住民虐殺もやってくるかもしれない。

 ないと思いたいが、都市に爆弾仕掛けまくっていた連中だからな。期待するだけ無駄だろう。


「主。都市にサイレンを鳴らして、住民たちに避難を促すのはどうだ?」


 俺の先の確認に対する答えが、どちらも面倒だったのか、ディーシーは第三の選択肢を提案した。


「それは俺も考えたんだけどな。町に反乱軍兵がいる以上、避難する住民を攻撃してきたら、結局虐殺を早めてしまうだけなんだよ」


 連中にとって、住民は自宅待機。勝手に避難所へ逃げ出すのは命令違反なのだから、虐殺というより違反者への攻撃ってことでやりやすくなるだろう。


「命令には忠実な青エルフクローンだから、遠慮はしないだろうな」

「うむ……。そうなると」


 ディーシーはしばし宙に視線を彷徨わせた。


「数から見ても、反乱軍兵を都市外に飛ばすほうが、相対的に楽だろう」

「住民の方が数が多いもんな」


 ダンジョントラップの転送魔法陣なりを使って飛ばすとなれば、数が少ないほうがいいだろう。ただでさえ、手間なんだから。


「では、もう始めたほうがよいのか、主?」

「いつ敵が町を標的にするかわからないからな。処理してくれ――ああ、そうそう、町の外に飛ばした連中が入ってこられないように、出入り口は塞いでおいてくれ」

「注文が多いな」

「二度手間は、嫌だろう?」


 せっかく外に出したのが戻ってくるのは面倒だと思うが?


「確かにそうだな」


 ディーシーは頷いた。


「やれやれ、爆発物の次は反乱軍兵とはな……」


 面倒だと呟くディーシー。わかるよ、豆の乗った大皿から、二種類ある豆の片方だけ取り除いていくようなものだ。


「ディーシー。まずは指揮官を優先して取り除いてくれ」

「順番まで指定するのか?」

「指揮官を全部除けば、あとは嘘命令で青エルフクローンを適当に一カ所に集められるだろう?」


 命令には絶対のクローン兵なら、命令がない限り、勝手なことはしない。これが人間の指揮官だと、連絡が分断されていたり、現場の臨機応変の行動で、勝手に動くこともあるからな。


「なるほどなるほど。確かに、そちらのほうが効率はよさそうだ。……引き受けた」


 ということで、イースタスの町の反乱軍の除外作業を行うディーシーさん。本当は、住民に避難勧告を出して、ドンパチに巻き込まれないようにしたいんだけどね。

 命令一つで、容赦なく引き金を引く青エルフクローン兵だ。それがうようよいる状態では、それも難しい。


「おっと……」


 俺は、潜伏場所にも伝わってきた振動と、動くそれを見た。

 ドゥエル・バッフェ――旧式だがれっきとした魔人機である。都市の外で戦っているはずだが、何故だか知らないが、都市の中に入ってきた。全高5、6メートルほどの鋼鉄の巨人が、町の大通りを歩いている。

 ディーシーが口を開いた。


「主、あれも優先したほうがいいのか?」

「都市を攻撃……というわけではなさそうだ。少し様子を見よう」


 虐殺の始まりというには数も少ないしな。はてさて、何を企んでいる……?

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