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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1615/1886

第1605話、反乱軍の手


 大都市イースタスの真上に、真・大帝国艦隊が待機していた。

 俺たちシーパング同盟艦隊が向かう先にいる町の周りには、それなりの規模の反乱軍戦力が集まっている。

 塵も積もれば山となる、とは言うが、集結したら割と本気で一会戦できる戦力になるというのだから恐ろしい。


「結局、残っていた奴らも潰さねえといけないわけだ」


 ベルさんは皮肉げだった。


「一点集中でやってきたのに、地方に出て戦うんじゃ、あんま効果なかったんじゃね?」

「そうでもないさ。真・大帝国と講和しているから、これで済んでいる」


 そうじゃなきゃ、本当に隅々まで移動して残党狩りをしなければいけなかった。つまり――


「往生際の悪い奴らを相手するのと、全軍を相手にする、どっちが楽かということだ」

「規模でみたら、こっちの方が全然マシってことか」


 そういうことだ。


「無益な殺生を減らせて、テラ・フィデリティアの先人たちも喜ぶだろうよ」


 それでは、こちらも仕掛けようかね。


「敵は、都市の上に陣取っている。諜報部の情報だと、町には民間人が留め置かれている」

「自国の民だぞ。連中はドンパチに巻き込む気か?」


 ベルさんが眉を吊り上げた。

 普通は徴兵しているのでなければ、民間人避難させておくものだ。意外と邪魔なんだよね、統制がきかない者たちが戦場にいるっていうのは。


「しっかり巻き込むつもりだよ。俺たちに対して、盾、もしくは人質だな」

「同盟軍相手に効くのかそれ?」


 真・大帝国を恨んでいる奴らなら、同盟にごまんといるから、人質にならないのではないか、と。


「そうでもないさ。テラ・フィデリティア・コードは民間人への攻撃は認めない」


 ま、敵がそれを知っているかどうかは知らないが。


「同盟は真・大帝国と講和しているからね。真・大帝国民間人も、反乱軍に協力しない限り、敵ではない。だからこちらも無闇やたらに民間人への犠牲を承知で撃つとかは、難しい」


 間違っても、魔導放射砲で艦隊を薙ぎ払い、下の町に二次被害を出すわけにもいけない。


「反乱軍にしたら、むしろこっちが町への被害も構わず撃ってきてくれることを期待しているみたいだけどね」

「そうなのか?」

「俺たち同盟軍が、反乱軍鎮圧のために町もろとも破壊したってことにしたいのさ。イースタスの虐殺――講和に応じた軍の残りや大帝国民に、同盟軍へ反攻する意識をもたせるためにさ」


 いわば、人柱になって決起を促す、というやつだ。連中は自身を導火線にして、再びこの国を燃え上がらそうとしているのだ。


「実に面倒だ」

「せっかく終わらせた戦争を、まだ続けたい奴らがいるのか」


 ベルさんも呆れ顔だ。だからさ、往生際の悪い奴らってのは、どこにでもいるものなのさ。付き合わされるこちらの身にもなれというのだ。迷惑ばかりかけて。


 とにかく、同盟軍の評価を下げて、大帝国を決起させようとしているのが、反乱軍の動きだった。

 そのためなら、イースタスの民間人を自分たちの手で吹き飛ばすことも厭わないところが、末期感があってろくでもない。


「自国の民だろうに」

「ご大層な名分を掲げても、許されることじゃないさ」


 さて、住民への被害を極力出さず、反乱軍をやっつけよう。だがそれには、情報が必要だ。

 策もなく力押しするのは、まさに敵の思う壺だからね。



  ・  ・  ・



「町に被害を出さないと考えると、途端に難しくなるな」


 戦艦バルムンク艦橋。ただいまイースタス攻略作戦の会議中。

 ホログラフィック状に表示される都市とその周辺、監視ポッドで掴んだ敵艦隊、部隊の配置が一目瞭然である。

 会議の参加は、俺、ベルさん、アーリィー、ディアマンテ、解放軍のシェード将軍、そしてシェイプシフター諜報部のスフェラになる。


「戦争が終わった今、我々は攻めているが、扱いとしては町自体は人質に取られている形だ」


 今の大帝国は、新政府のものであり、かつての真・大帝国軍の武装解除しない者たちは反乱軍、無法者という扱いだからだ。


「そして連中の目的が、戦争再開、大帝国民の蜂起を促すものであるという以上、普通に戦えば、イースタスの住民は必ず犠牲にしようとする」


 俺がスフェラに頷けば、シェイプシフター諜報部の長は口を開いた。


『反乱軍は、住民に自宅待機を命じております。シェルターなどへの収容を行っていないため、都市上空での戦闘での残骸の飛散、都市内での戦闘は、必ず住民を巻き込むことになります』

「徹底していますね」


 シェードは言った。


「こちらとしては非常にやりにくい。仮に都市を奪回しても、住民に恨まれますね」

「親衛隊上がりの考えそうなこった」


 ベルさんは口を尖らせた。


「あいつら、自分んとこの民だって、親衛隊じゃなきゃどうでもいいんだろうな」

「たとえ彼らが負けても、住民の被害が大きければ、新政府のやり方に不安の声が出る……」

「そうやって、新政府に統治能力に疑問をもたせる一方で、他の町の住民たちに戦うしかないと印象づけたいんだろうな」


 国全土に戦争の火を起こすために、小を犠牲にして、大を動かす。戦いのための致し方ない犠牲。……くそくらえだな。


「が、敵の思惑がそこにある以上、我々はその思惑を外し、かつ勝たねばならない」


 というところで、まずは作戦だ。


「都市には、防御シールドを張り巡らす。これによって、残骸や攻撃の巻き添えによる町への被害を防ぐ」

「シールドの発生装置が必要ということ?」


 アーリィーが問えば、俺は頷いた。


「シールドの設置部隊を送る。しかし都市の周りは敵だらけだ」

「まずはこの町の外にいる奴らを片付ける。……そうだろ、ジン?」


 ベルさんが言った。


「その通り。町に被害が出ないところにいる敵をまず攻撃する。反乱軍にとっても、町の住民は戦闘の巻き添えにしたいだろうから、初っ端の外周攻撃で、都市に仕掛けたりはしないだろう」

『仕掛け、ですか』


 ディアマンテが怪訝な顔をした。そうそう――


「諜報部に調べさせているが、連中、イースタスの町に爆発物を仕掛けている。都市攻防戦のトラップというには、収まりきらない規模の威力の」

「自爆用ですか」


 シェードは眉をひそめた。


「こちらが都市に被害を出さないように立ち回っても、町を吹き飛ばす魂胆ということですね」

「そう。だから、それも処理する必要がある」


 シールドの設置部隊も含め、特殊部隊を送り込む必要があるね。

 帝都攻防戦とは状況も違う。敵を倒す、住民も守らなければならない。それを同時にやらなければいけないわけだ。

 実に、面倒だねぇこれ。

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