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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1623/1885

第1613話、繰り出される超兵器


『同盟艦隊よりミサイル攻撃多数!』


 反乱軍艦隊旗艦『シュペール』の司令塔に、響く青エルフクローン・オペレーターの声。エアガル元帥はモニターを注視する。参謀長のグリーンヴェルが口を開いた。


「敵は、性懲りもなくミサイルを繰り出してきましたな」


 艦隊先頭の駆逐艦から放たれる試作兵器である竜巻砲が、飛来するミサイルを全てあらぬ方向へ逸らす。まったくもって、無駄な攻撃だ。


「こちらの兵器がどういうものか探っているのだろう」


 竜巻砲が連射、あるいは継続放射が可能なものなのか。実は数を当てれば竜巻が弱くなって攻撃が通るようになるかも――などなど。

 戦いながら武器の特性を調べるということは、よくあることだ。


 竜巻砲の射程は、同盟軍艦隊まで届かない。しかし正面から飛来する敵弾を(ことごと)く防ぐ防御兵器としては、役に立っている。

 要は使い方である。


 だが懸念もある。竜巻砲は試作兵器。まだまだ長時間使用で、機械がどこまで保つのか検証が足りない。竜巻を形成するエネルギーの消費も考えあわせれば、無限に展開し続けることは不可能だ。


 ならば、一見馬鹿の一つ覚えのような、同盟軍のミサイル攻撃も、まったく無駄というわけではない。

 敵もミサイルが無限にあるわけではないが、竜巻砲だけで全てを制することはできないことは、エアガル・クローンも理解していた。


 だが、その時、竜巻砲を展開していたファイリー級駆逐艦『マルク』が、艦体各所から火の手をあげた。そして――


『「マルク」、爆沈!』

「な――!?」


 グリーンヴェル参謀長が目を見開いた。


「竜巻砲が負荷に耐えられず爆発したか!?」

「いいや、敵の攻撃だ、参謀長」


 エアガルは、爆発するファイリー級駆逐艦の記録映像をリプレイさせながら言った。


「爆発が艦首の竜巻砲ではなく、艦橋に始まり、艦の中央で複数。これはおそらく航空機からの側面攻撃だ。……同盟軍め、忍び寄っていたか!」


 繰り返されたミサイル攻撃は、こちらの目を欺くための囮だったのだ。本命は透明化した航空機を用いた竜巻砲搭載艦に対するピンポイント攻撃。


「やるな、シーパング」

『ミサイル、本艦隊に着弾!』


 竜巻砲が消えたことで、迎撃しそこなった敵ミサイルが当然のように、反乱軍艦隊に殺到した。

 結界水晶防御が展開されているが、それを抜けてくる貫通弾は防げない。被弾を覚悟したエアガルら司令部、そして各艦の艦長だったが、ミサイルは結界によって阻止された。

 艦長たちは驚き、そして艦隊司令部のグリーンヴェルもまた驚いた。


「なに!? 結界を抜けない、だと……!」


 結界水晶防御を抜けてくると想定していたのに、そんなことはなかった。


「おのれ! 敵はこれを予期して最初から通常弾を使っていたのか!?」

「落ち着け、参謀長」


 無闇やたらに敵を大きくすることはない――エアガルは心の中で呟く。

 相手がかのジン・アミウールか定かではないが、最初から竜巻砲を予期していたような見方は、大げさというものだ。


 最初は、きちんと結界防御貫通弾だったが、竜巻砲を黙らせるまでは通常弾に切り替えただけかもしれない。


「次は結界水晶防御を抜けてくる。その前に、こちらも仕掛けよう。……エードラム砲、目標、同盟艦隊。その後、作戦パターン、イオタ発動」


 エアガルの命令を受けて、艦隊中央近くにある特殊仕様のゴルドアⅡ級戦艦が、その巨大な艦体を大きく上下にスライドさせた。


 まるで砲口が開くように。

 全長284メートルのそれ自体が、巨大な大砲のようでもあった。


『エードラム砲、発射準備よし!』

『射線上の味方艦、待避完了!』


 青エルフクローンオペレーターたちの報告。エアガルは頷いた。


「エードラム砲、発射っ!」


 特殊仕様のゴルドアⅡから、眩い光が吐き出された。それはさながらジン・アミウールのバニシング・レイのような、正面の敵を根こそぎ焼き払うように。


 真・大帝国魔法軍特殊開発団が生み出した試作兵器――艦隊殲滅(せんめつ)砲だ。シーパング同盟軍が使用するそれと類似兵器を、真・大帝国でも作っていたのだ。


 結局これも試作の段階で、戦争が終わってしまった、いわゆる間に合わなかった超兵器である。

 それらは同盟軍艦隊主力を飲み込んだ。当たれば必殺の威力だ。大型戦艦とて、ひとたまりもない。

 旗艦から見ていたグリーンヴェルは思わずニヤリとするが、エアガルは淡々と表情を崩さなかった。

 光が消えた時、そこには――


『同盟軍艦隊、健在!』

「馬鹿な……! こんなに残って」

「敵の艦隊殲滅砲を、こちらが結界水晶防御で弾くのと同じように、敵もまたエードラム砲を結界防御で防いだのだ」


 エアガルは驚きはしなかった。こちらでやっている対策を、敵が気づかないはずがない。当然、類似兵器で攻撃されたなら、それに対する防御策でシャットアウトできるのだ。


「ただ、初見でこれではな。……一応、撃つ前より敵艦の数が減っているから、防ぎきれなかったか、結界水晶防御の展開が遅れた艦もあったのだろう」


 エードラム砲で、大打撃を与えることはできなかった。

 しかし、エアガルに言わせれば、それは想定の範囲内。だから次の手を打ったのだ。作戦パターン、イオタが発動する。



  ・  ・  ・



 艦隊殲滅砲を、敵が使ってくる――その想定は、同盟軍にもあった。

 むしろ、軍隊における兵器開発は、常にイタチごっこである。新兵器が生まれる、その兵器の対策が取られる……。それは交互に繰り返されてきた。


 敵がその兵器に対する有効な防御策をとるなら、こちらもその手の兵器を使われた時、同じように防げばいい。

 反乱軍のエードラム砲で、同盟軍が致命的な損害を回避できたのは、そういう想定があったからだ。


 が、唯一、誤算があったとすれば、通常弾頭から結界水晶防御貫通弾頭にミサイルを切り替えているところで、照射を受けたことだ。

 これが結界貫通弾で行っていたなら、被害はほぼなかっただろう。しかし自分の結界すら抜けない通常弾を発射するにあたり、結界水晶防御を解いていたことが、敵の攻撃を許す結果となったのだった。


 大半の艦が切り替えた直後だったため、展開された結界がエードラム砲を防いだが、切り替え途中だった艦艇がやられてしまったのである。


 タイミングが悪かった。だが、これで攻撃が終わったわけではない。

 反乱軍艦隊の一部が、なんと同盟軍艦隊の中に転移、突撃してきたのであった。

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