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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1597/1886

第1587話、潜入の暗殺チームと、阻む者たち


 同じ制服を着ていれば、敵味方の識別は手間だった。

 帝城に潜入した反乱軍の暗殺チームは複数あって、それぞれがフィーネ・グリージス・ディグラートル宰相の処理に動いていた。


 複数の警備兵の詰め所を奇襲し、また想定外の遭遇もその場で処分してきた暗殺チームに対して、いまだ警報は鳴っていない。

 だから城の外で警備している守備隊も、すでに敵が入り込んでいることに気づいていなかった。


 何事もないように城内を進む暗殺チーム。真・大帝国軍服をまとう一団の姿は、日常となんら変わりなく、傍目には敵と言われても困惑するくらい当たり前の光景だった。

 だからこそ、ここまで警備の隙を衝いて侵入できたわけだが、それもここまでである。


「止まれ」


 武装した警備兵が、自然に闊歩する真・大帝国兵の分隊を止めた。


「ここから先は――」

「始末しろ」


 先導の少尉の短い命令で、青エルフクローン兵は魔法銃を撃ち、やってきた警備兵を撃った。

 たちまち警備兵が倒れる。少尉と彼に率いられた暗殺チームは何事もなく進もうとするが、側面からヌッと影が伸び上がり、小銃を取り出すと銃弾を叩き込んだ。

 青エルフ兵が反撃の間もなく撃たれて倒れる。


「なっ! 待ち伏せ!?」


 侵入はバレていないはずだった。たった今、正面からきた警備兵を倒したが、一人だったから通報されてもいない。だから、待ち伏せなどあり得ない。

 とっさに伏せた少尉は、襲撃者の正体を探ろうとする。そもそも他に人間がこの通路にはいなかった。


 黒かった。一瞬、黒いスライムが突撃銃を持って撃ってきているよう見えた。黒い影、スライム、よくわからないそれは、人型になってズンズンと近づいてくる。

 銃声は止んでいた。部下たちはすでに全滅していたのだ。少尉は、近づいてくる敵に備えて魔法銃を向けようとして、背後から電撃弾を浴びせられ、麻痺した。


『チェックポイントA、侵入者を排除』


 黒い人型――シェイプシフター特殊兵は通信機のスイッチを入れて報告する。


『士官を無力化、捕虜を確保しました』


 麻痺して動けない少尉を、別の黒い兵が取り押さえ、拘束する。動けないので抵抗もなにもなかった。立たされる中、先ほど射殺した警備兵が、むっくりと体を起こして立ち上がるのが見えた。

 少尉には何が何だかわからなかった。殺したと思った警備兵が、まさか生き返るなど。


『大丈夫か?』

『あぁ。火炎放射じゃなくてよかった』


 その警備兵も黒い兵――シェイプシフター兵と同じ格好に変わる。

 警備兵は囮だった――少尉は悟った。自分たちの侵入は見破られていて、ここで制圧できるように、待ち伏せていたのだ。



  ・  ・  ・



 帝城に侵入した暗殺チームは、シーパング同盟ウィリディス軍の特殊部隊によって、次々に潰された。


 彼らは、元々真・大帝国の人間ではないので、その軍服姿を見ても、微塵も迷いなく処理した。

 正面から迎え撃つこともあれば、柱の陰などに潜み、あるいは室内の飾りに変身して素通りさせて、側面や背後から襲いかかった。


 隠れることにかけて、シェイプシフター特殊兵は、恐るべき能力を発揮する。彼ら熟練の擬態を、真・大帝国暗殺チームの兵たちは見破れなかった。

 もし事前情報があったなら、あるいは気づけていただろうか。ともかく、シェイプシフターの兵隊という存在を知らない時点で、その待ち伏せから逃れる術はなかったかもしれない。


 そもそもの話、警備担当の守備隊側にも、シェイプシフター特殊部隊の存在は知らされていなかった。

 反乱軍はおろか、警護側も知らされていないという事実。これは守備隊にも、内通者、あるいは反乱に加担しようと動く者が現れるかもしれないと、シーパング側――ジン・アミウールが警戒したためである。


 そう、勝手に警備をやり、敵暗殺チームを処理しているのだ。真・大帝国のフィーネ・グリージス宰相陣営と停戦という形にはなっているが、まだはっきりと正式交渉もなく、それぞれの軍が停戦宣言をしているだけである。


 だからまだ互いに敵同士なのだ。いくら宰相の命を守ると言ったところで、信用できないし、まともな政府なら自前でやるのでお断りします、であろう。

 だから、シェイプシフター特殊兵らは、ここまでの敵の侵入に気づいていながら、守備隊側に通報せず、警報が鳴らなかったのである。


 こうして、勝手に警備し、反乱軍暗殺チームを掃討するシェイプシフター特殊部隊は、現れた時同様、姿を隠して人知れず警戒を続けた。


 が、ジンが警戒した通り、通信機を使わず、警備兵になりすまして、宰相の執務室にまで近づいた暗殺チームが一つあった。

 しかし、彼らもまた、フィーネ・グリージスの姿を拝むことはできなかった。

 深紅のフード付きローブをまとう宰相専属部隊、ガーズの護衛兵に阻まれたからだ。


「殺せ!」


 正体を見破られた反乱軍兵は、剣を抜き、魔法銃を撃った。しかし、二人のガーズの護衛兵のうち一人が、障壁の魔法を展開して攻撃を防ぐ。

 その間、もう一人が空中を飛びあがり、天井すれすれを通過。反乱軍兵のもとへ降り立つと、呆気にとられている兵二人を双剣で瞬殺した。


「くそっ!」


 至近距離から魔法銃で発砲。ガーズを狙った電撃弾は、護衛兵の持つ剣に弾かれた。

 対魔法コーティング――驚いている間もなく、護衛兵は撃ってきた反乱軍兵の首を裂いて、始末した。


 そのまま自然な足取りで、仲間のもとに戻るガーズ護衛兵。一番暗殺対象に近づけた暗殺チームもまた、宰相専属の特殊部隊の前に敗れ去ったのだった。



  ・  ・  ・



 ひゃあ、やるねぇ、ガーズの連中も。

 シェイプシフターカメラを通して、俺は宰相執務室前の戦闘を見ていた。きちんと強い隊員で構成されているな、ガーズは。


 見ていて安心だったよ。そんな気楽な感想を抱けるのも、処分されたのが真・大帝国反乱軍だったからで、仮にうちらシーパング同盟の兵だったら、別の感情を抱いていただろうけど。

 同じくモニターごしに見守っていたアーリィーが振り向いた。


「とりあえず、今ので、宰相を殺害しようという敵は最後かな?」

「だといいんだけど、まあ警備は続けるしかないだろうね」


 何なら明日の打ち合わせの前後だって危ないといえば危ない。ただ、その懸念を下げる方法が一つある。


「仕掛けてきた連中の大元をやっつけないと、安心はできないだろう」


 第三三五魔人機大隊指揮官のカリューニ中佐とその一派を押さえないとな。表で戦っている連中ばかりでなく、首謀者の身柄を確保しないと、終わらないのさ。

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